1. 志賀十五の壺【10分言語学】
  2. #477 ニュージーランド英語で..
2022-09-13 09:36

#477 ニュージーランド英語では left はリフト!? from Radiotalk

関連エピソード
曖昧母音について
https://radiotalk.jp/talk/671155
大母音推移について
https://radiotalk.jp/talk/683907
https://radiotalk.jp/talk/802570

主要参考文献
渡辺宥泰 (2017)「前舌母音推移と NEAR/SQUARE 融合はニュージーランド英語に特有か」『日本ニュージーランド学会誌』24: 3-15.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnzs/24/0/24_3/_pdf

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育
00:07
始まりました、志賀十五の壺。皆さんいかがお過ごしでしょうか。寺内寛太郎です。
お便りいただいています。こちらケンカさんからギフトと一緒にいただきました。
お便りというかリクエストですかね。ニュージーランド英語について収録投稿をとってくださいというお便りです。
ニュージーランドの北東、ノースアイランドから南東、サウスアイランドに渡るフェリーに乗ったのですが、
乗船待ちの車の待機場に入る際に誘導員が turn to the lift と言ったように聞こえ、
リフトってね、エレベーターっていうことで、エレベーターを探してぐるぐる回ってました。
大きい船なのでエレベーターで船に入るのかななんて思ってましたが、
エレベーターなんて一個に見つからずしばらく経ってからリフトじゃなくてレフトかと気づいたということがありました。
面白いですね、このエピソードね。
Nも犬に聞こえたり、千は金だったり、Aが限りなくイに聞こえるなと思ってたんですが、
それが母音の推移、母音の推移だとして驚いていますということで。
まあこのあたりについて今日はねお話ししていこうと思います。
僕もニュージーランドは行ったことがあって、確かに母音の質が違うんですよね。
たぶん慣れたらねそんな大したことはないと思うんですけど、初めて聞いたときは面食らうと思います。
でケンカーさんのお便りにあるように、レフトがリフトになったりとか、
あとはねなんだろうな、全体的にAで発音されるような母音がイに聞こえるんですよね。
ただニュージーランド英語の発音の特徴っていうのは、イギリス英語やアメリカ英語でAと発音されるものがイって聞こえるっていう、
この一つの特徴だけじゃなくて、もうちょっと組織的というか体系的な音変化っていうのが起こっているんですね。
今回はそれについてお話ししていこうと思います。
ニュージーランドで見られる母音の変化っていうのは、前じた母音推移と言っていいようなもので、
前じた母音っていう一連の母音のグループで起こっている体系的な変化なんですね。
03:04
でこれちょっとね音声学の知識がいるんですけど、前じた母音っていうのは日本語にもあるようなもので、
例えばイとかねエとかこういったものは前じた母音と言われるものです。
英語だとキャットとか悪いのバッドとかこういったものはエというような、
ちょうど日本語のアとエの間にあるような母音も前じた母音に含まれます。
前じたがあるので後ろじた母音もあって、ウとかオっていうのが後ろじた母音なんですね。
でこの前じた母音っていうのは連続していて、一番口の開きが大きいのがキャットのエっていう母音で、
それから少し口を狭めるとエという母音になって、一番狭いのがイという母音になります。
実際エイっていう風に口の狭めを狭くしていくと連続して発音することができます。
でニュージーランドで何が起こってるか、ニュージーランドでっていうかニュージーランド英語で何が起こってるかというと、
この前じた母音が一つずつ狭くなってるんですね。
まず一番この中で広い母音はエっていう母音に変わっています。
一つ狭くなっています。
なのでキャットっていうのはケットに聞こえるし、ベッドっていうのはベッドに聞こえます。
そして次に狭い母音がエですけど、これがケンカさんのお便りにあったように、
さらに狭い母音イという母音になって、
レフトはリフトになるし、ベッドはビッドになるし、
テンっていうのはティンになるっていう風に一つ狭い母音になってるんですね。
で問題は最後の前じた母音のイというもので、これが一番狭い母音で、
これ以上狭くなり得ないんですねっていうのが、
イっていう母音をさらに狭くしようとするとヒーっていうようなちょっと摩擦を含むようなね、
むしろ死音になってしまうので、そうなるとどうなるかというと、
ニュージーランド英語でイにあたる母音はあいまい母音のウっていうような発音になっています。
なので魚のフィッシュみたいなものはフィッシュみたいになったりとか、
数字の6のシックスっていうのもスイクスみたいになるんですね。
このあいまい母音っていうものがどういったものなのかっていうのは、
関連エピソードがあるのでそちらも聞いてほしいんですが、
まあ前じたでも後ろじたでもなく狭くも広くもない、
06:02
まあなんていうかなその名の通りあいまいな口の中間あたりで発音するようなものとなっています。
なのでニュージーランド英語では前じた母音が一個ずつ狭くなって、
まあこれはたまつき事故的とね考えてもいいと思うんですけど、
aっていうのがaになってaっていうのがeになって、
で狭くなることができないeっていうのはuっていうのになっていると。
そのためにleftっていうのがliftに聞こえてしまったっていうことなんですね。
あるいはお父さんのdadっていうのがdeadになるわけなので、
まあ死んだっていう意味になっちゃうので、
まあそういうふうにねちょっと単語の混同っていうのがね起こりうるので、
まあかなり注意が必要ではないかなと思います。
実はニュージーランド英語だけではなくて、英語の歴史を通して似たような変化はあったんですね。
それが大母音推移と言われるものです。
でこれは過去にエピソードを撮っているので関連エピソードとしてURL貼っとくのでそちら聞いてほしいんですけど、
例えば名前っていう単語は現代英語ではnameですけど、
そのままローマ字読みするとnameですよね。
で実際昔はこういう発音だったそうです。
それがaっていう母音が一つ狭くなってnameみたいな発音になって、
でさらにその後aっていう母音が二重母音のaに変わって、
まあ現代のnameになってるんですね。
あるいは見るっていう動詞のseeっていうのももともとはsayっていう発音だったんですが、
ニュージーランド英語と同様ですね。一つ狭くなってseeになっています。
あるいは時間のtimeっていうのももともとtimeみたいな発音だったものが、
やはりこれもeっていう母音はこれ以上狭くなり得ないので、
iっていう二重母音に変わってtimeに至ってるんですね。
なので過去に英語の歴史で起こった大母音seeっていうのが、
ニュージーランドの英語で再び起こってると言ってもいいかもしれません。
ただ大母音seeっていうのはかつて英語の長母音に起こった音変化だったんですけど、
ニュージーランド英語で起こってるのはむしろ短母音に起こってる変化なので、
まったく同一のものとは言えないんですけどもちろん。
ただ変化の種類としては同じものですね。
一個ずつ狭母音化しているということになっています。
09:00
というわけで今回はニュージーランド英語の発音についてお話しいたしました。
関連エピソードもぜひ聞いていただけたらと思います。
こういった知識があるとニュージーランド英語を学ぶのも楽しくなるんではないでしょうか。
というわけで今回はここまでということで、最後まで聞いてくださってありがとうございました。
また次回お会いいたしましょう。
番組フォローも忘れずよろしくお願いします。
お相手はシガ15でした。
またねー。
09:36

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