はじめに
今日は、飲食店における現金の取り扱いと衛生管理について、少し整理して考えてみたい。
キャッシュレスの是非を語る話ではない。
「現金を扱うこと自体が、衛生管理上どういう意味を持つのか」という、もっと基本的な話である。
きっかけは、SNSで偶然目にした一本の動画だった。
---
あるカレー屋の動画から始まった違和感
東京に、非常にスピーディーにカレーを提供する店があるらしい。
その提供スピードを検証する、いわば面白動画のようなものだった。
ところが、その日は前客の会計に時間がかかり、カレーの提供が少し遅れた。
理由は単純で、店主がワンオペだったからである。
動画を見ていて、僕が気になったのはスピードではない。
現金を触った直後に、手を洗わず食材を扱っていた点だった。
案の定、コメント欄は荒れていた。
---
論点がズレると、議論は成立しない
コメント欄には、こんな意見が並んでいた。
- ワンオペなんだから仕方ない
- お前のスマホだって同じくらい汚い
- 神経質すぎる
正直に言って、どれも論点がズレている。
議論というのは「何について話しているのか」を共有しなければ成立しない。
この場合の論点は、好悪でも感情でもなく、
飲食店において、現金を扱った手で食品を触ることは、衛生管理上どう評価されるのか
ただそれだけである。
---
なぜ「現金」は問題になるのか
ここで一度、制度の話を整理しておく。
日本で最も基本となるのは、食品衛生法である。
ただし、食品衛生法は「金銭を触るな」とは書いていない。
ポイントは次の考え方である。
- 調理器具ではないもの
- 不特定多数が触れるもの
- 洗浄・消毒が困難なもの
これらはすべて「不潔になり得るもの」として同列に扱われる。
つまり、
- 現金
- スマホ
- 自分のカバン
本質的には、すべて同じカテゴリーだ。
---
それでも現金が問題視される理由
では、なぜ現金だけが強く問題視されるのか。
理由は単純である。
営業時間中に、触らざるを得ないからだ。
スマホやカバンは、触らなければいい。
実際、触っている人も多いが、あれも本来は問題である。
しかし現金は、特にワンオペ営業では避けようがない。
完全キャッシュレスでない限り、必ず触る。
だからこそ、問題が顕在化する。
---
中核概念は「交差汚染」
ここで重要になるのが、交差汚染という概念である。
- 汚染された可能性のあるものを触る
- その手で食品を扱う
- 食品が汚染される
この流れを断ち切ることが、衛生管理の基本である。
対策はシンプルだ。
- 手を洗う
- 手袋を使う
- トングを使う
- キャッシュレスにする
いずれか、あるいは組み合わせればよい。
---
違反すると即アウトなのか?
では、現金を触ってすぐ食品を扱ったら、即違法なのか。
答えはNOである。
通常は、せいぜい指導レベルだろう。
動画が拡散したからといって、保健所が即座に飛んでくることは、まずない。
これは、僕自身が行政職員だった感覚からしても、そう思う。
---
しかし「事故」が起きたら話は別である
問題は、その後である。
もし食中毒や汚染が発生し、なおかつそのような行為をしていた証拠が動画として残っていた場合。
これは、言い逃れができない。
「だから起きたのではないか」と言われれば、反論は極めて難しい。
そう考えると「そんな動画を撮らせてしまうこと自体が問題」という話になる。
---
現金は実際に汚いのか
感覚論ではなく、事実として現金からは、
- 大腸菌
- 黄色ブドウ球菌
- ノロウイルス関連の汚染
などが検出された事例がある。
自分が感染していなくても、前に触った誰かが感染していた可能性は否定できない。
その現金を扱い、すぐ食品を触る。
交差汚染が起きやすいのは、明らかだ。
---
飲食店で一番危ないものの一つ
こう考えると、飲食店内で最も交差汚染が起きやすいものの一つが、現金であることは間違いない。
スマホやカバンは、不特定多数が触らない。
現金は触る。
この差は大きい。
---
体感としての「清潔さ」
個人的な感覚だが、現金を触ってそのまま調理する店は、あまり美味しくないことが多い。
もちろん、加熱調理なら問題が顕在化しにくい場合もある。
それでも、気持ちのいいものではない。
---
衛生は「癖」に落とすのが一番強い
法律や科学以前に、癖として身につけることが一番強い。
個人的経験だが、子どもの頃に「お金を触ったら手を洗いなさい」と教えられたことは、今でも生きている。
---
過剰な衛生概念との線引き
ただし、過剰な衛生観念は別問題である。
アトピー性皮膚炎が増えた背景には、洗いすぎによる皮膚バリアの破壊がある、というのが現在の主流説だ。
清潔にしすぎて、自分で自分を弱らせた側面がある。
---
口に入れるものは「ほどほどの清潔さ」でいい
完璧な無菌状態など不可能だ。
それを求めれば、宇宙食しか食べられなくなる。
そうではなく、
明らかに汚染が起きやすいものを触った手で、そのまま食品を扱うという「明確に危ないこと」だけは、やめようそれだけの話だと、僕は思っている。
---
おわりに
現金が特別に汚いわけではない。
だが、飲食店において現金は特に「交差汚染を起こしやすい」。
この事実だけは、冷静に共有されるべきだろう。
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今日は、飲食店における現金の取り扱いと衛生管理について、少し整理して考えてみたい。
キャッシュレスの是非を語る話ではない。
「現金を扱うこと自体が、衛生管理上どういう意味を持つのか」という、もっと基本的な話である。
きっかけは、SNSで偶然目にした一本の動画だった。
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あるカレー屋の動画から始まった違和感
東京に、非常にスピーディーにカレーを提供する店があるらしい。
その提供スピードを検証する、いわば面白動画のようなものだった。
ところが、その日は前客の会計に時間がかかり、カレーの提供が少し遅れた。
理由は単純で、店主がワンオペだったからである。
動画を見ていて、僕が気になったのはスピードではない。
現金を触った直後に、手を洗わず食材を扱っていた点だった。
案の定、コメント欄は荒れていた。
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論点がズレると、議論は成立しない
コメント欄には、こんな意見が並んでいた。
- ワンオペなんだから仕方ない
- お前のスマホだって同じくらい汚い
- 神経質すぎる
正直に言って、どれも論点がズレている。
議論というのは「何について話しているのか」を共有しなければ成立しない。
この場合の論点は、好悪でも感情でもなく、
飲食店において、現金を扱った手で食品を触ることは、衛生管理上どう評価されるのか
ただそれだけである。
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なぜ「現金」は問題になるのか
ここで一度、制度の話を整理しておく。
日本で最も基本となるのは、食品衛生法である。
ただし、食品衛生法は「金銭を触るな」とは書いていない。
ポイントは次の考え方である。
- 調理器具ではないもの
- 不特定多数が触れるもの
- 洗浄・消毒が困難なもの
これらはすべて「不潔になり得るもの」として同列に扱われる。
つまり、
- 現金
- スマホ
- 自分のカバン
本質的には、すべて同じカテゴリーだ。
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それでも現金が問題視される理由
では、なぜ現金だけが強く問題視されるのか。
理由は単純である。
営業時間中に、触らざるを得ないからだ。
スマホやカバンは、触らなければいい。
実際、触っている人も多いが、あれも本来は問題である。
しかし現金は、特にワンオペ営業では避けようがない。
完全キャッシュレスでない限り、必ず触る。
だからこそ、問題が顕在化する。
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中核概念は「交差汚染」
ここで重要になるのが、交差汚染という概念である。
- 汚染された可能性のあるものを触る
- その手で食品を扱う
- 食品が汚染される
この流れを断ち切ることが、衛生管理の基本である。
対策はシンプルだ。
- 手を洗う
- 手袋を使う
- トングを使う
- キャッシュレスにする
いずれか、あるいは組み合わせればよい。
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違反すると即アウトなのか?
では、現金を触ってすぐ食品を扱ったら、即違法なのか。
答えはNOである。
通常は、せいぜい指導レベルだろう。
動画が拡散したからといって、保健所が即座に飛んでくることは、まずない。
これは、僕自身が行政職員だった感覚からしても、そう思う。
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しかし「事故」が起きたら話は別である
問題は、その後である。
もし食中毒や汚染が発生し、なおかつそのような行為をしていた証拠が動画として残っていた場合。
これは、言い逃れができない。
「だから起きたのではないか」と言われれば、反論は極めて難しい。
そう考えると「そんな動画を撮らせてしまうこと自体が問題」という話になる。
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現金は実際に汚いのか
感覚論ではなく、事実として現金からは、
- 大腸菌
- 黄色ブドウ球菌
- ノロウイルス関連の汚染
などが検出された事例がある。
自分が感染していなくても、前に触った誰かが感染していた可能性は否定できない。
その現金を扱い、すぐ食品を触る。
交差汚染が起きやすいのは、明らかだ。
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飲食店で一番危ないものの一つ
こう考えると、飲食店内で最も交差汚染が起きやすいものの一つが、現金であることは間違いない。
スマホやカバンは、不特定多数が触らない。
現金は触る。
この差は大きい。
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体感としての「清潔さ」
個人的な感覚だが、現金を触ってそのまま調理する店は、あまり美味しくないことが多い。
もちろん、加熱調理なら問題が顕在化しにくい場合もある。
それでも、気持ちのいいものではない。
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衛生は「癖」に落とすのが一番強い
法律や科学以前に、癖として身につけることが一番強い。
個人的経験だが、子どもの頃に「お金を触ったら手を洗いなさい」と教えられたことは、今でも生きている。
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過剰な衛生概念との線引き
ただし、過剰な衛生観念は別問題である。
アトピー性皮膚炎が増えた背景には、洗いすぎによる皮膚バリアの破壊がある、というのが現在の主流説だ。
清潔にしすぎて、自分で自分を弱らせた側面がある。
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口に入れるものは「ほどほどの清潔さ」でいい
完璧な無菌状態など不可能だ。
それを求めれば、宇宙食しか食べられなくなる。
そうではなく、
明らかに汚染が起きやすいものを触った手で、そのまま食品を扱うという「明確に危ないこと」だけは、やめようそれだけの話だと、僕は思っている。
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おわりに
現金が特別に汚いわけではない。
だが、飲食店において現金は特に「交差汚染を起こしやすい」。
この事実だけは、冷静に共有されるべきだろう。
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