いやーでも13個もラベルがあるってなると、リスナーのあなたも思いませんか?そんなに細かーく分けられていたら、どこに何を建てていいか絶対に混乱するって。
えーと、すべてを完璧に暗記しようとすると、確実に情報型で溺れますね。
ですよね。
ですから、まずは一番極端な境界線に注目するんです。
境界線ですか。
冒頭の話題にもつながりますけど、13種類のラベルの中で唯一、人が住むための住宅を一切建てられない場所があるんですよ。
それが工業専用地域です。
つまりさっき言った湾岸の巨大工場エリアなんかですね。
そうです。
でもこれよく考えるとすごく理にかなってますよね。
もし工場のすぐ隣に家があったら、騒音とか排気ガスに悩まされるのはもちろん、万が一工場で爆発事故とか有害物質の漏洩が起きたら、もう住民の命に直結しますもんね。
まさにそこなんですよ。
だから、資料にある工船だけは家がないっていう語呂合わせのルールも、単なる意地悪な制限じゃなくて、人間の安全を守るための絶対的なラインなんだなって納得できますね。
完璧な推論ですね。住み環境と工業環境の完全な隔離なんです。
はい。
一方で、その逆のパターンもあるんですよ。どんなラベルが貼られている場所であっても、いわばチート級に絶対に建てられる建物が存在するんです。
資料にありますね。診療所とか保育所、あと神社や寺院、公衆浴場、交番とかですね。
はい。
頭文字を取って神保持?ねんて覚え方もするみたいですが、これも理由を考えれば明白ですよね。
そうですね。どうしてだと思いますか?
もし工場で人が倒れたらすぐ駆け込めるクリニックが絶対に必要ですし、親が商業地域で働いているなら、近くに子供を預ける保育所がないと社会が回らないからですよね。
そういうことです。これらは単なる建物じゃなくて、人間の生活を維持するためのインフラ、つまり生命線なんですよ。
なるほど。生命線。
はい。だから法律は、そうした公共性の高い施設には用途地域を超越する特権を与えているんです。
あなたの家の近くのコンビニとかクリニックもまさにこのルールの恩恵を受けているんですね。
本当に身近な話なんです。さて、13種類のラベルの中身とその例外については見えてきました。
でもここで一つ疑問が湧くんですよ。
何でしょう?
都市プランナーの人たちは地図を広げて、日本のありとあらゆる土地の隅々までこの13種類のラベルを貼りまくっているんでしょうか。
人が全く住んでいない山奥の森とかどうなるんですか?
そこ非常に良いポイントですね。ではここからはそのラベルをどこに貼るのかというルールの話に移りましょうか。
はい。じゃあここでリスナーのあなたに一つの試行実験というか○×クイズを投げかけたいと思います。
いいですね。やってみましょう。
法律のパラドックスに挑戦してみてください。いきますよ。質問です。
自然や農地を守るための市街化調整区域には、乱開発を防ぐために用途地域を必ず定めなければならない。○か×か。少し考えてみてください。
これこの文脈だと一見すると非常に論理的に聞こえますよね。自然を守るなら一番厳しいルールを適用するべきだって。そうですよね。
でも答えは×なんです。
ちょっと待ってください。守りたいならルールを定めるべきですよね。あ、いや違いのか。
そもそも用途地域っていうラベルを貼る行為自体が、ここは低層住宅なら建てていいよとか、ここは商業ビルなら建てていいよっていう建築の許可を与えてしまうことになるからですか?
まさにその視点が重要なんです。
なるほど。
市街化調整区域っていうのはそもそも建物を建てて欲しくない守りの区域なんですよ。
はい。
建物を建てさせない場所に建物の種類を決めるラベルをわざわざ貼るのって自己矛盾ですよね。
確かに。建てちゃダメって言ってるのに何建てるか決めるのはおかしいですもんね。
ええ。だから用途地域は原則として定めないという非常に美しいロジックが成立するんです。
面白いですね。ルールを厳しくするんじゃなくて、そもそも建てる前提の土俵にあげないわけですね。
そういうことです。逆にどんどん町を発展させたい、いわゆる攻めの区域である市街化区域では、無法地帯になれないように用途地域を必ず定めることになっています。
うーん。よくできてますね。
さらに面白いのが、非遷域区域とか準都市計画区域なんです。ここはどうなっていると思いますか?
えーと、必ず定めるわけでも原則定めないわけでもない。
はい。ここでは用途地域を定めることができる。つまり任意となっているんです。
その準都市計画区域って具体的にはどんな場所をイメージすればいいんでしょうか?
そうですね。例えば田舎の何もない場所に、新しく高速道路のインターチェンジができた状況を想像してみてください。
はいはい。
ほっておくと、その周辺に巨大なトラックステーションとかラブホテルとか派手なドライブインなんかが次々と無秩序に立ち始めますよね。
あー見覚えがあります。まだ本格的な都市ではないんだけど急激に開発が進みそうなちょっとカオスな雰囲気のある国道沿いとかですね。
まさめそれです。本格的な都市計画区域にするにはまだ早いんだけど、今ルールを敷いておかないと10年後には取り返しのつかないスプロール現象、つまり無地図じゃな都市の広がりが起きてしまう。
なるほど。
だから必要に応じて任意でラベルを貼れるように法律が柔軟なバッファーを持たせているんです。
いやーラベルを貼る場所の謎が解けたところで、次はラベルが貼られた場所で具体的に何が制限されるのかそこに踏み込みましょうか。
いいですね。
資料には建物のボリュームや高さを決める3大ルールとして要石率、憲兵率、高さの限度が挙げられていますね。
はい。ここでもなぜその制限が必要なのかを考えることが鍵になります。
まず一つ目の要石率。
これは敷地面積に対する建物の床面積の合計の割合です。
例えば3階建てなら1階から3階までの床の面積をすべて足したものですね。
ふむふむ。
これはすべての用途地域で必ず定めるんです。
すべての地域で、なぜですか?
床面積の広さっていうのはそのままその建物で活動する人間の数に直結するからですよ。
あーなるほど。
例えば細い路地しかない住宅街に要石率が桁違いに大きい50階建てのタワーマンションが建ったらどうなりますか?
数千人規模の人が一気にトイレを流したら下水管が完全にパンクしますね。朝の通勤ラッシュで道も大渋滞になりますし。
その通りです。街のインフラが耐えられるキャパシティを超えてしまうんですね。
だから要石率はどの用途地域でも例外なくコントロールする必要があるんです。
そっか。では二つ目の憲兵率はどうでしょう?
これは敷地に対して建物をどれくらい横に広げて建てていいかという割合ですよね?
ええそうです。
資料には商業地域以外で定めるとありますけど、えっといやちょっと待ってください。
どうしました?
これ完全に逆じゃないですか?商業地域って一番ビルが密集していて、もし火事が起きたら最も危険な場所ですよね?
はい。実は都市計画法でわざわざ制限をかけなくても、別の法律である建築基準法において商業地域の憲兵率はすでに80%とがっちり上限が決められているんですよ。
ああそういうことですか。
はい。
すでに別の強力な法律でカバーされているから都市計画法で二重にルールを作るっていう非効率なことはしないんですね?
ええ。法律間の見事な連携プレーなんです。
面白いですね。
そして3つ目の高さの限度ですね。
はい。
これは10メートルまたは12メートルという絶対的な高さ制限なんですが、
はい。
これは第一種第二種低層住居専用地域と田園住居地域という特定の3つのラベルでのみ定めるんです。
なぜその3つだけなんでしょうか?
キーワードは日当たりです。
日当たり?
低層住居が並ぶ寛静な住居街とか農業と調和する田園地域で隣にいきなり巨大な壁みたいなマンションが建ったらどうなりますか?
庭のトマトも育ちませんし、屋根のソーラーパネルも機能しなくなりますね。
そうなんですよ。だから警官と日照権を刺守するための強固なシールドなんです。
つまりどのルールの裏にも住民の生活を守る明確な理由があるんですね。
まさにそういうことです。
ではちょっと視点を変えましょうか。先ほどのラベルが貼られていない場所の話に戻ります。
視界化調整区域みたいにそもそも建てさせないから貼らない場所っていうのは理解できました。
でもそれ以外の用途地域が定められていない区域、いわゆる白地地域はどうなるんですか?
何もルールがなり無法地帯のままなんでしょうか?
静かな田園風景のど真ん中にいきなり巨大なパチンコ店とか工場が建っちゃったら住民はパニックになりますよね。