1. 真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室〜
  2. 声に出して読みたいタイトル『..
2021-05-12 12:23

声に出して読みたいタイトル『君は永遠にそいつらより若い』【第57夜】

今夜は「ただ今ぜっさん”29歳モヤモヤ期”」と語るリスナーさんへ、津村記久子さんの『君は永遠にそいつらより若い』をご紹介します。この秋、佐久間由依さん主演で映画化も決定している『君は永遠〜』。自己肯定感は低いままじゃ人としてダメなのか……というのも裏テーマなのかなと思って読みました。

00:04
みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第57夜となりました。今日のお便りご紹介します。
ペンネーム、うみがめの涙さんからいただきました。
バタやんさん、はじめまして。
はじめまして。私は今絶賛29歳もやもやきです。
やることやりたいことはたくさんありますが、つい周りの人と自分を比べてしまったり、もっと早く始めればよかったのに、と日々悩みます。
なるほど、29歳もやもやきって言うんですね。
パワーワードですね。
やりたいことは1、結婚。2、転職。3、留学。と書いていらっしゃいました。
やりたいことはやる。思っとうにしていた10代のような前向きさを取り戻したいです。
もやもやきを脱出できるような背中を押してくれる方を教えてください。といただきました。
ポッドキャストを聞いてくださってありがとうございます。
そんなウミガメの涙さんへ、今夜の勝手に貸し出しカードはつむらきっ子さんの君は永遠にそいつらより若いにしました。
これ先に言ってしまうと、この小説の内容がどうかということはちょっと置いておいて、
悩みを背読した時にウミガメの涙さんにこれを言いたいなと思って選びました。
君は永遠にそいつらより若い。
29歳は若いし、若くないって思うところもわからんではないけれど、
何かを始めるのに遅すぎることもないし早すぎることもない、ちょうどいい時期なんじゃないかなと思ったりしました。
こんなコロナとかあって出遅れちゃったなとか、動きそびれちゃったっていう焦燥感はもしかしたらね、
この1年はすごく感じやすかったかもしれないんですけど、
永遠にそいつらより若いから大丈夫ですよとお伝えしたい。
そいつらってどいつら?私とかも含めてそいつらですね。
私はよくこのタイトルを頭の中で反数して、
私は永遠にあいつらより若いって思ってこぶしています。
03:00
そんなふうに頭の中で反数したくなるタイトルをつけるのが上手いのが津村さんだなぁと思っています。
やりたいことは二度寝だけ、ありぐるやとは仕事ができない。
とにかく家へ帰りますとかね、何度も頭の中でつぶやいちゃいますね。
せっかくなので、君は永遠にそいつらより若いがどんな小説なのか、今日ご紹介していきたいと思います。
君は永遠にそいつらより若い。の主人公堀貝は大学生で就職も決まっていて単位も取り終えた。
身長が170センチ以上あって諸女らしいのですが、時間も自分自身もちょっともて余しているような女子なんですね。
バイトと学校と飲み会って感じの毎日でグダグダしていて、諸女という言葉に自分で引っかかって
童貞の女と呼んでくれって言ったりとか、不良在戸、劣等品種とか自分で言ったりして、
そんな自虐混じりの堀貝の脳内が漏れ出しているような文体でどんどん話が進んでいくんですね。
堀貝は一見は調子のいい感じだし、男友達もいるし、それなりに充実してそうです。
なんだけど、劣等感があったり諸女という点が特に象徴的なのか、人として認められていないような、どこか自分の埋まらないものを感じているんですよね。
就職も決まって単位も取れてて、友達思い出し、部屋はすごい汚いみたいでブラジャーを踏みつけて足を怪我したりとかしてるんですけど、
酔い潰れた女の子を解放してあげたり、人としてすごく十分ちゃんとしてるじゃんっていういいやつなんですよ。
もうそういう人から見てちゃんとしてるじゃんっていうことと、自分のなんか埋まらないものを感じてるっていうのはね、ギャップがあったりするもので、
それはウミガメの涙さんももしかしたらそうなのかなと思ったりして、人と比べたりすること全然ないし、ちゃんとしてるし、
こんなしがないラジオ番組を見つけて、ハガキ、ハガキじゃないけどリクエストを送ってくれるなんてすごい行動力だし、すごいアンテナだと思うんですけどね。
君は永遠にそいつらより若いわ、そんなモヤモヤしている堀がいちゃんの自分語りというか、脳内言葉数が多いタイプなんですよね。
グザグザと考えて、この話どこに向かうのかなって思いつつ、この辺りのこの話どこに向かうんだって思いつつ読ませる感じは、
夏村さんの深刻調というか、小説家として、私はすごく好きなところなんですけど、でもそんなどこへ向かっていくかわかんないうちに結構大きな展開に後半、一変していきます。
06:15
前半のコミカルさからはちょっと想像もつかないような重ための話に展開していきますので、そのあたりは後半にお話ししていきますね。
この小説の冒頭は堀がいが雨の中、自転車の鍵を探して地面を指で掘り起こしているという比較的激しいシーンから始まるんですね。
その緊張感のあるシーンにどんな意味があるのか、なんで自転車の鍵を探しているのか、特に説明のないまま、この後の堀がいがバイトと学校と飲み会の日々みたいなグダグダした話になだれ込んでいくんです。
でもその自転車の鍵を探している意味が衝撃的な話へと最後つながっていくわけなんですが、
この小説2005年に出ていて約15年前なんですけど、ジェンダー問題だったりセクシャリティの問題が一つのテーマになっています。
堀がいちゃんが175センチもある大女で言動も男まさりな感じなところが後半に響いてくるんですけど、男まさりとはいえ女性なんですよね。
男女の差別や格差はあっちゃいけないと思いますが、物理的な肉体の違い、腕力の差があるわけで、そのあたりの無力感を感じたりというところが出てきます。
今、弱者男性という言葉も出てきていたりして、フェミニズムの動きが活発になる一方で、男性特権を享受できない弱者男性もいるよという話だと思うんですけど、
どっちの方が誰の方が弱者なのかと競うことにはあまり意味がないような気がしますけれど、
弱者の視点で弱者を語るというのは、この小説の一つのテーマになっている気がしました。
やはり男女の体格の差、物理的な差というものは存在はしてしまうということなんですよね。
さて、今日は君は永遠にそいつらより若いという、このタイトルの元になった歌詞を紙フレーズとしてご紹介して終わりたいと思います。
09:07
君を侵害する連中は年をとって弱っていくが、君は永遠にそいつらより若い。
その調子だと私のアクラツマまでに無責任な部分が笑った。
実はこの小説、もともとはマン・イーター、人食いというタイトルでダザイ・オサム賞を受賞しているんですね。
解題されてこのタイトルになった、その引用歌書が先ほど読んだ部分なんです。
すごい解題、素晴らしい解題だなと思いますけどね。
マン・イーターも内容には合っているんですけど、そのタイトルのままだったらここまで、
こうして15年後に映画化されるには至らなかったんじゃないかと思ったりして、
これ以外は友達を、周りの人たちを通じていろんなことがあって、
考え方が深まったり変わったりしていくんですけど、
結局劣等感は解消されるわけじゃないし、むしろ無力感に打ちのめされたりするわけです。
でも君は永遠にという先ほどのセリフは、
自分の無力さも認めた上でさらに弱い立場の人、少年に向けられた言葉なんですね。
アクラツマまでに無責任ってすごい言葉だなと思うし、
それを自分で言えちゃうって強い人だなと思うんですけど、
自己肯定感が低いまま他者に優しくできるんだなっていうことに感動した箇所でもありました。
映画はそのあたりどう描かれるのか非常に楽しみですね。
私のイメージの中の堀画さんは、
佐久間優衣ちゃんだとちょっと美人すぎるというかおしゃれすぎるんですけれども、
でも辛い現実が突きつけられることの多い世の中で、
そしてこの小説の中で堀画の人柄に救われる部分が多い物語なので、
非常に楽しみであります。
今日はリクエストありがとうございました。
また聞いていただけたら嬉しいです。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりなと出出はこんな感じで、
12:00
皆さんからのお便りを基にしながら、
いろいろなテーマでお話ししたり、本を紹介したりしています。
MIMOREのサイトからお便り募集しているので、ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
12:23

コメント

スクロール