1. 志賀十五の壺【10分言語学】
  2. #549 主要部標示言語 vs 従属..
2023-05-23 10:31

#549 主要部標示言語 vs 従属部標示言語 from Radiotalk

関連エピソード
https://radiotalk.jp/talk/603876
https://radiotalk.jp/talk/605277

主要参考文献
Johanna Nichols, Balthasar Bickel. 2013. Locus of Marking in the Clause. In: Dryer, Matthew S. & Haspelmath, Martin (eds.)
The World Atlas of Language Structures Online. Leipzig: Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology.
(https://wals.info/chapter/23)
『日本語の類型』 (風間伸次郎、三省堂)

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育
00:06
始まりました、志賀十五の壺。
みなさんいかがお過ごしでしょうか。
すねちゃまのままざます。
今回は、主要部標示型言語と従属部標示型言語というのをね、テーマにお話ししていこうと思います。
英語だとヘッドマーキング、ディペンデントマーキングっていうような言い方をして、
まあ、なんのこっちゃっていう感じだと思うんですが、
言語の構造には、主要部と依存部っていうメインとなるものと、それに従属している依存している部分と、
そういう関係で成り立っている構造っていうのが多く見られます。
例えば、主語と動詞っていうのは、動詞っていうのがメインで、
主語っていうのはそれに依存しているっていう風に考えられるんですね。
これにはいろんな証拠というか、説明があると思うんですけど、
一旦そういうことにしていこうと思います。
これは主語だけではなくて、目的語とか、あるいは他の間接目的語含め、
文に出てくるいろんな名詞、あるいは名詞句っていうのは、
動詞に対する、従属しているもの、従属部、依存部という風に考えられるんですね。
で、さっき言った主要部表示型言語と、従属部表示型言語っていうので言うと、
日本語は従属部表示型言語だと言われています。
それもかなり典型的な従属部表示型言語、ディペンデントマーキングな言語で、
どういうことかというと、何が主語で何が目的語かっていうのは、
名詞の方、つまり従属部の方で表されているからなんですね。
私が彼を見たっていう風に、このがっていうのが主語であること、
をっていうのが目的語であることを表しています。
まあこういう風に従属部の方で、何というかな、文法関係を表しているので、
従属部表示型言語と言われるんですが、
対する主要部表示型言語っていうのは、
動詞の方で何が主語で目的語かっていうのを表しているんですね。
これはアイヌ語という言語がそういった言語で、
03:04
日本語とアイヌ語って当然地理的には非常に近いんですけど、
言語のタイプで言うと大きく異なります。
特にこの従属部表示型なのか、主要部表示型なのかっていう点で結構違うんですね。
どういうことかというと、私が彼を見たっていう時に、
アイヌ語だとくぬかるっていうような言い方になります。
このくぬかるっていう動詞だけで、
主語が私、目的語が彼、あるいは彼を含む三人称単数であることを表してるんですね。
つまり、これがもし彼が私を見るとなると、動詞の形も大きく変わります。
そういう場合、アイヌ語ではえんぬかるという言い方になって、
このえんぬかるっていう動詞に、さっきと違って、
主語が三人称単数で、目的語が私、一人称単数であるっていうことが乗っかってるっていうかね、
動詞に表示されている、つまり主要部に表示されています。
これは日本語と大きく異なって、
日本語は何が主語で何が目的語であっても、
動詞の形は見たで変わることはないですよね。
まあこういった感じで、日本語っていうのは従属部表示型の言語だと、
よく言われるんですが、果たしてそうなのかっていうね、点もいくつかあります。
例えば、このがとかをっていう助詞っていうのは、
特に話し言葉だと出てこないことも多いですよね。
なので必ずしも従属部の方で主語や目的語を表しているとも言えない面があるし、
さらに言うと、あいぬ語みたいに動詞の方で何が主語かっていうのを表している場合もあります。
目的語の方はどうかな、目的語ももしかしたらあるかもしれないんですけど、
ちょっと今回は主語に絞ってお話しします。
どういうことかというと、まず一つは敬語です。
敬語っていうのは、何が主語であるかっていうのがある意味限定される言い方になっています。
言うっていう動詞はノーマルな形で、
これだけでは何が主語かっていうのは当然わからないんですが、
もしこれを尊敬語にした場合、「おっしゃる」と言えば、
これは主語は一人称以外であるっていうことが示唆されてるっていうような言い方ができるんですね。
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ある意味主語の人称をおっしゃるっていう形が表していると。
逆に申し上げるっていう謙譲語を使った場合は、
これは主語が一人称であるっていうことを示唆しています。
つまり主語が何かっていうことによって、動詞の形が変わってるんですよね。
そういう主語の情報が主要部である動詞に表示されているという点で、
日本語も少し主要部表示型言語っぽいところはあるんですね。
他にも何々してあげる、してくれるっていうような言い方も、
主語の選択に関わっています。
特に何々してくれるっていう言い方は、主語が一人称の時は非常に厳しいです。
普通使えないと思います。
彼が私に教えてくれた。
まあこういうふうに彼がみたいな主語の時には自然ですけど、
私が彼に教えてくれたっていうのは普通言わないし、
くれてやったみたいにちょっと特殊な文脈では使うことができるんですが、
いずれにせよこういう何々してあげる、してくれるっていうのも、
ある意味動詞の方で何が主語かっていうのを表していると。
この辺についてはね、関連エピソードがあるのでぜひ聞いていただけたらと思います。
まあこういった感じで、日本語も美容によっては主要部表示型っぽい特徴もあります。
要は動詞の情報量が多いっていうことですよね。
ただこの何が主語で何が目的語かっていうのを、
名詞の方つまり従属部にも表示しないし、
主要部つまり動詞にも表示しないっていうね、そういった言語もあるんですね。
これは中国語とかベトナム語とかあるいはタイ語とか、
孤立型の言語と言われるもので、こういった言語は日本語のがやをみたいな、
いわゆる格助詞みたいなものやあるいは格変化っていうものはないし、
動詞が主語あるいは目的語によって形を変えるっていうこともありません。
じゃあどうやって主語や目的語っていうのがわかるかというと、それは語順なんですね。
英語もかなりそういったタイプになっていると言ってよくて、
09:05
大抵こういったタイプの言語ではSVOの語順になってるんですよね。
主語・動詞・目的語っていう語順で、
語順がそういう主語や目的語の情報になっているというタイプの言語も結構あります。
結構いろんなやり方があるなーっていう感じですよね。
ちなみにアイヌ語みたいな主要部表示型言語の中には、
主語と目的語に加えて間接目的語も動詞に表すっていうタイプもあるみたいなんですね。
これはさらに主要部、つまり動詞の情報量が多くなってて、
その分動詞の変化形っていうのも多くなるわけなので、
日本語母語話者からするとすごく大変そうに見えるかもしれません。
というわけで今回はヘッドマーキングとディペンデントマーキングの言語ということでお話しいたしました。
関連エピソードがいくつかあるので、ぜひそちらも聞いていただけたらと思います。
ではまた次回お会いいたしましょう。
番組フォローも忘れずよろしくお願いいたします。
お相手はシガ15でした。
10:31

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