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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
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今回取り上げる話題は、It's kind of you to comeというような表現におけるof、です。
It's kind of you to come。来てくれて親切ですね。というような表現ですよね。
このような公文で、ofというのが出てくるわけですね。
これ一般的には、it to公文とか、it for to公文という不停止の公文ですね。
不停止に主語がついた形で、後ろに回って、頭にはこのダミーの主語であるitが来るというようなことですね。
他の一般的な例では、例えば、It's important for you to go to see a doctor。
のように、forを使って、不停止の意味上の主語を表すというのがありますね。
It's important for you to go to see a doctor。のような文ですね。
For you to go to see a doctor。という表現なわけですが、
このように、不停止の意味上の主語には、一般的に言うと、forを使うんだよと。
toの不停止の直前に、forとその意味上の主語の代名詞とか名詞を置くというふうに習うわけですね。
あなたがお医者さんに見てもらいに行くということは重要だよというような形で習うわけなんですが、
kindとかfoolishとかsillyとか、いわば性質を表すような単語だったりするんですが、形容詞なんですが、これがitsの後に続く場合ですね。
この場合、後ろにいわゆる主語付き不停止が来る場合は、forではなくofを使うんだということになっているんですね。
It's kind of you to comeということで、あなたが来てくれるということは親切であるということになりますね。
なぜforではなくて、一部の限られた形容詞においてはofが使われるのかということです。
これもそういうものなんだというふうに暗記することになっていますが、これ何でかと考えたことはないと思うんですよね。
この一般的なforを使うケースと、そして特殊な一部の形容詞だけに使われるofを使うケースっていうのを意味的に比べてみますと、意味論的には面白い関係が成り立つんですね。
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例えば、It's kind of you to comeというのは、あなたが来てくれたということは確かに親切なわけなんですが、それをしてくれたあなた自身も親切ですよね。
つまりyour kindという関係も成り立つわけです。
一方で、It's important for you to go to see a doctorというのは、何が重要かというと、あなたがお医者さんに見てもらいに行くということが重要であって、
あなた自身は別に重要なパーソンではないわけですよね。
ここあたりが意味論的には違う。
KindとかFoolishというのは、このof何とかという場合の何とかですね、of youとかyou、
このあなた自身も優しかったり、おバカだったりするというような関係が成り立つというのが、意味論的には2つだいぶ違う関係になっているということなんですが、
なぜこのKindとかFoolishの場合、ofなのかという問題と、これは間接的に関わっては来ているんですね、意味論的な問題です。
今後は歴史的に見ていきたいと思うんですけれども、
なぜIt's kind of you to comeというふうに、一般的なforではなくofなのかと、
そしてこのofの用法は何なのかということについて掘り下げていきたいと思います。
この構文の起源を探ってみますと、今から500年ぐらい前ですね、16世紀です。
近代英語という時期ですね、1500年から1900年なんですが、
その前の中英語期から近代英語期に移り変わった16世紀初頭ですね、
いわゆる初期近代英語期になって、どうもこのような構文が、あるいはその元がですね、現れ出したということのようなんです。
それほど英語の長い歴史から見ますと、古いわけではなくて、そこそこ新しめということになりますね。
当初の形はですね、今回のIt's kind of you to comeという、これを基本的例文として考えていきたいと思いますが、
最初からこのような形ではなくてですね、そのkindの部分、今形容詞なんですが、
そうではなくて、a kind thingぐらいの名詞として表現されたんですね。
つまり、It's a kind thing of you to comeということです。
あなたが来てくれたというのは、親切なことですねということで、あくまで形容詞ではなくて、形容詞、kindを含んだ、a kind thingぐらいの名詞ですね。
これが、Itの保護に来ていたと。つまり、It's a kind thing of you to comeというのが、どうやら原形だったということなんですね。
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この場合、of youというのは何なのかということなんですが、これはですね、どうも好意者を表すofの用法のようなんです。
好意者というのは、簡単に言えば、It's a kind thing of youということでしたから、あなたが成した親切な行い、親切なことというぐらいの、好意者というのはそれぐらいの意味です。
of youというのは、あなたがしてくれたkind thingということですね。
パラフレーズすれば、It's a kind thing you didということですね。
あなたがなしてくれた親切なことですねと。で、何がかというと、後ろに来る、to come、来るということ、もちろんあなたが来てくれるということは、あなたがなしてくれた親切なことなのですというぐらいの意味で、
a kind thing of youですね。言い換えれば、a kind thing that you didぐらいの意味で、いわば好意者のofということになります。
このofの用法というのはですね、似たような用法としては、当時ですね、好意者、受け身の好意者ですね。
これは今では、byというのが多いわけですが、これを使うんですが、当時はですね、ofも実はbyに負けないぐらい、非常に普通に使われた好意者のを表す前置詞なんですね。
なので、ある意味では、a kind thing done by youと考えてもいいかもしれません。
あなたによってなされた、あなたからなされたぐらいの意味で、of youと。
そういうふうに考えてもいいんですが、いずれにせよですね、このkind thingをなした主体、好意者がyouであるということを示す、ofの用法だったということなんですね。
ですので、of you to comeということで、あなたが来たという関係よりは、むしろ手前の方と関係が強くて、a kind thing of youというこっちのつながりの方が強かったということなんですね。
a kind thing that you didぐらいの意味です。
こういった意味でですね、好意者のofという用法と考えることができます。
あなたが結局この親切なことをなしてくれたということなんで、あなた自身も親切という関係に当然なりますよね。
そういうことで、先に述べたimportantというときとkindというときでは、そもそもの形容詞の意味合いを持っている本質が違いますので、こういった違いが出てくるということなんですね。
こういった、it's a kind thing of you to come。
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これがある意味定着して、公文として定着してよく使われるようになってくると、このa kind thingの部分が縮略されてと言いますかね、ただの形容詞区になっていくと。
a kind thingだったら名詞区なんですが、このaとthingが取れて、単にkindになっていく。
そうすると、it's kind of you to come。
つまり、あなたがなしてくれた親切なこと、親切な行為ぐらいの意味で、名詞がないと意味をなさないはずだったんですけれども、公文の解釈が変わって、kindだけでokということになった。
そうすると、of youはちょっと浮いちゃうわけですよね。
何の用法かよくわからなくなってしまったというのが実態なんですが、この惰性で、it's important for you to go to see a doctorのようなforではなくofが残ったということです。
ではまた。