1. 志賀十五の壺【10分言語学】
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2022-01-29 10:17

#412 「選ばれたのは綾鷹でした」の言語学 from Radiotalk

他昨天买的是菜「彼が昨日買ったのは野菜だ」

ほととぎす鳴きつるかたを眺むればただ有明の月ぞ残れる

参考文献
A History of the Japanese Language (Bjarke Frellesvig, Cambridge University Press)

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始まりました、志賀十五の壺。みなさんいかがお過ごしでしょうか?
せーの、乃木坂46です。
今日のトークのテーマは、協調構文ということでやっていこうと思います。
これはね、僕は高校の英語で習った記憶がありますね。
例えば、It is John that we are looking for とか言うと、私たちが探しているのはジョンだ、みたいになるんですよね。
で、これは普通の文で言うと、We are looking for John となるところを、
ジョンっていう目的語を取り出して、さらにその仮主語のItを置いて、みたいにね、という言い方をしているわけですよね。
日本語だと、今回のトークのタイトルになっているみたいな、選ばれたのは綾鷹でした、みたいな。
こういうのが、今言った英語の協調構文に対応すると思います。
日本語の場合も一緒ですよね。
普通のその語順だと、綾鷹が選ばれましたとなるところを、一種の統治法を使って、動詞が先に出て選ばれたのは綾鷹でしたとなっていると。
さらに言うと、この日本語の場合、英語もそうと言っていいと思うんですけど、AはBです、みたいな言い方になっているんですね。
英語も一緒で、It is Johnっていう風にB動詞が出ていると。
こういう風にAはBです、みたいなものを、コピュラ文と言語学では言います。
なのでこの協調構文っていうのは、コピュラ文を使わなくていい文を、わざわざコピュラ文を使うという風にね、言い換えることができると思います。
ただこの協調構文っていう言い方も非常に微妙で、協調してるはしてるんですけど、その協調という用語自体がかなり曖昧なわけなんですよね。
言語学では、今言ったIt is Johnとか、選ばれたのは綾鷹でした、みたいなものを分裂文という言い方をして、焦点としたい名詞を取り出す文という風に考えます。
この焦点っていうのも言語学の用語なんですけど、大まかに言って新情報と言っていいと思います。
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つまり聞き手が知らない情報を取り出して、それを目立たせるのが協調構文というか分裂文ということですね。
さっき言った英語の例の場合だと、It is JohnでB動詞の後にJohnという、聞き手が知らないであろう焦点となる名詞がきて、残りをthat以下で表しているということになっています。
では日本語のこの分裂文はどうなっているかというと、選ばれたのは綾鷹でした、焦点となる名詞は綾鷹なんですね。
つまりはの後に出てくるのが焦点ということになります。
なので選ばれたっていうのは一種の前提と解釈することができるんですね。
日本語の和っていう助詞の機能はそういうのがあって、前提とか聞き手が知っていること、急情報とか言ったりするんですけど、そういったものが和の前に現れて、和の後は焦点とか新情報が出てくるとなっています。
ここでがっていうのを使うと語順が逆転するんですね。
綾鷹が選ばれました。こういった場合はがの前が焦点で、その後は前提とか急情報ということになります。
なので選ばれたのは綾鷹でしたと綾鷹が選ばれましたっていうのは、語順が違うだけで綾鷹が焦点であるっていうことは変わりがないんですね。
だからほぼ同じ意味を表していると思います。
ただ和の前に出てくるのは名詞に限られるので、選ばれたのはっていうふうにのっていうのをつけて、一種の名詞化っていうことをしているわけですね。
なので結果的にAはBですというコピュラ文になっているということなんですね。
この分裂文っていうのはいろんな言語で見られて中国語にもあるみたいですね。
中国語でそのコピュラ、つまりAはBですみたいなのを表すのに、Cっていうのが使われることがあります。
これはなんていうかな、これっていう感じなんですけど。
これを用いて、例えば彼が昨日買ったのは野菜でしたみたいな分裂文は他昨日買った是菜ってなるんですね。
でこの是っていうのがB動詞みたいなもので、最後の出てきた菜っていうのが野菜っていう意味なんですね。
でそのCの前に現れているのが、彼が昨日買ったのみたいになってて、ちょっとねこれ漢字で書けばよくわかるんですけど、
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だっていうのが日本語の敵っていう漢字にあたって、これが一種の名詞化と考えていいと思うんですね。
なのでこう、畜語訳的に言うと、彼昨日買ったのは野菜っていう風になってて、まさに日本語の分裂文とほぼ同じ構造になっています。
強調公文というか分裂文っていうのは、AはBですっていうコピュラ文を作るっていうことなんですけど、
その場合、名詞を並べることになるので、名詞化っていうプロセスが必要になるんですね。
で英語の場合はザッと節を使って、名詞節を作って、日本語の場合は選ばれたのっていう風にのをつけて名詞化して、
で中国語の場合はダっていう、敵っていう漢字なんですけど、これを使って名詞化をして、AはBですという言い方をしてるってことなんですね。
面白いですよね。これだけ違う言語でも構造自体は同じということになっています。
さらに面白いのは、古文の世界にもこの分裂文っていうのは存在したんですね。
それは係り結びというものです。係り結びっていうのはゾーナムやーかーっていう助詞が出てくると文末を連体形にして、
こそが出てくると依然形にするっていう、まあそういう自動的なねルールだと思っている方いらっしゃるかもしれませんけど、
結構ね英語で書かれたその古文の説明とか見ると、英語のクレフトセンテンスっていってさっきの分裂文と似てるっていう風な説明がされたりするんですよね。
特にゾーナムやーかーが出てきて、文末が連体形になる方ですね。
例えば百人一首で、ホトトギス泣きつる方を眺めれば、ただ有明の月像残れる。
まあこの最後の下の句の方ですね。ただ有明の月像残れる。
まあこれが月像で残れる。で最後連体形になってるわけですね。
終止形は残れるなんですけど、連体形になっていると。
これはどうなってるかというと、現代語風に言えば、残っていたのは有明の月だ、みたいな。
こういう分裂文になるんですね。
つまり、像の前に出てくるのが焦点となる名詞、この場合有明の月。
で、像の後に出てくるのが前提ということになります。
だから選ばれたのは綾鷹でしたとは、まあ語順は逆ってことですね。
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で、なんでこれかかり結びってゾーナムやーかーが出てきたら連体形にしなきゃいけないかっていうと、
さっき言ったように分裂文っていうのはAはBですっていう一種の名詞文なので、
動詞を名詞化しなきゃいけないんですね。
そうなると連体形っていうのが名詞化の役割を果たしているということです。
現代語では選ばれたのはっていう風にのっていうのをつけて名詞化しているわけですけど、
月図を残れるみたいに連体形がその機能を果たしているんですね。
なのでかかり結びっていうのは英語のIt is 〇〇 that 〇〇っていう強調構文と同じってことになります。
まあこういう風にですね分裂文と言われる現象は世界中の言語でも見られるし、
古典でも見られるしということでいろんなところで観察されるものです。
というわけで今回のトークはここまでということで最後まで聞いてくださってありがとうございました。
お相手はシガー15でした。
10:17

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