1. 志賀十五の壺【10分言語学】
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2021-07-23 10:23

#337 「番組作り」の言語学(名詞抱合) from Radiotalk

今回音質があまり良くないかも、すみません

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育
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始まりました、志賀十五の壺。
みなさんいかがお過ごしでしょうか。志賀十五です。
今回のトークのテーマは、
名詞抱合ということでやっていこうと思います。
単に抱合と言われることもありますね。
英語だと noun incorporation か、
あるいは単に incorporation と言われることもあります。
これは専門用語ですね。
一般に使われることは、
言語学的な意味で一般的に使われることはないと思います。
どういう現象かというと、
一言で言えば、
名詞を動詞の中に入れ込んでしまって、
新しい動詞を作るみたいなものです。
これはね、日本語にあるかと言われると、
その話はおいおいやっていこうと思うんですけど、
日本語には基本的に名詞抱合はないと言っていいと思います。
どういった言語にあるかというと、
よく見るのは、
北米のイロコイ語族っていうのがあって、
っていう言語のグループがあって、
そこのモホーク語っていうのが名詞抱合を持っている言語として、
よく挙げられるんですよね。
あんまり皆さんには馴染みないと思うんですけど、
あるいはオセアニアの言語でも、
この名詞抱合っていう原種は見られるし、
日本でもアイヌ語は名詞抱合を持っている言語と言われています。
どういうことかというとね、
よくあるパターンとしては、
まず、元となる多動詞文があると。
つまり、家を建てるみたいなものがあって、
その家っていうのが、
動詞の建てるっていうのと一緒くたになっちゃって、
私は家建てる、あるいは家建てするみたいな感じになって、
一つの動詞となるということなんですね。
さっき日本語にはないと言いましたけど、
ちょっとごくわずかあるといえばあって、
旅立つとか腰掛けるかな。
特に腰掛けるの方は腰を掛けるっていう、
この腰っていうのが動詞と一緒くたになって、
腰掛けるになっているっていうことなので、
名詞抱合と言ってよさそうなんですけど、
他の模倣句語とかオセヤニアの言語とかアイヌ語と比べると、
生産的とは言えませんよね。
つまり、どんな名詞と動詞の組み合わせでも言えるわけではなくて、
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どっちかというと腰掛けるでも一つの単語になっていると言った方がいいんではないかと思います。
さっきの例みたいに、家建てるとはちょっと言えないですよね。
家を建てるでやっぱり名詞と動詞で別個の単語としてしか考えられないと思います。
ただ日本語の場合も、昔の日本語にさかのぼれば名詞抱合っぽいものはあって、
例えばね、助けるとかですね。
この助けるのたっていうのは語源としてはてと一緒なので、
てというのはある単語の一部になるときにたという音になることがよくあって、たずなとか。
それと同じで、助けるというのは名詞と動詞の足し算で一つの動詞ができています。
だから手助けするというのはてというのが二回続いていることになっているんですね。
あるいは守るというのも名詞抱合っぽくて、
守るのまというのはこれもともとめなので、
これもめというのはある単語の一部になるときまぶたとかまつげとかまなこみたいにまという音に変わるので、
守るのまというのもめから来ているんです。
ただ助けるにしろ守るにしろ、これでも一単語としてみなされているのではないかと思います。
何か元となる他動詞文があって、その目的語を動詞の中に入れているって感じではないですよね。
ただ現代日本語にも名詞抱合とは言えないけど、かなりそれに近いというものはあります。
それが今回のタイトルになっている番組作りみたいなものですね。
これは確かに番組という名詞と作るという動詞の足し算で番組作りという一つの新しい単語ができているので、
そういった意味では名詞抱合っぽいんですが、
名詞抱合というのは普通出来上がったものは動詞に限られるので、番組作りというのは出来上がったものは名詞ですよね。
つまり名詞と動詞の足し算で動詞が出来上がるのが名詞抱合なのに対して、
番組作りみたいなものは名詞と動詞の足し算で名詞が出来上がってしまっているということです。
ただイメージとしては名詞抱合というのは番組作りみたいなものだと考えていいと思います。
あるいは魚釣りとかもそうですよね。魚を釣るから魚釣りとか。
物を知っているから物知り。
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あるいは魔法を使うから魔法使いみたいになりますよね。
今挙げた例は全て目的語が動詞と一色たになっているものですよね。
つまり大がつく名詞が動詞と一色たになっています。
番組を作るから番組作り。魚を釣るから魚釣り。
しかし 日本語の名詞抱合っぽいものは 一色たになれるものは 実は目的語に限ったことでは ありません。
大人買いと言った時に これは大人みたいに買うということです。
大人を買うということでは ありません。
あるいは板挟みと言った時に これも板を挟んでいるわけではなく 板に挟まれていることです。
大人買いや板挟みのように 大がつく名詞ではなく 目的語でなくても 日本語は名詞抱合みたいな現象が 観察されることです。
数で言うと 目的語が多いのではないかと思います。
実際 他の言語で見られる 名詞抱合でも 目的語が動詞と一色たになるパターンが 最も典型的であると言われています。
話は名詞抱合の方に戻ります。
名詞抱合の特徴として 動詞に組み込まれた名詞は かなり特定性が薄れると 言われています。
例えば 冒頭あげた例で言うと 家を建てる みたいに 多動詞文で言った場合 何か特定の家を建てる みたいな意味になります。
家建てするとか 家建てる みたいな言い方になると この家っていうのは 何か特定の家を指しているわけじゃなくて 全体の意味としては 習慣的な意味になるみたいなんですね。
なので 名詞抱合を使って 私は家建てする みたいな言い方をすると 全体の意味としては 大工だぐらいの意味になるそうです。
意味としても その目的語の特定性みたいなものは薄れるんですけど 文法的にも目的語の自律性みたいなものが 独立性みたいなものが弱まってしまって むしろ動詞の一部みたいになってしまうんですね。
そうなると 名詞抱合の文っていうのは 典型的には 自動詞文になることが多いようです。
家建てする で これで一単語なので 家っていうのはもう 自立した目的語とは見なせないということですね。
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こういうふうに名詞抱合って かなり面白い現象なんですけど 少なくとも現代日本語ではあまり生産的ではないし 皆さんが学ぶような言語であるかっていうと もしかしたらあんまりないかもしれませんね。
ちなみに僕が作っている 人工言語であるねじ葉語には 名詞抱合はあります。
典型的な目的語を動詞と一色たにして 一つの動詞となる 自動詞文となるみたいなものを作っています。
その人工言語の文法書のURLを 詳細欄に貼っておくので 最近ちょっと更新してないな そういえば。
もしそちら興味のある方いらっしゃったら そちらも見ていただけたらと思います。
というわけで 今日のトークは番組作りみたいなね 感覚としてはそんな感じの名詞抱合という現象についてお話しいたしました。
よろしかったら他のトークも 聞いていただけたらと思います。
ではまた次回のトークでお会いいたしましょう。
ごきげんよう。
10:23

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