前回の続きで固定残業手当導入時の注意点やあるある話、残業が発生する際に作成届出が必要な36協定について等社労士×社労士で語りました。
【ハイライト】
・36協定の締結について
・固定残業手当と裁判例
・36協定の歴史的背景
・こんな労基法があれば、、
・固定残業手当のキャリーオーバーについて
・(宿題)清酒製造業の雇用保険料率の謎について
・モーレツ社員vsゆとり
・企業の36協定との向き合い方
本エピソードの前編のリンクはこちらです。
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/id1507714225?i=1000515999501
固定残業代に必要な5つの要件とは?──見落とされがちな“サブロク協定”の重要性
固定残業代を有効に設計するために不可欠な要素として、「①残業時間数」「②金額」「③所定労働時間」「④割増率」に加えて、「⑤36協定(サブロク協定)の提出」が必要だとオオタワさんは指摘。固定残業代を設定するということは、残業が発生する可能性があるという前提に立つため、36協定を結ばずに運用することは法的リスクが高いという。また、36協定は形式的なものと思われがちだが、実際にはリスク回避の“お守り”として非常に重要な存在であると強調された。
36協定が「めんどくさい」と思っていませんか?──実際に起きた罰則判例から学ぶ教訓
制度としては地味ながら重要な36協定。しかし、その提出を怠っていた企業が、従業員からの申告をきっかけに「健康被害の可能性があった」として、裁判所から10万円の罰金を命じられた事例がある(2020年東京地裁判決)。月30~50時間程度の残業でもリスクと見なされる時代において、形だけの協定では通用しない。オオタワさんは、従業員を雇用した時点で36協定も同時に提出する運用の徹底を提案している。
「固定残業代80時間」は通用しない?──現実と乖離した設計は無効リスクも
実務では「月80時間分の固定残業代を支給」といった設計を見かけることもあるが、これは判例上“現実の労働時間とかけ離れている”と無効と判断される可能性があるという。オオタワさんは「原則45時間以内で固定残業代を設計すべき」と語る。これは、働き方改革関連法により、月45時間以上の残業は年間6ヶ月までという上限が法制化されたことを踏まえた実務的な観点でもある。
給与計算の落とし穴──割増賃金と固定残業代、誤解されやすい境界線
残業単価を計算する際に、固定残業代を基本給に含めてよいのかという実務上の疑問が紹介された。基本的には「固定残業代は割増賃金そのもの」であるため、基本給には含めず、別枠として扱う必要がある。また、所定労働時間を明示しなければ、残業単価の正確な計算根拠が曖昧になり、労基署や裁判所で否認されるリスクもある。企業側の誤解や形式的な処理がトラブルの温床となりやすいため、注意が必要である。
制度の歴史から考える働き方──サブロク協定は戦後復興から生まれた“妥協の産物”
36協定(サブロク協定)はGHQ占領下の戦後日本において、復興のために8時間を超える労働を可能にする“例外制度”として導入された。これは“週40時間”という国際基準を導入しつつ、現実との妥協を図った制度であり、当時の“猛烈社員文化”を支えた背景がある。現代の価値観とは異なるものの、時代に応じて制度が進化してきたことを理解することで、今後の働き方や法改正を考える材料となる。
“キャリーオーバー”は可能?固定残業代と労働契約の正しい関係性とは
「今月残業が少なかったから、残りを来月に繰り越して使えるか?」という企業からの質問に対し、田村とオオタワさんは「不可」と明言。労働基準法の「賃金全額払いの原則」にも反し、何より労使間の信義則に反するという。そもそも固定残業代は、その月の労働に対して支払われるべきものであり、月をまたいで使う性質のものではない。繰り越すなら、制度そのものを見直すべきであるという明快な結論となった。
固定残業代は便利な制度である一方で、適切な設計と運用が求められる“法的リスクのかたまり”でもあります。制度を導入している企業の方は、今一度、自社の労務設計が適切かどうかを見直してみてください。
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サニーデーフライデーは、社会保険労務士として活動する田村が普段のサムライ業という固いイメージから外れ、様々な分野で活躍する方やその道の専門家・スペシャリストと語るトーク番組です。
人生に前向きでポジティブな方をゲストとしてお呼びし、経営者や従業員として働くリスナーの皆様が明日から明るく過ごせて、心や気持ちがパッと晴れるそんな『働き方を考える』ラジオをお送りします。
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パーソナリティー:田村陽太
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナー等のPRブランディング事業も手掛ける。
カバーアート制作:小野寺玲奈
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