1. 志賀十五の壺【10分言語学】
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2020-11-08 06:43

#208 森鷗外『舞姫』朗読 6/9 from Radiotalk

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#落ち着きある #朗読
00:00
明治二十一年の冬は気にけり。
表町の陣道にてこそ砂をもまけ、
月夜もふるえ、黒捨てる街のあたりは、
徒王寛歌のところは見うめれど、
表の実は一面に凍りて。
朝に戸をあけば、
上凍えし雀の落ちて死にたるも哀れなり。
部屋を温め、かまどに火を焚きつけても、
壁の石をてしし、
衣の面をうがつ北欧パリの寒さは、
なかなかに絶えがたかり。
衿は二三日前の夜、
舞台にてそっと押しつとて、
人にさすけられて帰り越しが、
それより心地安しとて休み、
物食うごとに吐くを、
座りというものならんと初めて心づきしは母なりき。
ああ、さらぬだにおぼつかなきは、
我が身の行く末になるに。
もし誠なりせば如何にせまし。
今朝は日曜なれば家にあれど、
心は楽しからず。
衿は床に伏すほどにはあらねど、
小さき鉄炉のほとりに椅子さし寄せて、
言葉少なし。
この時戸口に人の声して、
ほどなく包中にありし衿が母は、
郵便の書状を持てきて世に渡しつ。
見れば見覚えある藍沢が手なるに、
郵便切手はプロシアのものにて、
化身はベルリンとあり。
いぶかりつつも開きて読めば、
富のことにてあらかじめ知らするに、
吉仲利氏が。
呼べここにつかせらりし、
尼方大人につきて我も来たり。
博の汝を見いまほしとの賜うに。
戸口よ。
汝が名誉を回復するも、
この時にあるべきぞ。
心のみ急がれて、
用事をのみ言いやるとなり。
読み終わりて茫然たる表持を見て、
衿ゆう。
故郷よりの文なりや。
悪しき頼りにては読も。
彼は例の新聞社の報酬に関する書状と思いしならん。
否、心にな欠けそ。
恩みも直しる藍沢が、
大人と共にここに来て、
我を呼ぶなり。
急ぐと言えば、
今よりこそ。
河行一人号を出しやる母も、
確は心を持ちいじ。
大人にまみえもやせんと思えばならん。
エリスは病を勤めて立ち、
上襦袢も極めて白きを選び、
丁寧に姉妹を着し、
ゲイロックという二列ぼたんの服を出して着せ。
衿飾りさえ、
よがためにおのずから結びつ。
これにて見苦しとは、
誰もえい言わじ。
我が鏡に向きて見たまえ。
何ゆえに各不幸なる趣を見せ賜うか。
我も物共に如何欲しきを。
少し形を改めて、
否、各衣を改め賜うを見れば、
何となく我が豊太郎の君とは見えず。
また少し考えて、
03:00
よしや風紀になり賜う日はありとも、
我をおば見捨て賜わじ。
我が病は母のの賜うごとくならずとも。
何、風紀。
与は微笑しつ。
政治社会などに遺伝の望みは立ちしより、
行くと背をかへぬるを。
大人は見たくもなし。
ただ年久しく別れたりしともにこそ、
あいにはいけ。
エリスが母の呼びし一頭泥酒は、
輪下に帰しる節銅を窓の下まで着ぬ。
与は手袋をはめ、
少し汚れたる街灯を背に置いて、
手を抜通さず棒を取りて、
エリスに接吻して、
鷹殿をおりつ。
彼は凍れる窓をあけ、
乱れし髪を柵風に吹かせて、
与が乗りし車を見送りぬ。
与が車をおりしは、
カイゼルホーフの入口なり。
門者に秘書官相沢が部屋の番号を解いて、
久しく踏みなれぬ大理石のはしごをのぼり、
中央の柱にプリウシ露を覆えるゾフアを据えつけ、
正面には鏡を立てたる前望にはいりぬ。
街灯をば此処に手ぬぎ、
渡殿を伝えて部屋の前まで行きしが、
与は少し知中したり。
同じく大学に在りし日に、
与が貧困の法制なるを激笑したる相沢が、
今日はいかなる表持して出向うらん。
部屋に入りて相対してみれば、
形こそ急に比べれば、
越えてたくましくなりたれ、
依然たる快活の気象、
我が執行をも様で意に介せざり来とみう。
別語の状を採受するにも意図もあらず、
惹かれて大臣に営つし、
委くせられしは、
ドイツ語にて記する文書の急を要するを翻訳せよとのことなり。
与が文書を受領して、
大臣の部屋を入れし時、
相沢は後より来て、
与と昼下を共にせんといいぬ。
食卓にては、
彼を置くといて、
我を置くこといき、
彼が政治はおおむね平滑なりしに、
寛佳作気なるは、
我が身の上なりければなり。
与が教育を開いて物語し、
不幸なる越歴を聞いて、
彼はしばしば驚きしが、
なかなかに世を責めんとはせず、
帰りて他の凡庸なる諸聖輩を罵りき。
されど物語の終わりし時、
彼は色を正して潔むるよう、
この一談のことは、
もと生れながらなる、
弱き心より入れしなれば、
今さらに言わんも甲斐なし。
とはいえ、
学識あり才能ある者が、
いつまでか一少女の女王にかかずらいて、
目的なきなりわいを成すべき。
今は尼博も、
ただドイツ語を利用せんの心のみなり、
己もまた博が当時の面感の理由を知れるがゆえに、
06:01
強いてその精神を浮かさんとはせず、
博が心中にて、
極非物なり何度思われんは、
方優に理なく、
己に尊あればなり、
人を進むるはまず、
その能を示すにしかず、
これを示して博の信用を求めよ。
また彼の少女との関係は、
獣霊彼に性ありとも、
獣霊情報は深くなりぬとも、
人材を知り手の恋にあらず、
慣習という一種の惰性より生じたる交わりなり、
意を決して立てと。
これ、そのことの概なりき。
06:43

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