1. ボイスドラマで学ぶ「日本の歴史」
  2. 「千利休と天下人たち」最終話..
茶道の祖として名高い千利休。一方で天下人との関わりの中で戦国の世に絶大な影響力をもった利休の生涯を描いたボイスドラマ。
秀吉の命により、堺は堀をうめることになり、自治が失われていく流れに。利休はそのような中にあって、豊臣政権下で大きな力を持つようになります。堺の商人として、そして現政権の重要ポジションの要人として、利休の一挙手一投足が、時代に大きな流れを生むようになっていました。


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●作・演出:岡田寧
●出演:
 千利休⇒西東雅敏
 今井宗久⇒望生
 津田宗及⇒平塚蓮
 茶屋四郎次郎⇒濱嵜凌
 豊臣秀吉⇒小磯勝弥
 石田三成⇒吉川秀輝
 ナレーション⇒大川原咲
●選曲・効果:ショウ迫
●音楽協力:H/MIX GALLERY・甘茶
●スタジオ協力:スタッフ・アネックス
●プロデューサー:富山真明
●制作:株式会社PitPa

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千利休と天下人たち 第7話
利休切腹
天正十四年、1586年、豊臣秀吉は、石田三成を堺の大官に任命し、堀を埋め始めました。
堺の町を拡張し、大阪とのアクセスを便利にするという名目でしたが、自由都市堺の象徴である官房を埋め、徐々にその独立性を奪おうという狡猾な手口です。
その頃、利休はというと堺の鉄砲鍛冶町で薬茶椀の作成にふけていました。
芸術家としての盛りを迎え、利休は己の和美茶の完成に邁進していたのです。
それは、ともすれば周囲には傲慢で偏屈な姿勢にも移りました。
利休様、やはりこちらでしたか。
これは、僧侶様。
また黒ですか。しかし黒は、秀吉様が意味嫌われている色だと伺っておりますが。
利休は黒が一番好きなのです。
利休様らしいが、秀吉様には赤をお見せなさいませ。
さて、天老寺家様自ら、このようなところにまでお越しになり、何かございましたか。
実は、石田三成様より、またこのような勝手な通達が届き、江郷衆一同、難儀しております。
つきましては、秀長様にお取り継ぎ願いたく、参上いたしました。
この頃、利休は秀吉の弟、秀長から絶大な信頼を得て、
茶寺のことだけでなく、内政や政策にも関わっていました。
しかしそれは、堺や弟子の大名たちからの取り継ぎ依頼がほとんどで、
利休自ら臨んで関わったのではありませんでした。
三成には確かに堺の堀を埋めようと申し付けた。
御意。
利休、どうせ堺衆に泣き疲れたのであろうが、
いちいち秀長に言い付けるな。
そなたと三成の板挟みとなって、秀長の身が持たん。
後一夜でございます。
また来るわけじゃがんか。ふざけるな。
殿下、いかがなさいました。
しゃばるな。
秀吉。
黒は金色と最も相性良き色にございます。
殿下の黄金の茶室には黒…
利休。
己だけが茶ぬいを極めていると思うなよ。
恐れ入りませる。
そなたが黄金の茶室を考案するにあたって、
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亡き信長様の厚みを見せるために、
この茶室を考案するにあたって、
亡き信長様の安土城を手本にしたことはわかっておる。
しかしな、この甘迫秀吉の目指す茶とは、
あのような極楽での幸福ではなく、
この世での至福じゃ。
この世での至福でございます。
おおよ。今この世を楽しまんでどうする?
歓喜じゃ。宴じゃ。
従来じゃ。
わからんか?
ならそれがいかなるものか。
そなたに教えちゃろう。
天章十五年、千五百八十七年、九月。
秀吉は京都従楽廷を完成させ入城。
敷地内に利休の官廷も用意しました。
そして同十月、
秀吉は北の天満宮にて、
お茶を愛好するものならば、
身分や国籍の差別なく参加できる大茶会、
北の大茶の湯を開きました。
それは秀吉流の茶の湯天国、
あるいはお茶のテーマパークとでも言いましょうか、
甘迫自らが企画、出演までしてみせた一大イベントでした。
秀吉はまず持ち込んだ黄金の茶室に、
曹液、曹丘、曹牛の三曹章をはじめ、
隙者大名や久下達を並べ、
自ら茶道として茶を立ててみせました。
その後、一般の参加者にも茶を振る舞い、
そして午後からは他の参加者の茶席も見て回ったといいます。
茶会は一日だけで千人近い人を集めたと言われています。
久下や大名をどんどん招け、
さらに喜びにあふれた甘迫の茶を披露するぞ。
李宮、それがわしの茶だ。
呪楽の茶ぞ。
この秀吉と李宮の茶の湯に対する思いの相違が、
やがて李宮の切腹を招いたのではないか、という説があります。
確かにそうだったのかもしれません。
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ですが、秀吉と李宮が直接いがみあったというよりは、
むしろ誰かがその溝を広げ、火に油を注いだのではないでしょうか。
少しばかり想像を広げてみましょう。
ある日、呪楽邸の李宮の官邸に石田光成が突然訪ねてきました。
李宮は茶を立て、光成をもてなしました。
李宮様、お尋ねしたきことがございます。
はい。
三好の宝の行方をご存知か。
その話、どこから?
甘迫殿下より内々に三好の宝を探せと。
殿下が?
先日三好将冠様が荒野山よりお見えになり、
殿下に三好の隠れ里に伝わる宝剣伝説をお話になられたところ、
無心に面白がられ、ついにはその宝剣を探して来いと私にお命じになりました。
三好将冠康永は本能寺の変の後、記録上行方が定かではありません。
一説では養子である秀吉の老い秀次に家徳を譲り、出家して荒野山に入山したとも言われています。
その宝剣のことでございましたら、探すには及びません。
かつて信長様も同じようにご興味を抱かれ、この里宮に探して来るようお命じになられましたが、何もございませんでした。
何もなかったという証は?
里宮は大切にしまってあった三好永よしからの手紙を取り出して三成に見せました。
なるほど。
ところが将冠様のおっしゃることには宝剣はあるのだと、自分が隠したのだというのです。
将冠様らしい。しかしその手紙の筆跡は間違いなく長吉公のものでございます。
さようか。ではこの手紙、証拠として殿下にお見せするがよろしいか?
そ、それは…
何か不都合でも?
いえ、結構でございます。
その翌朝、秀吉が里宮の茶室におなりになりました。石田三成も同席です。
里宮、水臭いではないか。なぜこの長吉公よりの手紙、今までわしに見せんかった?
長吉公とは筑波の友でございましたゆえ、乾白殿下にお見せするよう…
信長公には見せたのであろう。
これを見せて封建はなかった。三好の宝はわたくしでございますと申したのであろう。
そのような…
ではなぜ殿下にその封建の話をしなかった?
そなたもしや三好将冠と企んで宝をわたくししたのではあるまいな?
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まさか、これまで殿下にお話ししなかったのは、このような伝承伝説の類でお心を煩わせるに及ぼす…
ではなぜ信長公には話したのだ?
殿下…
申してみよ
三好長吉公が生前、わたしに天下人を探し出せとお命じになられたのです。
天下を治める器に三好の宝を譲ると…
なんと…
ですが、その宝とは何なのか、お尋ねする前に長吉公は亡くなられました。
この手紙を見た信長公は、ただ笑っておられました。
さようであったか…
天下、この三好、今の話聞き捨てになりません。
李旧は今、信長公を天下人とは認めたものの、漢白殿下を天下人とは認めず、
奉献の話は打ち明けず、また、長吉公の手紙も見せなかったとこの三好目には聞こえ…
せよ、三好!わしが李旧と話してくるじゃ!
はっ!
奉献の話はすべて総作ですが、成長著しい石田三好が、
秀吉と李旧の間に割り込んできただろうことは想像に堅くありません。
そして、天章十八年、1590年、事件は起こりました。
李旧の皇帝である山上宗治が秀吉の命令で斬殺されたのです。
小田原北条寺攻めの最中、敵方に内通しているのではないかと疑われてしまったのでした。
山上宗治は李旧以上に潔癖な気性で、たびたび秀吉を怒らせては出奔していました。
しかも今回は敵方の小田原北条寺に仕えていたというのです。
当然スパイの容疑がかけられました。
しかし宗治は一度、李旧より直接秀吉への取りなしで許されたはずでした。
ところがその後、再び秀吉の激霖に触れ、耳と鼻をそがれ、首をはねられたというのです。
秀吉の気性をよく知る誰かが、その耳元で懺悔を吐いたとしか考えられません。
転生19年1月
秀吉が最も信頼し、李旧の後ろ盾でもあった豊臣秀長が病に倒れると、
石田三成ら若手側近による李旧追い落としがあからさまとなりました。
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その日、李旧は石田三成に呼び出され、呪楽廷に登場すると、不意に三成らに取り囲まれました。
李旧、その方、大督寺三門の金毛閣に自身の木像を置きたること、そういないか?
三門寄臣の霊にと大督寺が作ってくれたものです。それが何か?
届き者!石田を這いたその方の木像の下を漢白殿下がおくぐりになられると思うとか!
黙れ!黙れ!たかが茶道の文在で早朝はなはだし気圧じゃ!そこへなおれ!
何をなさいます!
三成は李旧を土間に突き飛ばし、無理やりすわらせました。
これが大督寺の李旧像事件です。
大督寺は李旧ら三宗招や堺の町と太い絆があることはすでに述べましたが、
織田信長の墓所でもあり、秀吉もよく通う場所でありました。
その入り口の三門に、石田を這いた李旧像が置かれたことが問題視されたのです。
その後、李旧は堺の支度に窒居を命じられ、一旦京都を離れました。
その間、秀吉は沈黙したままでした。
木像の件だけではなく、よほど腹に据えかねる何かがあったとしか思えません。
事態は李旧の生死に及びました。
前田利家をはじめ、多くの大名たちが序命を嘆願しましたが、秀吉の怒りは収まらなかったといいます。
深夜、堺の李旧邸に江郷衆や弟子らがひそかに集いました。
弟子といってもみな大名クラスです。
税にで解決できんのか。
今や甘博殿下は日本一の金持よ。税にには興味あるまい。
芋井曽旧と茶屋志郎二郎です。
では名物はどうじゃ。三日漬けは今誰が持ちよる。
本能寺で焼けました。
えい、他にはないか。
そうじゃ、曽旧様、三好にはもうお宝はございませんか。
さて三好の宝か。何があったか。
最初の天下人たる三好長吉様御秘蔵のお宝などあれば、
甘博殿下の御機嫌も治るかもしれませんな。
それにしても李旧様、一体何を甘博殿下に申し上げたのじゃ。
何をすればこのような御歓喜を頂戴できるのか。
李旧は懐にしまった長吉の手紙を取り出して一堂に見せました。
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三好の宝とは千利旧、そなたのことだ。
これは。
その手紙を見て一堂はゼックしました。
このような立派な箱書きを見たのは初めてだったのです。
武将なら誰もが敬愛する天下人三好長吉の直室で、
三好の宝は千利旧であると書いてあるのです。
李旧こそがまさに生きた天下の宝なのでした。
これを甘博様にお見せになられたのか。
なるほど。
な。
甘博様は嫉妬されているのだ。
嫉妬でございますか。
李旧様と長吉公の美しい情愛に。
天下一の宝となった李旧様に。
嫉妬されたのだ。
それなら謝ればよろしかろう。
謝ってお許しを。
いや。
謝れば李旧という宝に傷がつく。
さよ。長吉公が箱書きし、信長公が箱をつけた宝に傷がついてしまう。
甘博の権威の前に膝つくか。
それとも。
それとも。
金無垢の宝として散るか。
そんな。
この李旧もそう思います。
甘博殿下に謝れば、それで済むことかもしれません。
がしかし、これは李旧の詫び茶を、
後の世まで問う、絶好の機会だと思うのです。
李旧めは、都閣下宝のものぞかし、
鑑賞状になると思えば。
やはり残言で駄財布に流された、
天満宮菅原の三田猫に自分を例えた、千利旧の時世です。
李旧は覚悟の上で、レジェンドとなる三田猫に、
李旧は覚悟の上で、レジェンドとなる道を選んだのでした。
ちなみにこの後、堺は大阪夏の陣で徳川側に味方したとされ、
1615年、豊臣の家臣である、王の春種の手で焼き討ちされました。
その後、多くの堺商人が家康の手によって、江戸に移り住んだと言われています。
天章十九年、1591年、2月28日、千利旧は呪楽廷にて切腹して果てました。
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卿年七十歳、
人生七十、力一つ。我が此の封剣、素物共に殺す。
ひっさぐる、我が恵遇足の一つたち。
今この時ぞ、天に投げ打つ。
ボイスドラマで学ぶ日本の歴史
シーズン3 千利旧と天下人たち
いかがでしたでしょうか。
茶道を大成させたと言われている千利旧。
しかしその生涯は、文化人としてよりも、
天下人たちとの関わりの中で、戦国の世の時世に影響を与えた人物として描かれたところが非常に印象的でしたよね。
特に、同じ年に生まれて、同じ堺の町で育って、南州庵の大林総統の下で共に学んだ三好長吉との出会いは、
その後の利旧の人生を決定づけるものであったのではないかなと思います。
戦国大名の着男と魚どんやの息子はこの身分の差。
時代が違っていたら全く交わることのなかった二人でしたが、
莫大な経済力を持った堺という都市に三好家が目をつけて、そこにたまたま利旧がいたという偶然が二人を引き合わせて、
そして抜群の政治力と軍事的才能を兼ね備えた三好長吉が天下人にのぼり詰める中をですね、利旧は商人という立場で助けたこと。
まさに運命としか言いようがないエピソードですよね。
21:08
三好長吉亡き後、利旧が織田信長や豊臣秀吉に重宝されたというのも、
邪気に価値を持たせて褒美にするというやり方に利旧の目利きが役立ったからですとか、
莫大な経済力を持つ堺との縁が深かったからという政権的な見方もありますけれども、
何よりこの最初の天下人、三好長吉との付き合いを経て、利旧自身が天下人になる人間が何を求めているのか、
こういったところを理解していたというのが一番大きかったのではないかなと思います。
本作ではそれを大胆にも三好家の宝が利旧であるという三好長吉のお気にあげとして取り扱ったのが、何ともロマンを感じさせる設定でした。
利旧の最後の自生の国、仏や祖先をも凌駕する封建を天に放つと言い放っています。
この封建というのは、この流れからすると天下人に認められた利旧自身のことだったのかなと思ってしまうのですが、
ちょっと私の行き過ぎた解釈でしょうか。
さて、この辺りもですね。
次回、いつものようにエピローグ回として、私ナビゲーターの熊谷陽子がシーズン3、
千利休と天下人たちをかき起こしてくださった本シリーズの演出家でもある作家、岡田康史さんに、今回の物語についてインタビューをしてきましたので、そちらを公開します。
どうぞお楽しみに。
作・演出 岡田康史
24:03
出演
千利休 斉藤雅俊
今井壮久 美代
須田壮牛 平塚蓮
茶屋志郎二郎 浜崎忍
石田三成 菊川秀樹
豊臣秀吉 保磯勝也
三吉永吉 谷沢龍馬
ナレーション 大河原咲
選曲・効果 松坂
音楽協力 HMIXギャラリー 天茶
スタジオ協力 スタッフアネックス
プロデューサー 富山正明
制作 株式会社 ピトパ
25:04

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