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2023-12-11 10:29

#19 「学びのなんでも相談室」とイリイチ | TanaRadio黎明期

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TanaRadio黎明期では,TanaRadioの公開配信が始まった2024年2月以前に,ある大学教員のコミュニティ(MOSTコミュニティ)内限定で配信していた時期のTanaRadioのエピソードを(一部)編集して公開します。日付は,実際に限定公開した日付をつけています。

内容:
・初年次科目テキストの改訂について
・50年以上前にイリイチは学びの「なんでも相談室」のようなものを考えていた

参考:
初年次教育テキスト編集委員会編『フレッシュマンセミナーテキスト:大学新入生のための学び方ワークブック』東京電機大学出版局,2024
イヴァン・イリイチ『脱学校の社会』東京創元社,1977(p.146参照)
#17 「学びのなんでも相談室」が欲しい | TanaRadio黎明期
#18 「学びのなんでも相談室」としてのレファレンスカウンター | TanaRadio黎明期

#TanaRadio黎明期 #学びのなんでも相談室 #自由な学び #イリイチ

サマリー

第19回のTanaRadioでは、「学びのなんでも相談室」とイリイチを掘り下げ、特にイヴァン・イリイチの著書『脱学校の社会』が現代の学びに与える示唆について議論しています。また、学びのための多様なリソースや技能交換の重要性についても解説しています。

初年次科目テキストの改訂
私は来年度、アカデミックスキルズという初年児科目を担当することになっています。
この科目で使用する教科書が『フレッシュマンセミナーテキスト』というタイトルのものなんですが、
この科目はかつて「フレッシュマンセミナー」というふうに呼ばれていました。
なぜ科目名を変えたのかと言いますと、「フレッシュマン」という言葉が男性中心ということで、ジェンダー的に見ると問題があるという指摘があり、変えることになりました。
このことからもわかるように、この科目ができたのがもう十数年前なのですが、
そのころから時代がずいぶん変わっていて、あちこち時代に合わないところが出てきています。
現在第2版を使っていますが、来年度から第3版を出そうということで、今改訂作業を行っています。
私も2つの章を執筆したので、その部分について少し改訂を行いました。
私が書いたところで今回変わるのは、時間管理のところで予定表を紙ではなくカレンダーアプリを使って作るというふうに変えること。
また、私のところではありませんが、コラムでウィキペディアの使い方について注意するところで、それに加えて生成型AIのChatGPTについても利用上の注意を付け加えています。
今回の改訂は微修正にとどまり、次の改訂はおそらくもっと大きな全面的な改訂になるのではないかと思います。
大学生が身につけるべき基本的なアカデミックスキルが、生成型AIの登場によってだいぶ変わっていくのではないかというふうに感じています。
ということで、TanaRadio第19回始めたいと思います。
「学びのなんでも相談室」とイリイチ
今回のテーマは、「『学びのなんでも相談室』とイリイチ」というものです。
ここでいうイリイチというのは、イヴァン・イリイチのことで、『脱学校の社会』という本で有名になりました。
この本は1970年あるいは71年くらいに出たもので、もうすでに50年以上前の本なのですが、
しかし改めて読み直してみますと、
今日の学びのあり方を変えていく上で、とても示唆に富む本だなというふうに思っています。
前々回と前回で「学びのなんでも相談室」の話を取り上げ、
それに近いものとして図書館のレファレンスカウンターがあるのではないかということを言ってきましたが、
まさにそういった考えがこの『脱学校の社会』という本に書かれていました。
私が少し考えたことが、かなり拡張されてというのでしょうか、より徹底的な考察を加えられて、述べられています。
ここでは、イリイチが自由な学びを実現するためのリソースに学習者がアプローチするその方法を4点に分けて説明しています。
ここではそのポイントについて簡単に紹介してみたいと思います。
まず一つ目は、「教育的事物のための参考業務」ということで、これは学びのための様々なものあるいは場所、そういったものに対するレファレンスサービスということです。
その物として本ということであれば、まさに図書館のレファレンスサービスがそれなのですが、
ここでは本だけではなくてそれ以外にも様々な学びのための物があるだろうということで例が挙がっています。
例えば博物館とか劇場とか工場とか飛行場とか農園といった普通はあまり学びのためというふうには考えられないようなところも含めて
様々な仕事の現場、そういったものもここでは学びのための事物があるところというふうに考えられています。
そして、そういったものにアプローチするための参考業務というものがあるべきだと言っているわけですね。
2番目が「技能交換」です。これは人々がお互いに自分の持っている技能を教え合うということのようです。
3番目が「仲間選び」ということですが、学びのための仲間を見つけるための手段ということで、
原語はPeer Matchingですので、これはマッチングの話ですね。
ふさわしい人が出会う、そういう仕組みを作るということになっています。
そして最後4番目が「広い意味での教育者のための参考業務」ということで、
ここでは広い意味というふうに言っていますので、教員のような教育者だけではなくて、
様々な専門家もここでは広い意味での教育者というふうに言っているように思います。
そういった何か専門的なことを学べる、そういう人を紹介するような、そういうレファレンスサービスだと思うんですが、
こういった様々なレファレンスサービス、あるいは人と人とが出会う手段、こういったものが必要だというふうにイリイチは言っていまして、
私が考えていた「学びのなんでも相談室」という概念はちょっと狭くてですね、
これはレファレンスサービスぐらいしか考えていないんですけれども、
そういうサービス以外にも人々がお互いに自分が求める人、
例えばそれは自分が知りたいちょっとした技能を教えてくれるそういう人であったり、
あるいは一緒に何かを学んでいくそういう仲間を見つける、
そういうことも含めて自由な学びを人々が主体的となって進めていく、
そういう社会を目指していたんだなというふうに思いまして、
これはまさに今これだけ技術が発達し、イリイチが想定していた技術をはるかに上回る、
そういう技術がすでにあるわけですね。
これを実現しようとすればかなり簡単にできるのではないかというふうにも思います。
ですので、あとは今ある技術をこういった目的のためにどうやって使っていけばいいかということを考えればいいということだと思います。
ですので、このイリイチのアイデアを参考にしながら、またさらに考えを深めていきたいなというふうに思っています。
ということで、それではまた。
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