知性の罠の紹介
絶望カフカの何者かになりたいラジオ、この番組は元アスリートのカフカが日々の絶望と些細なヒントをお送りするラジオです。
さて今回はですね、知性の罠という本についてお話をしていきたいと思います。
著者はデビッド・ロブゾンさんという方で、翻訳がヒジカタナミさんですね。
僕はなぜこの本を手に取ったかというと、ヒジカタナミさんが母子でご紹介されていたからです。
実はヒジカタナミさんの翻訳本をいくつか僕読んでまして、その中でも知ってるつもり無知の科学という本の僕は大ファンでして、
ヒジカタナミさんが絶賛をされていたので、それは読まなければという形で手に取りました。
今回文庫化されたということで、その文庫版を読みました。結論めちゃくちゃ面白かったですね。
内容としては副題にもある通り、なぜインテリが愚行を犯すのか、その理由とか、その体系立ててインテリと呼ばれている人たちがどういう罠にはまりやすいのか、それについて書かれています。
例えば、科学者。それもノーベル賞を受賞するような科学者。
あとは政治家。それも国を代表するような政治家。 そういった方々が
実は愚行を犯してしまう人生をたどっている。 その訳とはということで、
著者の目線からその理由が書かれている。そんな本になっているんですね。 いやこれは非常に気づきの多い本だったなぁと個人的には思っています。
インテリが陥る罠
今回はそれをご紹介していきますね。 では、
なぜインテリが愚行を犯してしまうのかっていうのを、 この本書ではまず3つ理由を挙げているんですね。
ちょっとわかりにくいんですけれども、3つまずご紹介していきたいと思います。 1つ目は実務知能が欠けていること。
これどういうことかというと、 まあ多くの場合ですね、一人で完結する仕事ってあんまりないじゃないですか。
そうではなくてチームで仕事をするにあたってその いいアイデアが生まれたとしてもそれを実行するための力。
まあ他者を説得する力も含むとこの本の中では書かれていました。 いわゆる社会的な知能ということですよね。
この罠にハマってしまうタイプというのは何というか、 いわゆる天才型の方に多いのかなというふうにも思いますね。
何かとてつもないアイデアを自分の頭の中には生み出すことはできるし、それを自分の中で組み立てることはできるんだけど、
それを他者と共有してプロジェクトにしてマネジメントしていく能力に欠けてしまう、 そういう罠があるんだと。
それが一つ目ですよね。 そして二つ目のインテリが陥りやすい罠。
それは合理性障害と呼ばれているものです。 これまた分かりにくい概念なんですが、簡単に言うと
AとBというものを着想的に結びつけてしまう。 それ故にAとBの間にある様々な変数を見落としてしまうという罠になっています。
例えばCO2排出量が増えると地球を長いなる。 それを直感的に一番最初に考えた人は、とてつもなく頭がいい人だと思うんですけれども、
その直感は正しいんだけれども、そのロジック、なぜそうなのかというところまで 考えつくというところができないというか、最初にそれを信じ込んでしまうが故にそれ以外のもっと他の要因があるから
地球の中起きているということを考えなくなってしまう。 それが二つ目のインテリの罠なんだというふうに著者はおっしゃっています。
そして三つ目は二つ目の概念に近いんですけれども、 自らの立場と矛盾する意見を否定してしまう。
これは自分の考えていることは正しいんだ、絶対なんだということを譲らないが故に、それを否定する意見というのを見なかったことにするということですよね。
今挙げたように知性があるが故に三つの罠にはまってしまう。 そんなことを著者はおっしゃっています。
アインシュタインの教訓
そして僕が印象に残ったのが、その中である一人の人を例に挙げてこの罠にはまった過程を描いているというところなんですよね。
その人がアインシュタインになります。
人類史上最も頭の良い人と言っても過言ではない、というかそういう紹介をされていたりもするんですが、
アインシュタイン、彼自身も実は知性があるが故罠にはまってしまった。 そんなことを著者は言ってるんですよね。
ではなぜかというのを簡単にご紹介していきたいと思います。 まずアインシュタイン、量子力学特殊相対性理論などを発表した研究者ですけれども、実は彼が
科学者として最も輝いていたのって何歳ぐらいだと思いますか。 実はこの特殊相対性理論を発表した年というのが、彼が26歳の年になるんですよね。
確かにその年というのが彼にとってとてつもない年であったというのは間違いないでしょう。
ただ晩年に向かうにつれて研究者として限りを見せていった。 そんなふうにこの本では描かれています。
実は時期とか重力を全て統一していた概念として理論立てて研究していくというのが統一理論というものをアインシュタインは発表しようとしたんですけれども、それが途中で断念せざるを得なかった。
というかそれが証明できなかったんですよね。 それが彼が60歳頃になります。
そうした時に彼自身が先ほどの罠、自らの立場と矛盾する概念、それを常に否定してしまっていたんですよね。
それがロバートオッペンハイマーがマンハーター計画で原発を作り出したその核の力なんですよね。
実は核を否定していた、研究者として否定していたのはアインシュタインなんですけれども、この統一理論も核があることで破綻してしまうという理論でした。
そういうこともあってアインシュタインというのは ずっとありもしない理論を研究し続けていたんですよね。
晩年。 加えて若手の研究者を頭ごなしに否定をするようなこともしていたようです。
この本ではそんな風に書かれていました。
そして晩年、彼はこんな風に言っています。
私の生み出した子孫の多くは幼くして失望という名の墓場に埋もれてしまった。
多くの研究をする中で、若い時はとてつもない理論を打ち出すことができた。
けれどもその後、子孫、まあ研究ですよね、携わってきた研究、子供たちというのは
墓場に埋もれてしまった。 意味のない研究をしてしまった。
こだわってしまった。 自分の立場と矛盾するものを見てみぬふりをしてしまった。
そんな後悔の言葉なのかなっていうふうに僕には思えました。
あのアインシュタインですらハマってしまう知性の罠がある。
それはなんというか、とてつもなく切ないけれども、どこか人間らしくて
なんかとてもアインシュタインという人がちょっと魅力的に思えるエピソードでも僕自身はありましたね。
まあこの本の中ではアインシュタインは晩年にかけていわゆる老害のようになってしまった
という描かれ方をしているんですが、
でも一周回って考えてみると、 それでも研究をやめなかったっていうことなんですよね。
アインシュタイン自身が。 それは
ある種科学者としての姿を貫き通したと言えるのかなって個人的には思いましたし、
なんかその姿勢自体は僕は かっこいいなって思いました。
最後すごいバカみたいなね感想になってしまうんですけれども。
それと付け加えるなら彼自身はずっと原爆に反対をし続けていて、
マンハッタ計画にも加わらなかったという経緯があります。
なので彼自身はずっといろんな葛藤を抱え続けながら研究者として晩年まで過ごしていったんだろうなっていうふうに思いますね。
まあ最後脱線してアインシュタインの話になってしまいましたけれども。
皆さんも知性の罠はまらないようにお気をつけください。
というわけで今回は以上になります。最後までお聞き下さりありがとうございました。ではまた。