1. 志賀十五の壺【10分言語学】
  2. #584 相対方位と絶対方位 from..
2023-09-23 09:32

#584 相対方位と絶対方位 from Radiotalk

関連エピソード
https://radiotalk.jp/talk/279749
https://radiotalk.jp/talk/624797

主要参考文献
『ことばと思考』 (今井むつみ、岩波新書)

Twitter▶︎https://twitter.com/sigajugo
Instagram▶︎https://bit.ly/3oxGTiK
LINEオープンチャット▶︎https://bit.ly/3rzB6eJ
オリジナルグッズ▶︎https://suzuri.jp/sigajugo
note▶︎https://note.com/sigajugo
おたより▶︎https://bit.ly/33brsWk
BGM・効果音: MusMus▶︎http://musmus.main.jp/

#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育
00:07
始まりました、志賀十五の壺。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。タオパイパイです。
世界の言語の中には、右や左といった単語が存在しない言語もあります。
これについては、過去にお話ししたエピソードがあるので、そちらを聞いていただけたらと思います。
右とか左っていうのは、かなり普遍的な概念な感じがしますよね。
で、そういうものがないと、結構ね、日常生活苦労するんじゃないかという気もするんですが、
そういった言語では、右や左という単語の代わりに、東西南北を使って位置関係を表すので、
その点は別に苦労はないんですね。
だから我々が、ちょっと右に動かしてっていうところを、ちょっと東に動かしてみたいな言い方をするということなんですね。
これってなかなか、右や左といったね、単語を持っている我々にとっては、
理解しがたいし、なんでそんな面倒なことをやってるんだろうという気もするかもしれませんが、
もし立場が逆だったら、右や左っていうのは必ず基準点っていうのが必要になるので、
もしその東西南北を用いて、右や左っていうのは特に持ってないような言語の話者からすると、
我々の方がむしろ面倒くさいことをやっているように思われるかもしれません。
基準点が必要になるということは、ある意味相対的な単語ということになるということで、
右左あるいは前後ろっていうのは相対方位という言い方をします。
基準によって前後左右っていうのは変わってきますよね。 一方、東西南北っていうのは、
その誰から見ても東西南北っていうのは変わるものではない、絶対的なものだということで、絶対方位という言い方をします。
これはもちろんどちらが良い悪いの問題ではなくって、たまたま日本語は相対方位を用いる言語でしたけど、
03:07
もしかしたら絶対方位を用いる言語だったかもしれないんですよね。
こういった問題はよく言語相対論と言われる、文野っていうかね、そういった文脈で扱われることがあって、
簡単に文化の違いだ、相対方位を使う文化言語、絶対方位を使う文化言語がある、
そういうふうに片付けられることもあるんですが、もうちょっと深く掘り下げることができるようです。
というのがこのような実験があったんですね。
相対方位を用いる言語の話者、具体的にはオランダ語話者と絶対方位を用いる言語の話者、
これはアフリカのコイサン諸語の言語の話者、このコイサン諸語っていうのはね、下打ち音を使う言語で、
それはそれで面白いんですけど、このオランダ語母語話者とコイサン語母語話者を対象に実験を行ったんですね。
どんなものかというと、テーブルの上にカップが置いてあって、でそのカップの中に、何でもいいですけど、
小さなフィギュアでも何でも物を隠すと。
まあここでは3つカップがあるとして、左端に物を隠したとします。
このテーブルの向かい側に同じようにカップが並べてあるので、
同じところに同じように物を隠しているから、それを見つけてくださいっていうような簡単な実験です。
で相対方位を用いるオランダ語の母語話者の場合は、
左端にあったっていうことで、反対側のテーブルでも左端のカップを選んだそうです。
一方、コイサン語母語話者は絶対方位を用いるので、
例えば一番東にあったとしたら一番東のカップを選ぶということで、
選ぶカップは右端になるということで、実験結果は真逆ということになります。
要は向かい合わせのテーブルっていうことは、180度対称者は回転することになるので、
相対方位を使う話者の場合は、左と右っていうのは自分の向いている方向によって変わるんですが、
06:00
絶対方位を使う話者にとっては、180度回転したとしても一番東側っていう位置は変わらないっていうことなんですね。
こういうふうに言語の母語の影響が、そういう実験結果に現れているわけなんですが、
これを4歳の子供にやった場合、オランダ語母語話者も絶対方位を用いた選び方をしたんですね。
つまり一番左端のものを選ぶというよりは、一番東端のものを選ぶというような選び方をしました。
で、これは4歳の恋参合母語話者でも同様だったようです。 このことから、右や左あるいは前後っていうような相対方位っていうのは、
後から母語と一緒に獲得される方向感覚で、相対方位を学ぶ前の人間にとっては絶対方位っていう方が、
より正徳的っていうか先天的なものっていうのがわかるんですね。 恋参初号の場合は相対方位を表す単語がないので、
成人も絶対方位的な考え方をしているわけなんですが、オランダ語の場合は、もともと持っていた絶対方位的な感覚っていうのが、
ある意味、言語によって失われてしまって、代わりに相対方位的な感覚っていうのが母語によって与えられているっていうことなんですね。
これは非常に広い意味で言えば、言語っていうのは相対的なあるいは抽象的な能力を我々に与えているということができると思います。
この言語の抽象化能力みたいなものは過去のエピソードでも話しているので、合わせてそちらも聞いていただきたいんですけど、
当然そのおかげで、我々は世の中のいろんなことを解釈したり人に伝えたりできるわけですよね。
ただその相対化能力、抽象化能力を得ると同時に、その裏返しとして、ある意味本来的に持っていた絶対方位みたいなね、
そういった能力が失われているっていうことでもあるんですね。
まあこれは良い悪いっていう話ではなくて、言語を得ることによってそういうことが起こっていると、そういったお話でございました。
09:08
今回のお話は今井睦美先生の「言葉と思考」っていうね、岩波新書から出ているものに詳しく書いているので、ぜひ読んでみてください。
はい、それではまた次回お会いいたしましょう。
お相手はシガジュウオでした。
またねー。
09:32

コメント

スクロール