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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
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今回取り上げる話題は、child と children の母音の長さ、についてです。
子供を意味する child の複数形が children ということになるわけですが、
この child になぜ ren がついて複数形になるのかという話は、別の放送で取り上げてきましたので、この問題には今日は踏み込みませんが、
この child っていうふうに二重母音があるところが、複数形では children つまりチャイルドレンにならないってことなんですね。
ち エルドレンということで、短い母音になる。
child に対して children この第一音節の母音の長さと言いますかね。
つまり二重母音なのか、あるいは単母音なのかという違いがあるんですが、これがなぜかという問題に迫りたいと思います。
この単語の公英語の形は何だったかと言いますと、実は chilled というふうに短い母音を本来的に持っていたんですね。
ですので、chilled に複数形の ren に相当するものですね。
当時は少し違ったんですが、これをつけることで chilled みたいな形、これで複数形になったんですね。
つまり、もともと chilled というふうに単母音を持っているので、そのままあそこに ru というのが当時の語尾だったんですが、これをつけることで複数形にした。
そのままですね。つまり、chilled っていうことです。
そして単数形はそのまま chilled という短い母音を持っていたわけなんですが、
この公英語後期から中英語の初期にかけて、ある音の変化が起こります。
これは LD のような詩音連鎖ですね。
2つの詩音が続く場合に、その前の単母音が長くなるという変化です。
つまり chilled は i という音があって、その後に LD という詩音連鎖が来てますね。
まさにこの音の変化を遂げる条件が整った環境なんですね。
こういった場合の i の音は長くなって e となるということです。
つまり chilled だったものが chilled というふうに長い母音、長母音になるわけですね。
この長母音、chilled の e というのが、これはまたずっと後の時代、近代語に近い時代に大母音推移という別の母音の変化がありまして、e が i になるんですね。
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それで今、child ということになりまして、つまり元々、小英語では chilled だったものが、この中英語にかけての変化で一回長くなる、chilled となる。
さらにその後の近代語記に近い時代に起こった変化によって、child というふうになっているということなんですね。
では、i たす ld みたいな形、この場合には伸びるんだと、長母音化するんだというのはわかったんですが、じゃあなんで chilled の方は伸びなかったのかと。
これだって結局ですね、chilled の部分は一緒なわけですよ。
その後にるとかれんの字にこういったものがついているという意味では、短い i たす ld というこの環境そのものは単数形の chilled と全く変わりないわけですよね。
ですが、ここにポイントがあります。
chilled に後ろに r u みたいなのがつくわけですよね。つまり r が来るわけです。
そうすると2つのシーン連鎖ではなくなって、3つになりますね。つまり ld r という形。
あくまで母音が伸びるのは、後ろに ld という2つのこのシーン連鎖があるときに限ってであって、もう一つ語尾がついて、例えば r みたいなものがつくとですね。
これ30シーンになります。このときは伸びるという音の変化が阻止されるということなんです。
なので複数形では r がつきますから、これによって音が超母音化する。これが阻止されて、いまだに後衛語のままの chilled という短い母音を持っているということになります。
単数形のほうは後ろに何も来ません。 ld で語が終わってますので、短い母音に足す ld という2つのシーン連鎖という条件が完璧に整っているために chilled となった。
で、後に child とそういう具合なんですね。もう一つ同じような事例をあげたいと思うんですね。
これは wild です。野生的なというあれですね。これも wield だったんです。つまり chilled と同じように wield だったわけですね。
これも chilled と全く状況は一緒ですよね。 i という単母音に ld が続いて長くなったということで wield になったわけです。
そしてこれがダイボーインスインによって近代語記には wild となったということなんですね。
そしてこの wild という単語と語源的に関係するですね wilderness ってありますね。
荒野、荒れ地って意味ですね。
ワイルドな地ということで語源的に関わりあるってことは何となくわかると思うんですね。
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具体的に言うとどういう語源かと言いますと、これ自体も非常に面白い語源を持っていまして、実はこれ wild の小英語の形。
これ今の deer に相当します。鹿の deer です。
小英語ではこの単語はですね、鹿のみならず動物一般を指しました。つまり wield deer という言い方で、いわば wild animal っていうような言い方だったんですね。
これにネスという名詞語尾がついて、いわば野生動物が住むような場所ぐらいの意味で、荒野、荒れ地という意味になったわけですよ。
そうすると今風に言えば wild deer ness ということなんですね。
これが包まって wilderness なったわけですが、これどう包まったかというと
wield deer ですね。ということで wield の後にすぐ d が来てるんですよ。
つまり ldd になるわけですね。
wild の e の部分戻ると i l d で終わらずもう一個 d が続いちゃうと。
ちょうど children の時に i l d r というふうに3シーンが続いてしまったのと同じ状況で、今度は wild deer ということですから ldd というふうに3つのシーンが続いてしまっている。
この場合にはその前の母音が超母音化するという音の変化は阻止されるわけですので、元通りのと言いますか、古英語以来の wild deer ness となるということですね。
結果的にこの dd の部分は d を2回発音するということは後になくなって、1回の d で今も wilderness という風に発音するようになったわけですが、
音の環境として、つまりこの e が伸びないような環境だったということです。
wild 単体の場合は伸びた。
ところが後ろに deer に相当する単語が続いた wild deer ness というような言い方ですね。
この場合には超音化しなかったということになります。
child, children の関係と wild, wilderness の関係というのはほぼ同じということになります。
今回取り上げた単語では全て ld ですね。これが来てました。
古英語時代にはその前にタンボインが来て、chilled, willed のように yield という連続があったわけですね。音の連続があったわけですが、実は ld に限らないんです。
もう少し他にもあってですね、例えば rd というのも同じようなことが起こりましたし、
それから rl であるとか rn とか mb という繋がり、それから nd という繋がりですね。
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例えば最後の nd でいうと find, find というのがこれ見つけるという単語で、
古英語では語尾がついて finnedan となったんですが、これが nd の前位置ですから伸びたんですね。
そしてダイボーインスインによって find と今なっているというふうに説明することができます。
この今挙げたような ld であるとか rd であるとかその mb, nd いくつか挙げましたが、
これは音声学的に実はこの2つのシーンというのは、下を似たような下構えのところで発音するシーンなんですね。
この組み合わせが来るときに前の単母音が長母音化するということが、中英語機にかけて起こったということだったんですね。
それではまた。