ProcreateのCMYKの問題点
iPad用お絵かきアプリのProcreateには、CMYKのモードがあるにはあります。
でも、ちょっと癖があるというか、問題があるので、注意が必要です。
私はProcreateでCMYKで絵を描くのは意味がないと思っていたんですが、うまく使いこなしている人もいるようです。
今回はそういった話をしたいと思います。
まず、ProcreateでどうやってCMYKを扱うかですが、新規でキャンバスを作るときにしかCMYKを選べません。
新規でキャンバスを作るときにカラープロファイルを選ぶところがあって、そこでRGBではなくCMYKに切り替えてCMYKのプロファイルを選ぶことができます。
プロファイルに関する話は後にします。
すでにRGBで作ったキャンバスをCMYKに変換する、あるいはCMYKからRGBに変換することはできません。
RGBで作ったものをどうしてもProcreate上でCMYKにしたかったら、RGBで作った画像をコピーしてCMYKのキャンバス上にペーストするという手があります。
そしてProcreateでCMYKで絵を描くときの問題点です。
CMYKのキャンバスでは色を選ぶときにCMYKの値で色を指定することができます。
CMYKのそれぞれが何パーセントかを数値で指定できるんですね。
ところがそうやって描いたイラストをCMYKで画像ファイルに書き出しても、実際にはCMYKで指定した数値の色になっていません。
ProcreateでCMYKで色を塗って、PSD形式で書き出して、Photoshopで開いて、私実験してみました。
Photoshopで確認したところ、そのPSDファイルはCMYKのモードにちゃんとなっていたんですが、色は全部置き換わってしまっていました。
例えばY100%、イエロー100%で指定した色はシアン4%、マゼンタ3%、イエロー80%、ブラック0%に数値が置き換わっていました。
Y100%で黄色のインクだけ100%で印刷したいという色なのに、シアンもマゼンタも混じってしまっていますし、イエローも80%に減ってしまっているということです。
シアン100%で塗ったはずの色も書き出したPSDファイルでは、シアン80%、マゼンタ11%、イエロー2%、ブラック1%と中途半端に他のインクが混じった色になってしまっています。
こんな感じで全部の色が変な感じに他の色が混じってしまっています。
そして黒。K100%で指定したものはシアン76%、マゼンタ74%、イエロー67%、ブラック69%と全部の色が混じった状態になっています。
印刷物に関わっている人だったら、黒がK100%じゃなかったらキーとなってしまうと思います。
リッチブラックと言ってK100%にあえてCMYの色も重ねるという方法もあるんですが、黒が意図せずK100%じゃないのは気持ち悪いですね。
つまり、ProcreateのCMYKでのキャンバス上での絵を描くというのは、CMYKモードっぽいけども内部的にはRGBで色をつけているのと同じなんだと思います。
ただ、印刷物のCMYKに合わせるように限定された鮮やかな色が選べない狭い色域でしか色が使えないように制限されたRGBモード的なものなのかなと思いました。
RGB入稿の利点
そもそもCMYKで描ける機能が用意されているのは、印刷物用のイラストを描くためですね。
iPadとかパソコンの画面は光の3原色のRGBで色が表示されていますが、印刷物の場合は色の3原色のシアン・マゼンタ・イエローに黒をプラスしたCMYKの4色のインクで印刷されるんですね。
なのでグラフィックツールのCMYKモードでは、色をこのインクのCMYKそれぞれ何パーセントで印刷したいかを設定できるので、ある意味印刷のシミュレートを画面上でしているとも考えられるかと思います。
画面の色と印刷物の色とを同じにするというのはとても難しいんですが、数値がわかっていればシアン100%で色を指定すればシアンのインク100%で印刷されるということなので、慣れていれば印刷物の色を数値から想像できるんですね。
ネット印刷とかでも紙の見本を取り寄せられるんですけども、そういうの見たことある人はわかるかと思うんですが、実際に印刷した色の見本が載ってるんですね。
そこに10%刻みぐらいでシアン10%の時20%の時みたいな感じでどういう色で印刷されるかがわかるようになっています。
これがCMYKの他にマゼンタプラスイエローの赤色とかシアンプラスマゼンタの紫色シアンプラスイエローの緑色とかが何%の時にどういう色で印刷されるかが紙の見本に印刷されているので、
この数値で色を指定すればだいたいこの色で印刷されますよと。画面の色よりも数値を信用して色を指定すればそんなに大外ししないということです。
でもProcreateではCMYKの値で色をつけても数値が変わってしまうのでCMYKで色を選ぶ意味があまりないですし、そもそもCMYKで絵を描く意味がそんなにないんじゃないかなと私は思っていました。
個人的にはProcreateではRGBで絵を描いて、RGBで描き出したものをAdobe Photoshopで調整しつつCMYK変換すればいいと考えています。
でも自分はAdobe Photoshopを持ってないよという人はその後工程を他の人に任せられたら任せたらいいんじゃないかと思います。
例えば印刷物に使うために出版社に納品するイラストだったらRGBで入稿できないかどうか相談してCMYK変換はその後の紙面を作るデザイナーさんなりのプロに任せられるんだったら任せたらいいんじゃないでしょうかと。
実際私は以前雑誌にイラストを連載していたときにRGBで入稿していました。最初の頃は自分でCMYKに変換してから入稿していたんですがそこまで色にこだわっているわけでもないですし逆にプロに任せた方がいいんじゃないかなと思って担当の人と相談した上でRGBで入稿するようにしました。
あと今は印刷所でもRGB入稿に対応しているところもあります。もちろん画面と同じ色で印刷できるわけではないでしょうがあまりにくすんだ色とかにはならないようにプリントできるんだろうなと思います。
なので変に自分で中途半端なCMYKファイルを作るよりもRGB入稿する方がいいんじゃないかなと思います。
Procreateからの書き出しするときの注意ですがPNG形式のようにCMYKをサポートしていないファイル形式もあります。
カラープロファイルの活用
またJPEGはCMYKも扱えるんですけどProcreateからJPEGで書き出せるのはRGBだけです。
ProcreateでCMYKで作ったものはPSDかPDF、DIFFで書き出さないとCMYKではなくなってしまいます。
最後にProcreateのCMYKでうまくいっている人の例です。
ProcreateでGeneric CMYKのプロファイルで絵を描いてPhotoshopに持っていってPhotoshop上でプロファイルをJapanColor2001コーテッドにすることで画面で見た色と印刷物等をかなり近づけられているという人がいました。
その人の投稿のコメントで他の人がProcreateにJapanColor2011コーテッドのプロファイルを追加してそれを使ってうまくいっていると書いていました。
JapanColor2011コーテッドのカラープロファイルは一般社団法人日本印刷産業機械工業会が提供していてウェブサイトからダウンロードできます。
また、Adobeのアプリケーションをインストールしたときに一緒に保存されているカラープロファイルをProcreateに読み込ませて使うこともできるそうです。
カラープロファイルとはデジタルイメージや印刷物における色の表現を一貫性を持って管理するための設定ファイルと説明されています。
ともかくProcreateでCMYKで絵を書くことによって印刷物とかなり近づけられているという人がいるのでCMYKで書くということも意味があるんだろうなと思い直しました。
ProcreateのGeneric CMYKのプロファイルは普通の印刷物よりも遥かに狭いくすんだ色でしか塗れないと書いていた人がいたので
ジャパンカラー2011コーテットのプロファイルをProcreateに追加して絵を書くというのがProcreate上でCMYKで絵を書くときの最適解なんじゃないかなと試したわけじゃないですが私は思いました。
今回は以上です。アシカガコウジがお届けしました。