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2025-02-06 10:00

heldio #201. seldom, whilom の -om

#英語史 #英語学習 #英語教育 #古英語 #与格 #接尾辞
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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶應義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、seldom, whilom の-om についてです。
seldom、滅多に何々ないという単語ですね。seldom というふうに語尾にomというのがありますね。
それから、あまり聞き慣れない単語かもしれませんが、whilom という単語があります。
これは何々の間っていうあのwhileですね。これにomを付けた形でwhilom ということなんですね。
以前とかかつてというような意味を表します。
共通点としては、om があるということは当然なんですけれども、頻度であるとか時間であるとかですね。
そういったものに関わるということです。
他の単語ではあまり見慣れない語尾になんですね。om というものなんですが、これは一体何なのかというのが今回の話題です。
実はこれはですね、小英語の名詞につくですね、複数予格語尾。
これ、umと書いたumっていうのが小英語の複数予格語尾だったんですが、それが少し生まってomになったっていうものなんですね。
非常に珍しいものです。
というのは、小英語にあったこのumの語尾はですね、基本的に完全に消え失せてしまったものだからです。
他には残ってないんですね。
umのまずmが落ちてですね、弱化して落ちて、最終的にuも落ちてしまって、基本的には英語の語尾の中にですね、残っているはずがないんです。
中英語くらいまでにはこのumが完全に脱落してですね、消失してしまったということなんですが、どういうわけか化石的にこの2語に置いて残っているということですね。
seldom、whilumのこのomという形で残っているということなんですね。
非常に珍しいです。
なぜこのように化石的に残っているのかというのは、なかなか説明は難しいんですけれども、一つずつ考えてみたいと思うんですね。
最初にwhilumの方から言ってみたいと思います。
これはですね、小英語の単語wheelですね。
これは現代のwhileにあたるもので、何々の間っていう接続詞ですね。
今でこそ接続詞なんですけれども、大元の意味はですね、名詞で時、時間という意味なんです。
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つまりtimeぐらいの意味ですね。
今現在でもfor a while、for a timeと同じ意味で、しばらくの間、ちょっとの間っていう意味で、for a whileという言い方がありますよね。
他に関連語としてworthwhileというのもありますね。
時間をかける価値があるということです。
つまりthis film is worthwhileというと、この映画は見る価値がある。
時間をかけて見る価値があるということで、この時間の意味while、生き残っているわけですね。
この単語の小英語の形がwheelというわけなんですが、これに複数予格の語尾ですね。
複数形にして、そして予格っていうのは基本的に何々にという意味なんですが、これをつけることによってですね、
filmという語形を作ります。
これでですね、要するにat times、時々であるとか、昔、以前というような、いわゆる時を表す副詞になるわけですね。
名詞を予格にするとですね、副詞が出来上がることが多いんですが、ここでまさに複数形ですからat timesぐらいの意味ですね。
もともとはそういう意味です。
後に少し意味が変わってですね、昔とか以前、かつてぐらいの意味になってwheelumという形ですね。
本来であれば、このumはですね、先ほど述べたようにだんだんと消えて、ホワイルという形ですね。
つまり裸の形になって今に伝わっているはずなんですけれども、この単語においてはですね、他の大多数の単語とは異なって、
というわけか、このumの部分が少し変形してomという形になりましたが、これで残ったということなんですね。
そして次にseldom、この滅多に何に何にないというですね、あのseldomの方に移りたいと思うんですけれども、
この語源はですね、小英語のseldにあります。
seldっていうのはこれ自体は名詞で、稀なこと、稀という名詞なんですね、あくまで。
これにenを付けることでseldenとして副詞化したという形ですね。
これがseldenとして小英語でも滅多にない、あとがまれにという意味で使われていたわけです。
つまりenっていうのが元の形だったんですね、コピーはね。
ところが小英語も後期になりますと、このenの代わりにですね、nではなくてmが現れてくるんですね。
こういう異形が出てくる。
これもなぜかよくわかりません。
普通nがmになるっていうことはあまりないわけなんですけれども、
一つ考え方としては、先ほどのwilmのようなこのumですね、
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これによって副詞を作る、副詞を書く語尾だったわけですね。
selden自体も副詞は副詞です。
ということで、この辺りが結びつけられてumみたいな語尾をseldenも取るようになったのではないかということです。
結果的にseldomであるとか、そしてその後少し生まれてseldom、omで書くものですね、
になったのではないかということが考えられます。
このseldomのomは、小英語の例の複数予格語尾、umのumですね、
これに直接遡るというよりは類推作用ですね。
他のたくさんのこのumが付いた形からの類推でですね、
selden自体もseldomみたいにumを取るようになったのではないかと。
あくまで間接的に、類推的にumが付いたものだと考えられます。
そしてそれがylamと同じような形でですね、仮説的にomという形ですが、残って現代に伝わっていると。
関係する話題なんですけれども、もともとseldenというふうにenが付いてたんですよね。
このenというのが、どうも頻度に関するこの副詞の語尾というふうに解釈されてですね、
もう一つ面白いことが起こっているんですね。
oftenです。oftenという発音も最近出てきますが、しばしばというよく使われるoftenという単語ですね。
これもenがありますね。
実はもともとの小英語ではoftという形でenなんかなかったんですね。
ところが、まさにこのseldenのenが頻度の副詞を表すマーカーだというふうに捉えられたのかですね。
oftそれだけでもしばしばという意味を持っているわけなんですが、
改めてその後ろにseldenと比例的にenを付けてみたんですね。
これがoftenという現在のoftenが付いた形です。
このようにenが付いた形ですね。
これが現れ出すのは13世紀くらいで、一般的になるのはもっと遅くて16世紀以降ということになります。
ただ、これが結果的には現代標準英語では基本の形、つまりenがあるものが標準的であるということで我々認識しているんですが、
このen自体はseldenから借りたものであるという可能性があるわけです。
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そしてそのselden自体は、先ほど述べたように、例えばylamのようなものに影響を受けてenではなくてum、そして後にomというふうに語尾を変えてきたということになります。
お互いに影響しあって、少しずつ近い形に似たような形になっていったという類推作用と一般的に言いますけれども、
こういうことが起こったのではないかと考えられます。
これも一つの摩切ということで、はっきりしたことは必ずしもわからないんですけれども、
いわばselden、ylamというこの2語は、小英語複数予格語尾、umの直接あるいは間接の生きた化石ということになります。
非常に珍しい例なんですね。
それではまた。
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