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始まりました、志賀十五の壺。皆さんいかがお過ごしでしょうか。志賀十五です。
今回のトークで取り上げるのは、日本語の波行ですね。ハヒフヘホです。
トークタイトルを見て、お分かりいただけるようにですね、 part 2っていうことになってるんですね。
というのも、同じタイトルのトークを過去に収録しておりますので、
関連トークとして概要欄にリンク貼っておきますので、これ聞き終わった後でいいので、そちらもぜひ聞いていただけたらと思います。
ほいで、なんでこうやたらめたらハヒフヘホを取り上げるかというと、
言語学に馴染みがない人とか、初めて言語学に触れる人に、
どういう話をしたらいいかなと思った時に、特に日本語母語話者に向けてですけど、この波行っていうのがね、
もしかしたら一番いいんじゃないかなと思ったからなんですね。 その理由は2つあって、1つは歴史的にかなり面白いからなんですね。
ハヒフヘホっていう、この発音の歴史を遡るとですね、古典の時代あるいはそれよりもさらに遡った時代の発音は、
もっと違ったんじゃないかっていうね、そういう話が一つあって、
過去のその関連トークの方は、そちらの歴史的な側面の方をお話ししております。 ぜひそちらも聞いていただけたらと思うんですが、
今回そのパート2としてお話しするのは、 現代日本語においてもこのハヒフヘホっていうのは面白いんですね。
つまり歴史を遡らなくても、 この現代日本語という一つの言語の体系の中で見てみても面白いと。
まあちょっとね、込み入った言い方をすると、 音声学、音韻論的に面白いんですね。
言うてみたらこれもやっぱり発音の話なんですが、この日本語の波行を見るだけで、
言語学っていうのが何をしているか、特に音韻論と言われる分野がどういったものなのかというのがお分かりいただけると思うんですね。
そもそも日本語の波行っていうのはハヒフヘホですよね。 で、この5つがメンバーであるということなんですが、
このうちフだけなんかちょっと異質だなぁって感じがすると思うんですよね。 特にこれはローマ字で書いたときですね。
HA, HI, HE, HO みたいに書いている中、フだけは FU と書くんですね。違うアルファベットが使われています。
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同じ波行の中でもフだけFが使われているんですね。 これは何でかっていうと、当然
察しがつくように発音の仕方がちょっと違うからですね。 波行の中でもフだけは唇を使う音なんですね。
これは英語のFとは違って、英語のFは唇と歯を使う音なので微妙に違うんですよ。
日本語のフは両唇をすぼめてフッというね、 ろうそくの火を吹き消すようにとかいう言われ方をします。
他のフ以外の波行の音、HA, HI, HE, HO は唇を使わないのでFは使わないとこういうことになっているんですね。
これに対して言語学はどのように考えるか、 特に音韻論と言われる分野はどのように分析するかというとですね、
日本語の波行のシーンは H で書くようなハという音が基本形としてあって、
あるいは規定形みたいな言われ方もするんですけど、デフォルトとしてあって、
それが後ろにウという母音が来るときだけ唇を使う音に変わるとこういうふうに考えるんですね。
つまりローマ字表記だけ見ると、波行の音には H と書くものと F と書くものの2つがあるように思われるんですが、
音韻論と言われる分野では H という、これは音素という言われ方をするんですけど、
H という1つの音素だけを想定して、 後ろにウという母音が来るときだけ F という両唇を使う音で現れると。
つまり潜在的には音は1つだけど、その音の環境によって現れ方が異なるだけだということなんですね。
こういう F みたいな音のことをイオンって言うんですね。異なる音と書いてイオンです。
バリエーションの1つに過ぎないということなんですね。
なんでそういうふうに考えるかというと、音韻論において音素というか音のメンバーというのは少なければ少ない方がエレガントというか美しいというふうに考えるんですね。
なので波行については H という音素だけを想定して、後ろにウという母音が続くという、
そういった音的環境のときのみ F という唇を使うことに変わると。こういうふうに考えるんですよね。
こういうふうに環境によってイオンが出てくる異なる音声になるっていうのは他にも当然あって、よく挙げられるのは N ですね。
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例えば、カンパとカントとカンコって言ったときに全部 N っていうのが出てきますけど、音声学的に言うと全部違う音なんですけど、音韻論で考えるときはもう全部同じ音として扱います。
この場合は後ろに出てくるシーンがどういうシーンかによって異なるイオンが出ていると表れていると考えるということなんですね。
これは波行におけるフと同じことです。 この N についての話は別個にトークがあるのでそちらを聞いていただけたらと思います。
今、波行の中でもフっていうのをやたらめたら取り上げましたけど、実はヒっていうのも異質なんですよね。
ちょっと気づきづらいんですけど、フっていうのは F で書くから違うんだなと思うんですが、ヒっていうのは他のものと同じように H で書くからちょっとピンとこないかもしれませんけど、
他の波行の音、つまりハートヘートホーっていうのは声紋摩擦音って言って喉の奥の方で空気の摩擦を作っているんですね。
ハーヘーホー。一方ヒっていうのは完全に口の中で摩擦を作っています。ヒ。
ちょっと分かりづらい場合はヒって言ったその口の形のまんま空気を吸い込んでみてヒって、そしたら口の中が冷たく感じると思うんですね。
その冷たく感じているとこが空気が摩擦しているところです。 これはなかなか面白いですよ。
ハートヘートホーっていうのは喉の奥の方で発音していて、フっていうのは唇で発音していて、そしてヒっていうのは口の中で発音しているっていう風に発音している場所が全く違うんですが、音韻論では同じ H の音として扱うし、
日本語母語合わせにとって同じハ行として扱われているんですね。
実はこのヒっていう音は発音上はシに非常に近いです。
ヒとシ、言われてみればなんとなく近い気がしませんかね。
このことはね、方言によって布団を引くのか布団を敷くなのか、あるいは数字の7のことをシチというのかヒチというのかみたいなね、こういう混同があったりするんですけど、これはヒとシの発音が非常に近いからということです。
でね、このハ行の発音はね、母語だと本当に気にしてないので、外国語学習の時とかはちょっと注意しなきゃいけなくて、
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例えばね、英語でヒっていう時に、日本語のヒで言っちゃうと、むしろシに聞こえるかもしれないですね。
ちゃんと喉の奥で摩擦をしてヒっていう風に言わないと、もしかしたら通じないかもしれないですね。
あるいは誰っていう意味のフーっていうのも、今唇を使ってフーって言いましたけど、そうではなくて、喉の奥で摩擦を作ってフーと言わないともしかしたら通じないかもしれません。
母語っていうのは本当に無意識に身についているものなので、外国語学習の時はね、ちょっと気をつけてみてください。
というわけで、今回は日本語のハ行の音についてね、特に音韻論という分野から見てみました。
ぜひ関連トークのこのハ行の歴史のトークもね、聞いていただけたらと思います。
というわけで今回はここまでということで、また次回お会いしましょう。ごきげんよう。