1. 志賀十五の壺【10分言語学】
  2. #478 かつて日本語にエ段の音..
2022-09-17 09:58

#478 かつて日本語にエ段の音はなかった!?(上代日本語) from Radiotalk

関連エピソード
https://radiotalk.jp/talk/730676

主要参考文献・URL
『日本語の文法を考える』 (大野晋、岩波新書)
“A History of the Japanese Language” (Bjarke Frellesvig, Cambridge University Press)
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/choes/korean/middle/Jmiddle.html

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育
00:06
始まりました、志賀十五の壺。
みなさんいかがお過ごしでしょうか。
Jajabinksです。
現代日本語の母音は五つですよね。
あ、い、う、え、おの五つですけど、
昔からこの五つっていうのが変わらずやってきてるかというと、
まあそういうわけではなくて、
日本語の歴史の中でこの母音っていうのは増えたり減ったりしています。
まあ日本語に限らず母音がね、増えたり減ったりするっていうのはよくあることのようです。
例えば、室町時代の日本語では、五段の長音、伸ばす音に2種類あったようです。
一つは、おーっていうようなちょっと開いたおーっていう発音と、
狭いおーっていう発音があったみたいなんですね。
で、これはキリシタン資料って言って、
日本にやってきたキリスト教の宣教師が残した日本語の資料に、
ちゃんとこう発音の違いが記されてるんですよね。
なんでこの五段長音に2つの音の違いがあったかっていうと、
それぞれ母音の足し算によってできた音なんですね。
広い方のおーっていう発音は、
あーとうーの足し算によってできたものです。
あうがおーという発音になっています。
一方狭い方のおーっていう発音は、
おーとうーの足し算でおーになっていて、
こっちの方が現代日本語にも当てはまるっていうかイメージしやすいと思うんですよね。
王様とかいうときにおーうーと書きますけど、
おーという風に長音で発音しています。
ただ室町時代にあったこの2つの区別は、
現代日本語では区別がなくなっちゃって、
両方おーっていう発音になってますよね。
つまり室町時代の日本語の母音は、
現代日本語の母音より数が多かったということになります。
ただし今の話、広いおーと狭いおーの区別がなくなったのは、
あくまでいわゆる共通語の話、
あるいは日本語方言の大部分の話であって、
新潟県の方言では、
この広いおーと狭いおーの区別が残っている地域もあるそうです。
03:08
さらに時代を遡って奈良時代の日本語になると、
もっと母音の数は多かったと考えられています。
8つあったと言われてるんですね。
多すぎじゃないかっていう感じですけど、
なぜ母音が8つあったっていう風にね、想定できてるかというと、
これは万葉仮名からそういったことが分かってるんですね。
まあこのことについては関連エピソードがあるので、
ぜひこの後聞いていただきたいんですけど、
具体的には、伊壇、枝壇、織壇、それぞれに2つの区別があったと考えられています。
伝統的に甲類と蛻類っていう風にね、甲蛻という言い方をされています。
別に12でもABでも変わんないんですけど、
この甲類の音と蛻類の音を書き表すのに、
別の万葉仮名、つまり漢字ですね、を使っていたので、
おそらく発音上区別があったんだろうと考えられているんですね。
しかし、この奈良時代の8つの母音も、
その中のいくつかは母音連続の融合によってできたっていう風にね、考えられているんですね。
だからさっきの室町時代の広いオーと狭いオーの区別と同じです。
で、このことについては大野進先生の「日本語の文法を考える」っていう
岩波新書から出ているものがあるので、ぜひ皆さん読んでみていただきたいと思います。
特にエダンの音、さっき言ったようにエダンには甲類と蛻類2つあるっていう風に言いましたけど、
そのいずれにせよ、エダンの音はどちらも母音連続の結果、融合してできた音だと考えられているんですね。
その証拠に、和語とかちょっと思い浮かべてみてもいいかもしれないんですけど、
日本語の単語に、まずエダンってすごい少ないんですよね。
で、そのエダンの音が出てくるとしても、単語の後ろの方、語末に現れやすいっていうことで、
おそらくこれは母音が連続した結果、できたんだろうと考えられています。
エダンの甲類の方は、イ・アっていう母音の連続からエという母音になって、
エダンの蛻類の方はア・イという母音からエというね発音になったと考えられています。
06:06
で、おそらくこの甲類と蛻類は何らかのね発音の違いが当然あったと考えられているんですけど、
当然、現代日本語にはその痕跡はありません。
例えば、雨っていう単語はエダンの音が入ってますよね。
で、これは万葉仮名を見ると、雨のエの音は蛻類であったということがわかっています。
つまり、雨のエの音はア・イっていう母音連続が元だったと。
実際、雨音とかね、雨宿りとか他の単語の一部になるときはア・マっていう音で出ていて、
で、それにイっていう要素がくっついてア・イという母音の連続が起こり、
それが蛻類のエという音になっているっていうふうに考えられてるんですね。
なので、奈良時代の日本語の母音は8つあったっていうふうなことがわかってるんですけど、
その中のいくつかは、今エダンの話しかしてませんけど、
イ・アとかア・イみたいな母音連続に由来しているということで、
さらに奈良時代以前の日本語になると、母音の数はもっと少なかったんじゃないかということになりますね。
少なかったのが母音連続の結果、新しい母音ができて、それがまた区別がなくなってっていうような、
増えたり減ったりしているということです。
こういうふうに母音が連続した結果、新しい母音が生まれるっていうのは、
いろんな言語であることなんですよね。
お隣の韓国朝鮮語でもそうで、
今話したエダンの蛻類、ア・イからエっていう音ができたっていうのと、
全く同じことが韓国朝鮮語にも起こっています。
例えば、
これ漢語ですけどね、
大きいっていう字は音読みだと大ですよね。
で、これは韓国朝鮮語ではてというふうに言います。
っていうふうに日本語の発音でア・イっていうものが、韓国朝鮮語ではエに対応しているものが山ほどあります。
これは全部さっき言ったように漢語なんですね。
このことはね、ハングルを勉強するとよくわかるんですよ。
ハングルっていうのは韓国朝鮮語を表す文字のことですけど、
その文字の仕組みがわかれば、
母音が融合した結果、新しい母音ができているっていうのが非常に明快にわかります。
ちなみに韓国朝鮮語にはさっきの冒頭お話しした、
09:01
広いオーと狭いオーの区別があるんですよね。
で、表記上はエダンにも2つ区別があるんですけど、
少なくともソウル方言では2つのエの区別は発音上はなくなっていると思います。
というわけで今回のエピソードは、
日本語の歴史を中心に母音の数は増えたり減ったりすることがある。
それは母音連続が融合した結果、新しい母音ができたり、
それがさらに合流して区別がなくなったりすると、
そういったお話でございました。
最後まで聞いてくださってありがとうございました。
番組フォロー忘れずよろしくお願いします。
お相手はシガ15でした。
またねー。
09:58

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