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2024-11-06 14:11

【読書ラジオ】『ツミデミック』一穂ミチ

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こんばんは、ゆうこです。このチャンネルでは、私の読書録や日々の学びを音声配信しています。
今日は、一穂ミチさんの【ツミデミック】について話してみようと思います。
大学を中退し、夜の街で客引きのバイトをしているゆうと、
ある日、バイト中に話しかけてきた女は、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗った
過去の記憶と目の前の女の話に戸惑うゆうとは、違う羽根の鳥。
調理師の職を失った京一は、家にこもりがち。ある日、松一の息子、
早人が遊びから帰ってくると、聖徳太子の描かれた九一万円札を持っていた。
近隣に住む老人からもらったという。 翌日、京一は得意のすまし汁を作って、老人宅を訪ねると。
特別演講者。 家中の人間のありさまを描き切った。
心震える全6話ということで。 こちら、直木賞を受賞された作品になりますね。
6編の短編からなるお話なんですけれども、 タイトルは「罪デミック」ということで、
罪とパンデミックがかかった造語だと思いますね。 市保光さんが考えられた造語だと思うんですけれども。
読んでいて、やっぱり消化不良になる本というか、
前作、前回読んだ最新作もそうでしたが、
モヤモヤが残り、これ一体何だったんだろうという違和感が強く残る 罪デミックという短編集になります。
象徴的な作品はですね、一番最後に書かれている サザナミドライブという作品かなと思います。
簡単にこのあらすじを話してみると、 パンデミックに人生を壊された人たちの
集団自殺に向かう車中での出来事が書かれたお話なんですよね。
まさにこの罪デミックというお話は、どの短編もパンデミックによって人生を壊された人が描かれているんですけれども、
果たしてそれは、本当にパンデミックが原因なのかっていうところが、 やっぱり強く残る違和感だったりしますよね。
人ってそれぞれ、
自分が何を推しで課すかわからないという恐怖や、 このまま行くと取り返しのつかないことになるという怖い思い、
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そんなものを抱えて生きているのかもしれないと思うことがあります。
それは何かのきっかけによって、突然それが全面に出てしまうようなことって、 誰にでも起こることなんじゃないかなと思ったりします。
私は子供を育てている時に、初めての子供で、実家も遠かったので、 あんまり人に頼れないという状況の中で、
私はもしかしたらこの子を虐待してしまうかもしれないという、すごい怖い思いをしたことがあります。
それでも踏みとどまれたのは、一体何だったのか、今でもよくわからない。
だから、すごくギリギリのところにいるんじゃないかなと、 自分自身が思った経験があるんですよね。
ここから先、踏み外してしまうと、取り返しのつかないことをしてしまうんじゃないかという、 その縁に立つというすごく怖い思い。
怖いからこそ踏みとどまれたのか、もしくは何か別のことがあったのか、 あれは何だったんだろうと思うことがあります。
でも、その踏みとどまるということができなかった場合、 このツミデミックに出てくる人たちのように、
道を踏み外してしまう、取り返しのつかないことをしてしまう。 でもそれは日常のどこにでもあって、ふとした瞬間に牙を剥いてくるような、
そんなことなのかなと思ったりする。そう考えるとすごく恐ろしいですよね。 パンデミックというのは私たちが想像していなかった、
過去、歴史の中ではそういった疫病が蔓延するという経験を、 人類の歴史の中で何度も経験してきたはずなのに、
毎回想定していないことで、私たちは、
友人や知り合いの命を落としてしまうという経験をするんですよね。 そんなぼんやりしていることに直面して、
何かそういったことのきっかけで、 道を踏み外してしまう人が出てくる。
それはもしかしたら私だったかもしれないし、 私が大事にしている別の誰かだったかもしれない。
そんなことを考えると、全く縁通いお話が描かれているにもかかわらず、 自分ごとのように読んでしまうという、
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前作の市穂道さんのお話も、
縁通い、自分とは関係ない物語が書かれているなと読んでいくうちに、 これはもしかしたら私の物語だったかもしれないという、自分ごとのようになってしまうという、
市穂道さんのお話を2作連続で読んで、そういう共通点に気づきました。
この短編の中で先ほど象徴的だったのが、
パンデミックに人生を壊された人たちが集団自殺に向かうという話、 サザナミドライブが象徴的だなぁと思ったんですけれども、
印象に残ったのは2作ありまして、 それがですね、そのうちの一つがロマンスという短編ですね。
これは市穂道さんのこのツミネミックが紹介される時に、 一番フォーカスされる短編だと思うので、
もしかしたら聞いたことがあるかもしれないんですけど、 このロマンスの主人公の
さゆみ…じゃなくて、すいません、ユリですね。 ユリという主人公、
さゆみという子供がいる主婦なんですけれども、 このユリが
デリバリーにハマっていって道を踏み外すという、
なんでそんなことになったんだろうと理解できないんですけれども、 そういう話があって、これを読んだ時になぜこの
主人公はですね、 あの子供がいるにも関わらず、なんで踏み止まれなかったんだろうというふうに思ったんですよね。
もうその母親をしている間に、そのギリギリのところのラインを踏み越えてしまっていただけなのかもしれない。
それがパンデミックによる何かしらの変化で、 一気に転落してしまったのかもしれない。
一体何だったんだろうと、何度繰り返し読んでも わからない部分でしたね。
それとすごく近い物語として、特別遠古舎という短編があります。 この特別遠古舎という短編の主人公は男性で、
妻と子供がいるんですけれども、 調理士の仕事を失業してしまって、
妻に養ってもらっているという男性なんですよね。 子供が近くの近所の老人宅で旧一万円札をもらってきたということをきっかけに、
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お金に困っていたこの主人公は、
その老人宅に行くようになって、 そこにタンスにね、大金が入っているということを見つけてしまう。
ロマンスという短編を読んだ後の特別遠古舎なので、 この人もまた犯罪を犯してしまうんじゃないかなという思いですごくドキドキしながら見たんですよね。
何が人を正常、正常なというか人間らしい領域に押し留めるのか、 それとも自分自身で踏みとどまろうとするその力だったり、
その瞬間というのは何によって決まるのかということを、 この二作の短編を読むことで本当にわからなくなったんですけれども、
そんなことは考えてもきっとわからないんですよね。 人ってやっぱりそれぞれで、見えている一面じゃないものを、
いろんなものを普段見せないようにしているのが人間であって、 それは自分すらも気づかないものであるかもしれない。
それが何かしらのきっかけによって、一気に全面に押し出されてしまって、 ラインを踏み越える、道を踏み外すということになってしまうのかもしれない。
もしくは全面に出てたとしても、そこで踏みとどまるという人もいるのかもしれない。 その本当にこう
5センチぐらいの差分ですよね。 一歩分の違いっていうのは、一体何なんだろうかというモヤモヤが、いつまでも残る作品だったなぁと思います。
市穂道さんの作品は、今回も出てくる登場人物が、
理解はできないんですけれども、 なんかやけにこう伸び伸びと描かれているなぁというところがとても印象的で、
物語の中で、しかも短編というすごく短いストーリーの中で、 その人らしい部分がどんどん見えていって、
それは一面だけではなく裏側までどんどん見せてくれるという、その人間描写というか、
すごい悲惨でネガティブで目を覆いたくなるような、その登場人物の行為だったり、
言葉、行動もありありと描かれていて、 なんかまるでその本当にこの人がいるような、
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気になってしまう、市穂道さんの想像力とそれを描く、
描き切る力っていうのが凄まじいものがあるんだろうなというふうに思いました。 それは短編だからこそわかることなのかもしれないなと思いますね。
まさにその、カチューの人間のありさまを描き取った、心震える、あとはゾッとする、
お話だったということで、
そのパンデミックと言われるものから、少しも時間が経った今となっては、その真中に書かれた、この
ツミデミックというお話を、一歩線を引いたところから、私たちは読める状況にあるなと思うんですよね。
カチューにいる時はとてもこんな話、読めなかったなと思うんですけれども、今なら当時を振り返りながら、こういう話を読める状況にあるのかなと思います。
そういった意味では、今直木賞を取られていて、このツミデミックというお話が本屋さんに並んでいるという状況は、私たちがもう一度、あのことは一体何だったんだろうかと、
もう一度振り返って、立ち止まるきっかけになる、そんな本なのかなと思います。 ただ読むのは少し覚悟がいりますし、消化不良になりますので、
あの元気な時に、もしよかったら読んでみてほしいなと思う本でした。
ということで今日は、一歩道さんのツミデミックという話について話してみました。 この配信が気に入っていただけたら、いいねやコメント、フォローをお願いします。
励みになります。 今日も最後まで聞いていただいてありがとうございました。
ではでは。
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