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2020-11-09 04:13

#211 森鷗外『舞姫』朗読 9/9 from Radiotalk

「あかご」ですね…

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#落ち着きある #朗読
00:00
四階の屋根裏には、エリスはまだ居ねずとおぼしく、
景然たる一世の日、暗き空に透かせば明らかに見えるが、
降りしきる詐欺のごとき切片に、
たちまち覆われ、たちまちまた現れて、
風にもて遊ばるるに似たり、
戸口に入りしより疲れを覚えて、
身の節の痛み耐えがたければ、
羽うごとくにはしごをのぼりつ、
宝柱をすぎ、部屋の戸を開きて入りしに、
机によりてむつきぬいたりしエリスは振り返りて、
あっと叫びぬ。
いかにかしたまいし、恩美の姿は、
驚きしもうべなりけり、
壮然として死人に等しき我が面色、
棒をばいつの間にか失い、
髪はおどろと乱れて、
幾度か道にてつまづき倒れしことなれば、
衣は泥混じりの雪によごれ、
所々は避けたれば、
我は応えんとすれと声入れず、
膝のしきりに斧のかれて多数に耐えねば、
椅子をつかまんとせしまでは覚えしが、
そのままに地に倒れぬ。
人事を知るほどになりしは、
巣臭の後なりき、
熱はげしくて上事のみいいしを、
エリスが念ごろに見とるほどに、
ある日相沢は立つねきて、
我は彼に隠したる天末をつばらに知りて、
大人には病のことのみつげ、
よきようにつくろい置きしなり、
我は初めて病傷に時するエリスを見て、
その変りたる姿におどるきぬ。
彼はこの巣臭のうちに痛くやせて、
血はしりし目はくぼみ、
灰色の尾は落ちたり、
相沢の助けにて日々の託金には急せざりしが、
この恩人は彼を精神的に殺ししなり、
のちに聞けば彼は相沢に愛しとき、
よが相沢に与えし約束を聞き、
またかの夕べ大人に聞えあげし一択を知り、
にわかに座よりおどりあがり、
面色さながら土のごとく、
我が豊太郎主、
かくまでに我をば欺き魂かと叫び、
その場に倒れぬ。
相沢は母を呼びで共に助けて床にふさせしに、
しばらくして覚めしときは、
眼は直視したるままにて、
傍らの人をも見知らず、
我が名を呼びて痛く罵り、
髪をむしり、
布団をかみなどし、
またにわかに心好きたる様にて、
物を探り求めたり、
母の取りで与うる物をば、
ことごとく投げ打ちしが、
机の上なりしむ月を与えたるとき、
探り見て顔に押し当て、
涙を流して泣きぬ。
これよりは騒ぐことはなけれど、
精神の作用はほとんど全く廃して、
その血なること赤地のごとくなり、
医に見せしに、
03:01
過激なる辛労にて急に怒りし、
パラノイアという病になれば、
治療の見込みなしという、
ダルドルフの転経院に入れんとせしに、
泣き叫びて聞かず、
後にはかの無月一つを身につけて、
幾度か出してはみ、見ては聞きよす。
与が病症を追うば離れぬど、
これさえ心あり手にはあらずとみう。
ただおりおり思い出したように、
薬よ薬よというのみ。
与が病は全く言えぬ。
エリスが生けるカバネを抱きて、
血筋の涙を注ぎしは行くたびぞ。
大人に従いて祈祷の道に上りしときは、
相沢とはかりて、
エリスが母に、
かすかなる卓器を営むにたるほどの資本を与え、
あわれなる強女の体内に残ししこの、
生れんおりのことをも頼み起きぬ。
ああ相沢賢吉賀ごとき両友は、
世にまたえがたかるべし。
されど我が脳裏に、
一点の彼を憎む心、
今日までも残れりけり。
04:13

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