00:02
おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶應義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしてきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、v で始まる単語は原則として借用語、というものです。
英単語はたくさんありますけれども、v で始まる単語は非常に多いわけではないですが、普通にあります。
こういう時、紙の辞書の背が役立つのですが、この v のところのインデックスを見ると、ものすごく多いわけではないけれども、
かといって、例えば x とか y, z ですね。この辺と比べますと、多少ボリュームがあるという感じで、普通ですよね。
非近な単語にもたくさんあると思うんですね。例えば vacation, valley, vase, vegetable, very, victory, village, vinegar, visit, voice, voluntary, volunteer
なんていう単語が上がってくると思うんですね。今読み上げた単語は全て英語、本来語ではなくて借用語です。ほとんどフランス語からですね。
他にラテン語から入ってきているものともあると思うんですけれども、全体として v で始まる単語を拾ってみると、フランス語からというものが非常に多いのではないかと思いますね。
原則として本来語にはないというのがポイントです。これは意外に驚きだと思うんですね。今読み上げたものも頻度の高いものを取り出したわけなんですが、
例えば vacation とか、あとは valley なんていうのは非常に頻度が高い当たり前の単語ですし、 visit, voice なんていうのも好頻度と言っていいと思うんですね。
こうしたものが実は英語本来の語ではないっていうのはですね、意外なんではないでしょうか。これくらい非近な単語ですら外から入ってくるということが十分にあり得るんだということを英語の語彙は教えてくれると思うんですね。
さあここで問題になるのは、なぜ v で始まる単語にはですね、英語本来語がないのかということですね。
英語本来語というのはアングロサクソン、古英語自体からずっと使われて現代まで来ているという、つまり釈用語ではない、土着の英語の単語であるということなんですけれども、
v で始まるものっていうのは実は古英語大きから原則としてないんですね。
これはなぜかと言いますと、v という音自体がなかったわけではないんです。ですが f の音ですね。
03:03
f の有声音、濁った音が v なわけですけれども、この f のある条件下における代理音に過ぎなかったんですね。
この v というものはですね。どういうことかと言いますと、v の音が現れたんですが、現れる場合には有声音に挟まれた環境という、こういう条件なんですね。
普段は f、負の音で発音されるんですが、たまたまですね、単語の内部あたりにあって、両脇をですね、例えば母音に挟まれるとこの負の音が自動的に v の音になるということであって、
あくまでデフォルトは f、負なんですね。これが有声音に囲まれた特殊な状況において初めて v となるということで、ある意味 v はですね、決してそれ自身が独立した音というよりは、
本来 f であるものがある条件下において v に変わるというような、そういう位置づけの音だったんですね。
なので今のような、負と独立して負という、はっきりした音としての視覚と言いますか、立場を小英語では持ってなかったんですね。
そうしますと、小英語では v の音は、語頭には絶対現れないということになりますね。つまり両脇を有声音、母音みたいなものですが、これに挟まれた時にのみ、
出るわけですから、両脇で挟まれることができない語頭であるとか、語末も同じですけどね、ここに v の音が出るっていうことはあり得ないということになります。
つまりあるとしてもせいぜい f の音始まりであって、これが有声化した v になるっていうことは一切ないっていうのが、これが原則だったんですね。
ですから、例えば f で始まる単語なんていうのは、小英語でもいくらでもありました。
例えば現在につながる father っていうのもそうですし、far away の far っていうのもそうですし、fox とか fight とか、いくらでもあるわけですよね。
こういうわけで、もともと小英語では、語頭に v 音が現れるっていうことがなかった。禁止されていたと言いますかね。
音の規則として禁止されていたが故に、当然 v で始まる単語がなかったということになるわけですよね。
ところが、次の時代、中英語の時代に、たくさんのフランス語由来の単語が入ってきました。
これは 1066 年のノルマン征服の結果ですね。大量のフランス語が入ってきました。
そしてこのフランス語では、小英語と違って、ちゃんと f 特別された、しっかりした、自立した音として v っていうのがあったわけで、
当然、語頭に v を持つ単語っていうのはたくさんあったわけです。ラテン語でも一緒です。
06:05
こういった事情で、大量の釈用語が入ってきて、英語の中にも v で始まる単語というのが初めて存在するようになったということなんですね。
こういうことで、 v で始まる単語は原則として釈用語ということになるわけですが、実は例外が3つほどあるんです。
本来の英語でありながら v で始まっている単語があるんです。
1つはですね、vane、v-a-n-e と書くvaneですね。
これはですね、風見風光計という、屋根の上に風見鳥みたいな形で音鳥をかたどったようなものありますよね。
あれです、風見風光計、vaneって言いますね。
それから that、これ醸造用などの ok のことです。
あまり使わない単語かもしれませんが。
そして3つ目は vixen、これメスギツネのことです。
オスギツネは fox、f で始まってますね。
ところがメスギツネは vixen というふうに、関連語ではあるんです。
明らかに語源的に関連語ではあるんですが、v で始まって vixen となっています。
この3つですね、vane、that、vixen。
これ本来語でありながら、つまり公英語に由来する単語でありながら、v を誤答に持っている。
これは反則ではないかと思うかもしれません。
実際、先に述べた原則に照らせば反則なんです。
実際、これらの単語のですね、公英語の形を見てみると、vane については fana という形、f なんですよ。
それから that については fat で f なんです。
そして vixen については fixen というふうに、やっぱり f なんですよ。
じゃあこの v、現代英語のその v っていうのはですね、どこから現れたんだかというと、
これが面白いことにですね、英語の、公英語の方言なんです。
公英語の先ほど述べた原則、頭に v は来ないっていうのは、あくまで公英語の比較的標準とされていた方言ですね。
においての規則であって、実は当時からいろいろ方言がありまして、いわゆる生った発音として、
本来 f で始まる、標準語では f で始まるところが、その方言では v で始まるというような、いわば生た方言があったということですね。
普通はですね、公英語の標準的な方言で使われていた語形、つまり f で始まるものがですね、
そのまま受け継がれて現代に通じるということになっているんですが、
たまたま、これなぜかわからないんですが、この3語に関しては、その生った方言ですね。
09:04
語頭に f ではなくて v が出てしまっているという、鉛を持った方言形がどういうわけか、
後の現代語の標準形に受け継がれてしまったということなんですね。
なぜこの3語だけなのかということであるとかですね、この3語がどうして選ばれたのかっていうのはよくわかりません。
ただ結果として、ほとんどの単語がですね、 f で始まって v で始まるのではない、標準的な f で始まるやつが現代まで引き継がれたんですけれども、
この3語に関しては例外ということです。
このような例外があるために、冒頭のタイトルは v で始まる単語は原則として着用語と言っておきました。
それではまた。