1. 英語史つぶやきチャンネル (heltalk)
  2. heldio #79. 古英語には die ..
2024-10-07 10:00

heldio #79. 古英語には die という動詞がなかった!

#英語史 #英語学習 #英語教育 #タブー #古英語 #婉曲表現
---
stand.fmでは、この放送にいいね・コメント・レター送信ができます。
https://stand.fm/channels/650f4aef0bc9d6e1d67d6767
00:02
おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、古英語には die という動詞がなかった、という話です。
この die というのは、非常にある意味では身近な日常的な単語、動詞と言ってもいいと思うんですね。
これは死ぬを意味する直接的な動詞です。 die ですね。
関連語としては、形容詞形の dead というのがありますし、名詞形の death というのがあります。
この3つですね。die、dead、death。
これ現代英語ではごく普通に使われているわけですね。死ぬという意味でですね。死です。
ところがですね、古英語には death とこの dead、名詞形容詞形に対応するこの関連語は存在したんですが、
実はある意味、最も重要なこの die という動詞の形は欠けていたんです。
その代わりに、死ぬを意味する別の単語が存在していたということなんですね。
この意味的にですね、あまりにこう、近似日常的な人間が避けることができないというような非常に重要な意味になった動詞なので、
この意味を表すですね、単語が存在しないという言語はさすがにない、古今東西見てもですね。
しかもそれぐらい重要なので、あまり変わらないんじゃないか。
つまり時代を越えて、あまり他から借りてきたりとか、他の語形になったりということはあまりしにくい、
それぐらい基本的な言語の根幹にあるですね、コアな単語なんではないかと思われるわけなんですが、
実はこの die という動詞の形はですね、古ノルド語、バイキングが話していた言語ですね。
この北欧のバイキングたちの母語、古ノルド語、古いノルド語と呼ぶんですが、ここから実は借りてきたものなんですね。
もともとの公英語にはなかったということなんです。
この die という語をめぐってはいろいろと謎がありまして、ではその背景を話題にしたいと思います。
1000年以上遡った公英語では、この死ぬという意味はどんな動詞、単語によって表されていたのでしょうか。
die ではなかったということですね。
公英語の時期に死ぬを表した単語は、ステオルヴァン、ステオルヴァンという形だったんですね。
これは実は後に少し発音であるとか綴り字を変えますが、starve に発展する語です。
03:08
これ現代でも残ってますね。これ飢える、飢え死にするっていうことです。
つまりこれがですね、もともとは広く死ぬ、つまり飢えによってではなくてもですね、どんな理由によっても死ぬ、今でいう die に相当する非常に中立的なというか、
最も普通の死ぬを意味する単語として、ステオルヴァン、starve が使われていたんですね。
これが通常の通り使われていて、これは他のゲルマン語でも同じで、現代ドイツ語ではこれに相当する死テルベンですね。
これ死ぬという意味で使われるので、現代ドイツ語の状況がちょうど公英語にあった。
ところがですね、英語では公英語の次の中英語の時代にかけてですね、少し変わってくるんですね。
これが単に死ぬというのも使い続けられたんですが、特別にですね、飢えて、飢えによって死ぬというふうにある意味が限定されてきた。
死に方が決め打ち、決まった形での死ぬになってきたんですね。
これ現代に至って飢え死にすると。現代ではさらに意味が弱まっている。
死ななくても飢えているのであればstarveという、つまりI'm hungryということを少し強調でI'm starvingと言いますよね。
I'm starving to deathなんて言い方も終わりますが、死ぬほど飢えているよということで、
実際にあの死ぬという意味、あるいは飢え死ぬという意味でですね、使うことは比較的少ないわけです。
こんなふうに英語のステオルバンというのは、一般的な死ぬの意味から、飢えて死ぬ、あるいは一般に飢えるという、
お腹が空いたという意味に変化してきたってことになります。
これともちろん密接に関わるんですが、じゃあ一般的な死ぬという単語は、意味はどうやって表すようになったのか。
ステオルバンが飢えに特化していたわけですから、
じゃあ一般的に死ぬというのに単語が必要になってくるわけですね。
ここでコーノールド語の動詞でいやという形でしたが、これを英語が借り受けたということになります。
これ語源的にはこのdead、deathともちろん一緒でして、
英語にはこの形容詞、名詞は普通に使われていたんですね。
death、deadみたいな意味ではですね。
ところが動詞のdieだけが欠けていた。
ここを埋めるかのごとこういうステオルバンというのが使われていたといったとおりなんですが、
このステオルバンが意味が特化して、一般的には使えなく徐々になっていくとですね、
一方でそれを補うかのごとく、でいやというコーノールド語の動詞が入ってきてdieとしてはまった。
今までのdead、deathと同じ形列でdieというのがうまくですね、同じ形列で形容詞、名詞、動詞がはまることになったんですが、
06:08
これは変化の結果なんですね。
最初からなんでdeath、dead、そしてdieというふうに、
なぜ最初からこう形列はまっていなかったのかというのがまず一つ謎ですよね。
はまっていなくてですね、むしろステオルバンという異質なものがその場所を占めていた。
ところが言語変化によってこれがなくなってdieがはまってきたというような、
何が起こっているのかよくわからないようなことがですね、どうも起こっているということなんですね。
ちなみにこのステオルバンのこのstarveなんですが、もともとの意味はですね、これも実は死ぬではなかったようなんです。
STの部分でですね、ヒントがあるんですが、stiff、固いっていうですね、固まる、体なんかが固まるっていうことから、
stiffなんかと同号弦だと考えられています。
つまり固くなる、日本語でも体が固くなるですね、冷たくなるっていう言い方もありますけれども、
これで死ぬっていうのは比喩的に、遠距離的に表す表現がありますが、どうもその辺りからやってきているらしいんですね。
このようにですね、dieにせよstarveにせよですね、いろいろと語源的には謎が多い。
そして小英語から中英語にかけて起こったことにも謎が多いんですが、一つですね、全てに関係するだろうというアイディアと言いますかね、発想があります。
これは死というのはタブーである、タブー性が強い語であるということです。
タブーというのは口がはばかられる、これを口にするっていうのは、公に大声で口にするのははばかられるっていうもので、死という話題も一つそうですね。
一般的にこのような話題で死を話題にする、これはあるんですが、身近にですね、亡くなった人がいる場合ですね、
これ死とか死んだという方はあまりに直接すぎて、そして感情に直接訴えかけて、かなり厳しいというか鋭いというかね、辛辣な響きを持つわけです。
なので死ぬというのはズバリ使いたくない、お葬式ではタブーですよね。
なので亡くなるとか、亡くなるもタブーだと思いますね、お隠れになるとか、直接なるべく言わないようにすると。
間接的にすら言うことがはばかられるというぐらい、非常に強いタブー性というかショッキングな語感を持っているということです。
実は大というのもあまりにショッキングで使われていない、つまりみんなのボキャブラリーはあったんだけれども、口にはばかられて発言することがほとんどない。
09:01
あるいは少なくとも現代に残っているものは書き言葉ですから、書き言葉の上で載せることというのはもっとないということで、
代わりに固くなる語源に持つステオルバンというのが、この死ぬという動詞の位置にはまっていたのではないか。
つまり大が完全になかったという言い方ができるかどうかはわからないということですね。
あったけど言わなかった。
ただもしそうだとしても、形容詞と名詞だって同じ詞ですのでタブー性はなかったのかというと謎ですし、
しかも後にこうなるとここから結局大入ってきたわけで、じゃあこのタブー性というのが解除された、解禁されたのかということにもなったりして、
よくわからないことが多い。
話題が話題だけにいろいろと謎が多い単語ということになります。
それではまた。
10:00

コメント

スクロール