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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。 このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった
英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。 毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養って頂ければと思います。
今回取り上げる話題は、read-read-read のナゾ、です。
英語の動詞の不規則活用というのは、いくつかあるわけなんですけれども、この中でも read-read-read
読むを意味する非常に日常的な単語なんですが、非常に変な活用しますね。 しかも綴り字がすべて一緒
同じにも関わらず、現在形の場合、現形は read と読んで、過去形、過去分子形の場合は read と読む
というような、全くヘンテコな活用、そしてその綴りを示すのがこの単語なわけですね。 このナゾに今日は迫っていきたいと思います。
このような問題はですね、だいたい発音と綴り字、別物として一回ですね、独立して考えていくといいですね。
まず発音からいきたいと思います。 read-read-read というふうに、現形では read, ee という母音が出ますね。
超母音です。それに対して過去形、過去分子形では え、え、という単母音が出ます。
ee に対してえ、という形ですね。 これは実は英語では少なくありませんね。
このような動詞の活用をするものっていうのは少なくなくて、例えばですね、 この読むの read これ r を l に変えれば
read-read-read というふうに導くを意味する read-read-read という活用になりますね。
この場合、あの綴り字はですね、 read は led に対して過去形、過去分子形は非常に素直に led となっているので
この読むと導くとではですね、綴り字に関しては違う道を歩んだんですけれども、 基本的に発音としてはですね、全く同じっていうことがよくわかると思うんですね。
read-led-led つまり ee-e-e というような関係になります。
超母音単母音単母音っていうことですね。 他にこういうのはいくつか上がると思うんですね。
meet-met-met っていうのもそうですし bleed-bled-bled これ血を流すですけれども、この l を r に変えると breed-bred-bred
がありますし、他には feed-fed-fed なんかもそうです。 つまり ee-e-e というパターンはいくつか少なくともあるっていうことですね。
このパターンに乗っているのが読む母音にする read-bred-bred というわけです。
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この read を例にとって説明するとですね、歴史的に言いますとこれは元々ですね、 原型の形は ra-dan という形だったんですね。
元々長い母音を持っていた ra-dan これが後英語の形です。 ra-dan ですね。
そして実はですね、過去形・過去分詞形には d とか de みたいなのが付くわけです。今でいう ed に相当するものですね。
これがまあ後英語の時代にもちゃんとあって、この ed に相当するやつがですね、de みたいな、ひっくり返ったように見えるわけですが、この形が ra-dan の rad の部分に付くわけですよ。
そうすると rad というふうに、まあ read という単語の互換ですね、この d を d まで言った後に、さらにこの de を付けるわけですよ。
そうすると ra-dan というふうに d が2つ重なることになりますね。最初の d はあくまで互換末の d です。
read の do です。それに対して2つ目の d っていうのは、過去形あるいは過去分詞形を表すあの d です。
そうすると dd というふうにダブるわけですよ。
さあ面白いのは、後英語から中英語期にかけてですね、このように詩音がダブった場合、何が起こるかというとですね、
直前に長い母音、長母音が来ていた場合、で長母音だけでも十分長いのに、そこに dd みたいな、詩音も2つですね。
これが続くと、長すぎるということからですね、この前に来ている母音の部分が短くなるという現象が起こるんですね。
つまり過去形、過去分詞形の語尾に d がありますね。これが互換末の語尾の d と重なってしまったが故に、この dd というダブリが生じたために、その前の長母音は短くなると、こういうことが起こったんですね。
なので、らーだんに対して、らーだ、というふうに短い母音が現れることになりました。
そしてダブっていた d もですね、やがては結局1個の d に短くなってしまいましたので、結果としてみるとですね、
現形は長い母音を保って、そして過去形、過去分詞形は短い母音を保つということになっているわけです。
その母音部分は少し長い歴史の間で変化しましたけれども、今でもこの長さは変わっていません。
read, read, read 長い短い短いという感じになっているわけですよね。
さあこれは導くの l の方ですね。read, read, read のものと完全にパラレルな音の変化の歴史ということになります。
さあここまでが発音部門だったわけですが、次にスペリング部門、つづり字部門を考えてみたいと思うんですね。
read と read ですね。これ同じような道筋をたどったんだというふうに、発音レベルではそうだったんだということを述べたんですが、
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つづり字ではどうも違う道順をたどってですね、導くの l の方がよっぽどわかりやすい分布になっています。
原型は led と書いて read と読ませて、それに対して過去形、過去分子形は発音が red なわけですからスペリングも led というように非常にわかりやすい。
同じようにこの読むの方もなってくれれば、とてもわかりやすいようにと思うわけですが、どうもそうなってないんですね。
read, read, read 発音はそういうふうに長い短い短いというふうになったわけですが、
つづり字に関してはいずれも read で一致してしまっているということなんですね。これがなぜか。
これはなかなか難しい問題なんですけれども、まずですね、一つの理屈として ea と書きますよね。
これは確かに ea と読むことも多いんですが、一方で e と読むということも決して稀ではないという状況がまずあります。
例えば eat これは e a t ですね。これ eat と読ませますね。つまり蝶母音の e に対応するわけです。
一方で例えば head っていう時ですね。 h e a d 同じ ea を使っていますが、えとも読ませられるわけですよね。
なのでこの read, read, read のこの謎について、この ea で両方とも、つまり蝶母音もタンボ音も表せるっていうこと自体は、
この事実自体はですね、他にたくさんも両方 ea という綴り字で表せるっていう例がたくさんありますので、これ自身は特に問題ではない。
ただ何で問題かというふうに我々が思うかというと、 l の方の導くは綺麗に read, read, read の綴り字ですね。
分かれてるじゃないかということもありますし、この読むの read だけ見ても、これだとですね、見た目で現在形か過去形か、あるいは過去分子形かっていうのはすぐに分からないんじゃないかという突っ込みを入れたくなるから、とりわけこの素朴な疑問が思い浮かんでくるわけですよね。
これに答えるのは難しいんですが、一つ Oxford English Dictionary っていうですね、非常に権威のある辞書の語源談で言っていることはですね、
過去形、過去分子形、これ red ですよね。これを red というふうに、非常にストレートではありますが、もしこうしてしまうと、ご存知の通り赤、赤いを意味する red と重なってしまうじゃないかっていうことですね。
これは、同綴り語が生まれてしまうと。これ、 homographic clash なんて呼びたいと思うんですが、同綴り語がですね、現れてしまうと、全く意味が違うということです。
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これを避けるためにですね、読むの過去形、過去分子形の方は譲って、 red はもう赤いっていう方に譲ってあげて、自分は red で我慢するよと。
そういった理屈が書いてあるんですが、この homographic clash を避ける、同綴り意義語を避ける、これ衝突してしまうことを避けるというような理屈なわけですが、
これはどうもうまくいっていない理屈な感じはするんですね。
というのは、まさに同綴り意義語である、現在形の現形の red と過去形の red が、まさに衝突してるじゃないかと。
むしろこっちの方が誤解を生むだろうというような突っ込みが入るからなんですね。なかなかこれは謎のままではあります。
それではまた。