スモールビジネスやその周辺のカルチャーついての情報をシェアしていくポッドキャストです。

今回は、マッキンゼーアンドカンパニーが2021年に発表したレポート「日本の営業生産性はなぜ低いのか」

について、「そういえばそんなものがあったけど時間がなくてまだ読んでいないな・・・」という皆さんのためにポイントを絞って聞き流すだけでいいようにお伝えします。


この放送の文字起こし:https://sirara.co.jp/blog/eigyo-roi_1/

制作:シララ株式会社

サマリー

2021年に発表されたマッキンゼ&カンパニーのレポートでは、営業ROIや営業生産性の低さについて詳しく説明しています。第1章では営業ROIの定義と問題提起が行われ、第2章では業種別の比較と詳細な分析が行われ、第3章では日本企業の営業効率性の課題が述べられています。マッキンゼの調査によれば、業務に割かれる時間の差、システムのカスタマイズとデジタル化の遅れ、ベンチマークによる負のインセンティブ構造、ガバナンスの不足による経費削減の遅れが問題とされています。

営業ROIの定義と問題提起
このポッドキャストでは、スモールビジネスやその周辺のカルチャーについての話題をお届けしていきます。
再生ありがとうございます。
ウェブディレクションと音源制作を手掛けるシララ株式会社伊東宏之です。
今回は、マッキンゼ&カンパニーが2021年に発表したレポート、
「日本の営業生産性はなぜ低いのか」について、
時間がなくてまだ読んでいない方のために、私がポイントを絞って聞き流すだけで良いようにお話したいと思います。
このレポートは特に、営業ROI、つまり営業に対するリターンオンインベストメント、投資効率についてのお話が主軸になっています。
スモールビジネスをやっていく上で、営業の効率性ってやっぱり死活問題なので、私も興味深く読みました。
まず、まとめを言ってしまうと、「営業リソースを新規成長領域に抜本的に振り向ける腹決め」を企業はおこなって、成長機会を逃してはならない。
そうしないと国際競争で死んじゃうけどいいの?ということをこのレポートは主張しているようですね。
レポートの中身としては4章に分かれていまして、今日はそのうち第3章までお話したいと思います。
まず概要ですが、第1章は「営業ROIとは?」というもので、前提や言葉の定義を明確化させつつ問題提起をしている章になっています。
第2章は営業ROIの業種別比較と詳細分析ということで、現状のファクトを並べている章になっていました。
第3章は日本企業の営業効率性の7つの根本課題ということで、これはファクトをもとにした課題の抽出ということで結構なボリュームを割いている章になっています。
そして結論の第4章、日本企業の営業の効率性を高める解決のアプローチ、というもので、ここは長いので次回のPodcastでお伝えしようと思っています。
では早速それぞれの解説をしていきたいと思います。
第1章の「営業ROIとは?」。これは営業の人件費などの経費を投資と捉えてどのぐらいリターンがあるのか、つまり分母が営業コストで分子が粗利率という数値でこれを判断しようということです。
分子を売り上げじゃなくて粗利にする理由というのは、安値で量を売るんじゃなくて、できるだけ利益額をもたらすのが営業の価値だから、ということらしいんですね。
マッキンゼーの得たデータとしては、営業コストの4から5倍の粗利がグローバル平均ではあるが、日本企業はこれがとても低いということです。
業種別比較と詳細分析
第2章「営業ROIの業種別比較と詳細分析」。
この業種別データを見ますと、ぱっと見て特に半導体分野とシステムインテグレーターの営業ROIがグローバル平均よりも悪いようですね。
営業ROIを構成する要素を分解してこの章では解説されているんですが、「営業員1人当たりの売上高」が特に日本企業が低いという指摘があります。
その理由が3つあると。
まず1つ目は、営業1人1人の役割が明確化されていないこと。
日本の法人営業はチーム化されていて、チーム全員で顧客対応する動きが無駄だと。
もうこれ火の玉ストレートですよね。
2つ目は、お客様第一主義を掲げていて、営業が受注後も顧客対応しているのがいけないと。
受注後は本来カスタマーサービス部門が対応すべきなのに、文化的に会社の顔として最後まで責任を果たすのが営業みたいになっちゃっているけど、これ無駄じゃないか?と言っているわけですね。
そっちにリソースを割かれちゃうから、顧客数や売上アップにつながらないというわけですね。
3つ目は、社内会議や資料作成の社内業務が日本企業全般、グローバルと比べてあまりにも多すぎるよと、そういう指摘です。
ここでさらに指摘しているのがデジタル営業の遅れ。グローバルだと顧客や代理店への手間が大幅に削減されているんですけれども、日本はそのデジタル化がうまく進んでいないので効率性に差があるということなんですね。
たぶんこれは、日本の文化的な前例主義とか横並びも暗に関係するんだろうと思います。
日本企業の営業効率性の課題
この辺は後にも結構しつこく触れられているところですね、このレポートの中で。
人件費も結局、年功上列によってアベレージが上がってしまっているという指摘もこの章でされていました。
結局、販管費がかかるから価格面での勝負も難しくなって、新興国に負けるんだよという、ぐうのねも出ない分析をしています。
そして第三章なんですけれども、日本企業の営業効率性の7つの根本課題です。
ここは結構ボリュームを割いてこのレポートでは述べられています。
この7つの根本課題の1つ目の課題。組織全体の調和と協調を施行するがゆえの不明瞭な責任分担というふうに記されています。
これは個人主義じゃなくて常に協調でやっていく。
これは国民性の指摘だとも言えますよね。
チームプレーといえば聞こえがいいけれども、複数人で同じことをやってしまうと。
特に大型顧客の商談だと、意味もなく複数人で代名行列のように参加する。
これ、ありますよねー。
ROIを考えたら、顧客の規模がでかい時でもいかに少人数で対応するかで、もうROIのスコアが上がるのは明確なんだけれども、やっぱり情緒的にそういうことをしないというのがありますね。
そして2つ目。
お客様第一主義文化に起因した非効率性。
これは先ほど前章でも指摘があったような話なんですが、グローバル企業だと、例えば月次の営業会議のたびに案件の確度とか、進捗状況が急に変わることというのは、基本的に許されないわけですよね。
なのに日本企業だとお客様都合というのを振りかざしたり、実際に何かお客様都合があればオールオッケーになってしまうと。
それによって営業プロセスが不透明なまま許容されてしまうというのが、非常に問題だというふうに指摘されています。
それ以外にも、お客様第一主義によって仕様書とかのドキュメントについても、顧客の要求するフォーマットに沿って細かく対応するのも無駄だと。
これ結構、わかりみがすごいですよね。
そして3つ目。
顧客との取引関係が固定化することによる新規成長領域へのリソース振り向け不足。
これどういうことかというと、日本企業は長年の取引があったりとか、自社のOBがいるというだけで取引先を優遇して、実は利益が出ないのに取引を継続してしまう。
それによって新規領域にさくリソースが確保できない、という指摘になります。
顧客主義というのは当然グローバル企業でも掲げているところはあるんですけれども、というかほとんどの企業が掲げているはずなんですね。
ただその場合の顧客って何を指すかというと、利益を上げてくれる取引先を指しているというわけですよね。
これも、もう、ぐうの根も出ませんよね。
日本企業はここまで言われちゃうとヒットポイントゼロだなという感じがします。
そして4つ目の課題。
前線営業マンが直接の顧客対応以外に時間をかけすぎている。
マッキンゼーとシステムの問題
これ先ほども指摘がありましたけれども、社内資料や会議などが多すぎると。
業務の全体の20%から40%の時間を割いているというマッキンゼーの調査があるそうです。
これに対してグローバルは1割だそうで、もう歴然とした差がありますよね。
それで次は課題5。
ITシステムの過剰なカスタマイズとデジタル化の遅れ。
これどういうことかというと、
日本企業はシステム側を既存の業務フローに合わせるために多大なコストをかけてカスタマイズしている。
これによってレガシー化してしまって、その維持や保守にも莫大なコストがかかっている。
一方で今時の洗練されたシステムってやっぱりクラウドで提供されるけどレガシーと連携できないから、
結局新しいシステムと自社固有にカスタマイズをした「魔改造」したシステムを併用することになっちゃって、効率化できない。
これ見たことありますよね。
これによって社内業務が増える。
本当その通りだと思います。
営業経費削減のインセンティブとガバナンス問題
そして課題6。
ベンチマークを嫌う企業での営業経費削減の相対評価による負のインセンティブ構造。
ちょっとこれ日本語がわかりにくいんですが、どういうことかというと、一見平等で一律の目標、例えば経費削減っていうのを各チームに設定しがちだったりしますよね。
でもそうすると、過去に自主的に経費削減を行った部署も同様に削ることがないのにまた同じようにやらなきゃいけない。
つまり自主的にやったもの負け、になっちゃうということがここでは指摘されていました。
それを防ぐために業界のベンチマークを活用して絶対値を決めれば良いのに、
自社は業界のベンチマーク平均にはそぐわないとか、日本企業なので違うということで、それを拒んでしまう経営陣が多い、というふうに書かれています。
最後の課題7ですが、これは子会社、海外拠点へのガバナンス不足による経費削減の遅れということです。
例えば、本社でやっている経費削減が、子会社だったり遠い拠点のところに対して「お願いベース」でしか効いていないという指摘ですね。
特に日本企業は言語のハードルもあって、海外とかの拠点に対しての統治が効いていないんじゃないかという指摘になります。
というわけで、ここまで現状分析と課題について触れてきたので、次回は第4章の解決のアプローチについて述べたいと思います。
全くの余談なんですが、私が会社員だった頃、会社のボスとか上層部がマッキンゼー出身の人が多くて、
本当に自分のようなボンクラはついていくのに必死、というか全然ついていけていなかったと思うんですよね。
マッキンゼー出身の人のロジカルさとか、課題の本質を精緻に捉えて対処していく仕事ぶりがすごく当時、学びになっていたので、
今回のROIという角度での課題の捉え方も全てのプロジェクトにしつこいくらい設定されている基本仕様だったので、
今回のレポートも読んでいて、全く同じ匂いがするなとか、言葉の使い方ひとつとてもマッキンゼー節があるなと思って背筋を伸ばしながら読んでおりました。
それではまた次回、第4章で解決策に触れる後編もお聞きいただければ嬉しいです。
13:07

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