1. 志賀十五の壺【10分言語学】
  2. #656 シルバースティーンの名..
2024-06-01 10:45

#656 シルバースティーンの名詞句階層 from Radiotalk

主要参考文献
角田太作 (2009)『世界の言語と日本語: 言語類型論から見た日本語 改訂版』東京: くろしお出版.

関連エピソード
https://radiotalk.jp/talk/1171510
https://radiotalk.jp/talk/973340

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育
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始まりました、志賀十五の壺。皆さんいかがお過ごしでしょうか。中川圭一です。
今回はズバリ、シルバースティーンの名詞句階層、これをね、テーマにやっていこうと思います。
これね、非常に面白いんですけど、今までのエピソードで取り上げたことがなんかないみたいで、ないことはないんですよね。
このシルバースティーンの名詞句階層にまつわる話はしてるんですけど、それをメインに取り上げたのは、あるかもしれないんですけど、ちょっと見当たらなかったです。
スクマークともなんかタイトルにはなってなかったので、ズバリね、今回はシルバースティーンの名詞句階層、これをね、テーマにお話ししていきます。
シルバースティーンというのは人名です。人の名前で、その人が発見したというかね、提案した名詞句の階層ということになっております。
名詞句と言ってますが、単純に名詞と言っても、そんなに今回は問題ないかなと思います。
この名詞句階層というのは階層になっているということなんですけど、今回参考にしている書籍は、角田多作先生の「世界の言語と日本語」という黒書出版から出ている本でございます。
これは非常におすすめです。過去のエピソードでも何度かおすすめしてるんではないかと思います。
主語の話とかね、非常に面白く読めるんではないかと思うんですが、その世界の言語と日本語の中の第4章でシルバースティーンの名詞句階層を扱っているんですね。
一章丸々使って角田先生が書いてるんですけど、これがね日本語で読めるっていうのは非常にありがたいですね。
名詞句が階層になっているということで、実際にどういったものかっていうのを今からお話ししていきますけど、
まず代名詞っていうのが、いわゆる普通名詞よりも階層が上にあるというふうに考えられます。
その代名詞の中も一人称、二人称、三人称という順番で階層がなっているというふうに言われるんですね。
ただここのね、二人称の順番は二人称、一人称っていう説もあるみたいですが、ひとまずここは一人称、二人称、三人称という順番に並んでいると思ってください。
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その代名詞の下に名詞が来るわけなんですけど、次に来るのは親族名詞と固有名詞です。
つまりお父さんお母さんお兄ちゃんお姉ちゃんおじいちゃんおばあちゃんみたいなね、親御ママみたいでしたけど、
そういう親族名詞と人名ですよね。固有名詞っていうのが代名詞の下に位置付けられます。
その下から普通名詞といった感じで、人間名詞、その下に動物名詞、一番最後に無生物名詞というような階層になっているんですね。
無生物名詞もさらに細かく自然の力の名詞と中小名詞、知名と、そうやって分けられるようです。
このシルバーシティの名宿階層っていうのは、今言った代名詞のその中でも一人称代名詞、私みたいなものがトップにあって、
段々段々階層が下がっていって、ランクが下がっていって、一番下が無生物名詞ということになっているんですね。
これが何なんだということなんですが、このシルバーシティの名宿階層が提案されたのは、そもそもは分裂能格について説明するために提案されたようなんですね。
分裂能格については関連エピソードがございますので、ぜひそっちも合わせて聞いていただきたいんですね。
なかなか面白い仕組みになっております。
ざっくり言うと、階層の高い代名詞なんかは主格対格型の格配列で、階層の低い無生物あるいは動物名詞なんかは能格絶対格型の格配列となるということなんですね。
これだけ聞いてもね、なかなか難しいと思うので、ぜひ関連エピソードを聞いていただけたらと思います。
こういう分裂能格という現象はオーストラリア先住民言語で見られるものなんですよね。
それとは全く関係のない言語、例えばナバホ語という言語でもこの階層が関わっているんですね。
このナバホ語というのは第二次世界大戦中、太平洋戦争中にアメリカ軍がその日本対策の暗号として用いた言語なんですよね。
こちらもね関連エピソードあるのでぜひ聞いていただきたいんですけど、このナバホ語という言語は語順というのが優勢性によって決まってるんですね。
よくその主語と動詞と目的語でSVOとかSOVとかそういったことが言われるんですけど、ナバホ語の語順はこのシルバーシティの名宿階層によって決められている。
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定まってくるということなんですね。
動詞が最後に来るんですが、その主語と目的語の順っていうのはシルバーシティの名宿階層の高い順に並べられるということなんですね。
例えば、私が山を見たといった場合は、見たっていう動詞は最後に来るわけですけど、
私、山という語順になります。
なぜなら私っていうのが一番階層の高いところにあって、山っていうのは無生物名詞ですので、階層が一番低いです。
そういったわけで、私、山という語順になるんですね。
一方、馬が私を見たといった場合、その語順は主語目的語という馬、私、見たっていう語順ではなくて、
やっぱり階層性の高い、私、馬、見たとなるんですね。
ただそうなると、本当に私が馬を見た場合と馬が私を見た場合と区別できないじゃないかということなんですけど、
そこが面白いところで、ナバフ語は動詞の形を変えるんですね。
そちらはね、ぜひ関連エピソードを聞いていただけたらと思います。
まとめると、ナバフ語では多動詞文の2つの名詞の順番っていうのは主語や目的語っていう統合機能と言われるものですけど、
そういったもので決まっているのではなくて、シルバースティーンの名詞区階層の高い順に並べられるということなんですね。
このシルバースティーンの名詞区階層が関わっているのは、今お話ししたのはオーストラリアの先住民言語とかね、ナバフ語っていうことで、
全然日本語と関係ない言語ばっかじゃないかと思われるかもしれませんが、日本語でもね、このシルバースティーンの名詞区階層関わってるんですね。
角田先生の挙げているものだと、ことというものです。ことどういうことかというと、
あなたのことが好きだとか言った場合のこのことというかね、のことというものです。
こののことっていうのがつくのは、シルバースティーンの名詞区階層で、階層の高い名詞につきます。
今言ったあなたのことが好きだとかね、私のことが好きらしいとかね、こういう代名詞にはのことというのがつきます。
あるいは固有名詞もそうですよね。太郎のことが好きだ。あるいは親族名称、お父さんのことが好きだ。
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こういうふうに比較的階層の高いものにはのことというのがつくんですが、
階層が低くなると、例えば、果物のことが好きだ。
まあこれはかなり果物っていうのを擬人化しているような感じがしますよね。
普通は果物が好きだというふうになります。
まあ嫌いでもいいんですけどね。
きゅうりのことが嫌いだ。
まあ普通言わないですね。きゅうりが嫌いだ。
こういうふうにシルバーシティの名詞区階層っていうのは、全然系統関係にない地理的に離れた言語に見られるいろんな現象を、
その一つの名詞区階層というね、装置によって説明できるというね、なかなか画期的なものなんですよね。
ある意味で言語学、特に類型論と言われる分野が目指すものはこういったもので、
何か統一的な説明ができないか、言語の多様性の中から普遍的なものを見つけ出すというのが、
一つ言語学の目指しているところでございます。
というわけで、最後まで聞いてくださってありがとうございました。
関連エピソードもぜひ聞いていただけたらと思います。
そして、角田先生の「世界の言語と日本語」も読んでみてください。
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。
お相手はシンガ15でした。
またねー。
10:45

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