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2023-06-25 51:17

漫画「ZERO」と「僕らの変拍子」(冬目景)

漫画家・冬目景さんの初期作品「ZERO」と「僕らの変拍子」についてお話しました!


・我は世界の壊滅を願う。あまりにも危険な物語「ZERO」

・ほろ苦い青春とあやしい煙草「僕らの変拍子」


冬目景(wiki)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%AC%E7%9B%AE%E6%99%AF


ZERO(wiki)

https://ja.wikipedia.org/wiki/ZERO_(%E5%86%AC%E7%9B%AE%E6%99%AF%E3%81%AE%E6%BC%AB%E7%94%BB)


ZERO(amazon)

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00:01
皆さん、こんにちは。 自然を愛するウェブエンジニア、セミラジオです。
今日は、漫画家冬目景さんの初期作品
「ZERO」と「僕らの変拍子」について お話ししたいと思います。
今回は、冬目景という漫画家さんの初期作品である
「ZERO」と「僕らの変拍子」という作品についてお話ししたいんですけども
「ZERO」は一冊の単行本として、「僕らの変拍子」の方は同じタイトルの短編集の中の一編として収録されています。
できる限りわかりやすくお伝えしたいと思っているんですが、この2作品どちらも非常に思い入れがある作品でして
ちょうどいい距離感で語れる自信がないんですが、いつかお話ししたいと思っていた作品なのでお付き合いいただけると嬉しいです。
ということで、今回は冬目景さんの「ZERO」と「僕らの変拍子」のネタバレが含まれますのでご注意いただければと思います。
まず冬目景という漫画家さんについてなんですが、神奈川県座間市出身の女性作家で
1992年に六畳劇場という短編作品で第11回コミックバーガー新人漫画賞の佳作を受賞。
同年の月刊コミックバーガー第18号に掲載されデビューされています。
月刊コミックバーガーという雑誌、ご存知ない方も多いんじゃないかと思うんですが
僕もこの雑誌を買ったことはないんですよね。
コミックバーガーは高段車系列のスコラという会社が出していた漫画雑誌だったんですけども
おそらく雑誌の売上があまり良くなかったからだと思うんですが
旧館と再出発を繰り返した雑誌で、1996年にはコミックバーズに雑誌名を変えて再出発しています。
その後スコラの経営が傾いたことでソニーマガジンズという出版社に編集部ごと移籍。
さらにソニーマガジンズもコミック事業から撤退を決めたことから現当社に移籍して
その後もウェブマンガサイトに携帯を変えたりいろいろありつつ
今現在は現当社のコミックブーストというウェブマンガサイトとして存続しているようです。
そんな出版界の歴史もあるわけなんですが
03:01
1992年当時は紙媒体の雑誌として存在していた月刊コミックバーガーから
東名圭さんは漫画家としてのキャリアをスタートされたわけです。
作風なんですが多摩美術大学の油絵を専攻されていたということで
とてもデッサン力が高くて端正な絵を描かれる方です。
初期の作品のカラーイラストはアクリルと水彩を併用して描かれてたみたいなんですが
油絵っぽいザラザラした紙の質感を残した表現で描かれていて
漫画のイラストとしてはかなり異彩を放ってましたね。
今はもっとフラットな描写をされてるんですけど
この初期のカラーイラストのザラザラした質感とか描き方って
日本の漫画の表現の中でもかなり独自性が高く異質だったんじゃないかなと思います。
この辺りの初期のカラーイラストは東名圭さんの羊の歌という画集に収められています。
東名圭さんは多摩美の漫画研究会に所属されていたそうで
後輩には同じく漫画家の三浦博明さんや玉置弁教さんもいて
一緒に同人誌を作ったりしていたようです。
物語の作風で言うと、いろんなジャンルを描かれる方なので一言で言うのは難しいんですが
特に今回ご紹介するゼロと僕らの変表紙という作品では
10代の少年少女の生々しい感情を繊細に、時に非常に破壊的かつ過激な形で
えぐるように描き出す、自分的にはそういった作風かなぁと思っています。
僕がこの東名圭さんの作品に出会ったのも10代の頃でして
当時通いつめていた、今はもうなくなってしまった薄暗い本屋で
ゼロと僕らの変表紙の単行本を見つけたんですよね。
僕らの変表紙は短編ですしゼロは短期集中連載ということでコンパクトにまとまっているんですが
東名圭さんというと作品を連載中断することが多い人という印象がありました。
僕は90年代中盤から2000年代の前半にかけて東名圭さんの作品を集中的にウォッチしてたんですけども
その時期に黒金という時代劇の漫画とイエスタデイを歌ってというラブコメ要素のある青春群蔵劇の漫画を
東名圭さんが並行して連載してたんですけど、まあ単行本が出ないんですよ。
06:06
基本が不定期連載なんですよね。で、完結していない不定期連載の作品が複数ある中で
違う作品の連載を始めたりするんですよね。いつになったら単行本出るんだろうという感じで待ってられなくなっちゃうんですよね。
そういうわけで東名圭さんの作品については僕らの変拍子とゼロだけを手元に置いて
最近の東名圭さんの動向についてはかなり長きに渡ってチェックしてなかったんですよ。
で、今回ゼロと僕らの変拍子を取り上げるにあたって調べてみたんですが、自分的にはかなりびっくりするような状況になってまして
東名圭さんはさっき上げた作品以外にもいろんな作品を始めてはどれも不定期連載というスタイルを取られていたんですが
なんとそのほとんどすべてをちゃんと完結させてたんですよ。これ結構びっくりしまして
さっき上げた時代劇漫画の黒金とかいつまで経っても単行本が出ないので、もう続きが書かれることはないんだろうなぁと思ってたんですが
これもきっちり完結してるんですよね。黒金は1993年、もともとは東名圭さんが読み切りとして書き
雑誌に掲載された作品を第一話として連載がスタートしたんですが、2004年に救済が発表されたんですね
ところが最後の掲載から約13年後に黒金会とタイトルを改め連載を再開するんですね
そして2020年まで掲載し堂々の完結と至りました。最初の読み切り掲載から25年以上かけてきっちり完結させてるんですよ
単行本は黒金と黒金会を合わせて25年で全10巻です。すごいなと思いましたね
イエスタデイを歌っての方も最初の雑誌掲載が1998年、そして2015年まで15年以上不定期連載を経て完結しました
単行本は全11巻です。他にもいろんな作品を不定期連載しながらそのほとんどをきっちり完結されてるんですよね
あまりこういうテンポで作品を発表し続ける漫画家さんって多くないと思うんですよね
コンスタントに制作するか書けなくなってしまうかのどちらかが多い印象があるんですけど
09:07
不定期連載を続けながらどれだけ時間がかかっても一作一作完結させていくのが遠目計算のスタイルなんですね
こういうテンポになる理由としては全ての作画をご自身で行っているということがあるようです
アシスタントさんに振るのは基本的にスクリーン等の切り張りだけで、作画については背景を含めてご本人が行っているそうで
漫画の背景は多くの漫画家さんがアシスタントさんにやってもらってると思うんですが
遠目さんはご自身で描かれているということなんですね
結果的に多くの漫画作品とは単行本が出るペースが変わってくるわけなんですが
こういう作家さんがいるんだなぁと感覚させられた思いがしました
そのあたりが漫画家としての遠目計算の僕から見た印象になります
続いては遠目計算の作品ゼロについてお話ししたいんですけども
これはいろんな意味で非常に危険な作品でして
このゼロも僕らの片拍子もなんですけど
作品の登場人物が非常に反社会的な行動をとるんですね
最初にお伝えしておきたいのは
僕自身はそういう行動を肯定する意図は決してないです
ただ作品として表現されたものに心を揺さぶられてはきました
なのでそういうふうに捉えていただけるとありがたいです
でゼロなんですが
これは主人公が通う高校で起きたある事件を描いた作品です
コミックバーガーの1995年2月号から4月号まで
全3回が連載された遠目計算初の長編作品です
どんな話かなんですが
ある日主人公の男の子が全校周回が行われている体育館に遅れていくと
みんな床に倒れて絶命してるんですね
いきなり
生徒はみんな床に倒れてピクリとも動かなくなっていて
教師は教団に突っ伏してやはり動かなくなっているわけです
12:01
その場で生きているのは主人公ともう一人
マオヨーコというその学校の元生徒でした
マオのマは空間のカンという字
オは尻尾のオですね
このマオヨーコがとある詩を朗読しながらゆっくりと現れるんですね
我は御身を呪う
言葉はすでに無益なるのみ
我は世界の壊滅を願う
と言いながら
これ中原忠也の地獄の天使という詩を引用しているんですよね
この段階でまだ6ページ目なんですけど
すでにタダ事でない雰囲気が漂っているわけです
結論から言うと生徒や教師を殺したのはこのマオなんですね
彼女はなぜそんなことをしたのかなんですけども
ここでお話は事件の2ヶ月前に遡ります
2ヶ月前の時点ではマオは高校に転校してきたばかりでした
で同じ学校に主人公やその友人も通っていたわけです
この作品主要人物はマオと主人公を含めて
全部で4人しかいないので
最初に触れておきますね
主人公は生徒会初期の釘町君という人で
割と平凡なこれといって特徴のない普通の男の子という感じの人です
で生徒会長の坂爪さんという女の子がいまして
この人はその高校の非常に厳しい校則を窮屈に感じていて
校則改変の提案をしようと計画を練っていたりします
強い意志と行動力を持った人なんですね
で密かに主人公の釘町君のことを好きだったりします
釘町君は生徒会長が自分のことを好きだということを知りつつ
ちょっとどうしたらいいかわからない
そんな感じでいます
あと友人のヤシロ君という背の高い男子生徒もいて
この人は陸上部で活躍していたんですが
人体を痛めたことでスポーツの道を進むことを断念し
受験勉強に取り組んでいます
このように特に真央さんと主人公の釘町君を中心に
話は進んでいくことになります
転校してきたばかりの真央なんですが
他の生徒と交流せず学校内で孤立しています
というのも真央が転校してきた理由が
前にいた学校で人情事件
刃物で人を傷つけたことが原因だったようなんですね
15:01
なのでみんな怖がって話しかけないし
本人も打ち解けようとしないわけです
釘町君もそんな噂を聞いて
たまに学校ですえ違う真央を遠巻きに見るだけで
接点はありませんでした
ただこの2人真央と釘町君にある時接点が生まれるんですね
ある日釘町君が学校の帰りに商店街を歩いていると
文房具店の前に人だかりができてるんですよ
それは子どもを集めるために置かれた
アーケードゲームの筐体で子どもたちがワイワイ集まって
楽しそうにゲームしてるんですね
でそこから少し離れたところに立って
その様子を見てるのが真央だったんですよ
でその真央が何とも言えない表情で
ゲームやってる子どもたちを見てるんですね
寂しそうに羨ましそうに片手に持ったパンとか
かじりながら見てるんですよ
今回読み返してみて
パンかじってる真央の表情を見ているだけで
なんか泣きそうになりましたね
10代の頃に読んだ時には
いだかなかった感情が込み上げてきました
このシーンを見て思ったのは
真央はこのゼロという作品の中で
そういう人間の寂しさとか
生々しい感情を投影するキャラクターだということでした
そしてまた真央は作者が生きる中で抱いていた
あらゆる生々しい感情を投影する存在でも
あったんじゃないかなと思います
このシーンのような寂しさだったり
暴発してしまう怒りだったり
憎悪だったり執着だったり
そういうふつふつとした感情が
真央の表情や行動から伝わってくるんですね
そういう感情のきびがすごく丁寧に描かれていて
それが僕がこの作品を何度も読み返している理由かもしれません
漫画を描くというのは
そういう溜め込んできた感情を
キャラクターの表情や行動、セリフに込めて
自分の中からアウトプットしていける
そういう側面があるんじゃないかなと思っています
話を戻すと真央は自分を見てる主人公
釘町くんに気づくんですね
釘町くんはやべという感じで
黙って通り過ぎようとするんですけど
そこで真央に声をかけられるんですよ
ねえ100円貸してよって言われるんですよね
18:02
いきなり
別にかつあげされてるわけじゃなくて
このゲームやりたいんだけど
今お金持ってないから100円貸してって言うんですね
釘町くんは戸惑いつつも
別にいいけどという感じで100円渡すんですけど
対戦しようよと真央に誘われるんです
で、釘町くんとしては
人情事件を起こしたという真央の噂を思い出して
警戒するんですけど
釘町くんが黙っていると
真央がまたふっと寂しそうに笑って
急いでるって言うんですね
で、釘町くんもその表情を見て
あ、こいつそんなに悪いやつじゃなさそう
という感じで一緒にゲームで対戦するんですよ
で、ひとしきり遊んでお金返すからということで
真央の住んでいるアパートに行くことになるんですね
ガランとした殺風景な部屋で
必要最低限の家具と
あとパソコンが置いてあるだけなんですけども
真央によるとパソコンは唯一の趣味ということで
これが後で伏線になったりもしています
近くに真央の両親や妹も住んでるんですが
真央は一人でアパート暮らしをしてるんですね
で、別れ際に釘町くんは真央に声をかけます
なんていうかいつもそういう風にしてなよ
その髪とかもさ
真央さんせっかく綺麗なんだし
と言うんですね
で、真央はハッとした表情をするんです
少し照れたような感じもあって
で、真央が答えて言うには
この髪は隠してるの
私顔のこっち大きな傷があるの
と言うんですね
真央は顔の左半分を髪で隠してるんですけど
それにはそういう理由があったということで
続けて真央は子供の頃事故でね
前の学校での噂聞いてるでしょ
それこれが原因なの
ということを口にします
真央が孤立に至った背景が語られるわけです
すごいことに真央と主人公が交流をするのは
唯一この時だけなんですね
あとは本当に殺伐とした状況の中での
会話しかないんですよ
ただこの時の描写で
真央にとってこの交流が特別なものだったことが
感じられるようになってます
幼い頃の事故によって
容姿にコンプレックスを持った真央にとって
21:01
和やかな雰囲気の中で
真央さんせっかく綺麗なんだし
と言われたことは
とても大きなことだったんですね
この時の交流によって
真央は釘町君に対して
親愛の情を持つことになるわけですが
親愛の情は裏返ると
執着にも憎しみにもなり得るということを
この真央というキャラクターは
恐るべき行動で読者に叩きつけてくるんですね
周囲に対して壁を作っていた真央ですが
その反面いつも寂しさを抱えていました
ある時路上でバイオリンか何かを弾いている
長篠ミュージシャンの演奏を
真央は少し離れたところで聴いていました
でまた寂しげにパンとかをかじってるわけです
その時同じ学校に通うある男女3人のグループが
真央を見かけて
恐る恐る声をかけてくるんですね
で真央はそのグループと交流を持つことになるんですが
ちょっとこのあたりから雲行きが怪しくなってきます
このグループ割と危ないことに
手を出している人たちだったんですね
屋さんからドラッグ買ったりしていて
である時その3人が大胆にも
学校の教室でひそひそ話をしてるんですが
釘町くんはそれをたまたま聞いてしまいます
その内容というのは
いつもの屋さんがあるものを運んでほしいと
頼んできていると
その屋さんが言うには
中身はいつものドラッグだと言うんですね
車礼はたんまり払うから頼まれてくれないかと
そういう妥信が来ているわけです
明らかに怪しいんですね
で彼らも警戒するんですが
じゃあ真央にやらせようかということを言い出すんですね
真央なら俺らが頼めばやってくれると
グループと真央の力関係が感じられる
嫌なシーンなんですよね
真央は完全に寂しさにつけ込まれて
いいように利用されてるんですよ
でその話を聞いてしまった釘町くんは
その場を立ちそろうとするんですけど
見つかって呼び止められるんですよね
で釘町くんは
お前らそんなのやめとけよと言うんですけど
彼らは耳を貸さないわけです
さらに厄介なことに釘町くんは
釘町くんでこのグループに弱みを握られてるんですよ
過去に釘町くんはこのグループとつるんでいて
相当危ないことにも手を出していたみたいなんですね
24:02
このグループの人が忠告しなかったら
警察のお世話になっていたような
そういう局面もあったみたいで
なのでしっかり口止めされちゃうんですね
このことを真央に言うなと
釘町くんという人は決して正義感でも
清廉潔白な人でもないんですね
で真央はそのグループにそそのかされて
運び屋を引き受けるわけです
そして釘町くんは真央に忠告することもできなかったんですが
家でじっともしていられなくて
当日取引の現場に来てしまいます
すごくどっちつかずな行動なんですけど
人間臭いなぁとも感じますね
で真央はその場所に現れた取引相手から紙袋を受け取るんですが
待ち伏せていた警察官に取り押さえられるんですね
釘町くんは真央に駆け寄ろうとするんですが
俺に何ができると結局何もできずに
その場に立ち尽くすことしかできないんです
さらに真央はそうやって結果的に
釘町くんが自分を見捨てたことも
はっきり目にしてしまうんです
真央が受け取った紙袋に入っていたのは
ドラッグではなく拳銃でした
地元の屋さんが高校生をそそのかして
物を運ばせていたという話だったんですね
私は何も知らなかった
友達に頼まれただけと真央は言うんですが
過去に認定事件を起こしていたことから
取り合ってもらえません
そして真央は自主退学に追い込まれることになります
アパートも引き払って
だけど彼女は戻ってきたんですね
その学校に大勢の生徒が床に倒れて動かない中で
釘町くんと真央は言葉を交わします
どうしてという釘町くんに真央はあっけらかんと
私がやったのって言うんですね
この後のセリフ少し読みますね
換気口からガスを流したの大量にね
全校集会で全校生徒が
この体育館に集まっていた
知り合いの衛生研究所の人に頼んだの
その人親切で製薬会社の人に頼んでくれた
知り合いと言っても名前も顔も知らない人だけどね
って言うんですね
真央はパソコンが唯一の趣味という下りがあったんですが
そのパソコンを使って
誰かとチャットをしているシーンが描かれていました
このゼロが連載された1995年は
まだ家庭向けのインターネットサービスというのは
27:00
一般的ではなかったので
おそらくパソコン通信をイメージしたものだったと思います
その匿名のチャットで仲良くなった人に頼んで
やってもらったんだとそう言うんですね
さらにガスに関しては
全校集会に遅れることで回避した
釘町くんだったんですが
脅威はそれだけじゃなくて
釘町くんが通うこの学校は
拘束なんかについては厳しい
古い考えの学校なんですが
設備だけはやけに充実していて
お掃除ロボットや警備ロボットを導入してるんですが
これらのロボットも真央によってプログラムを書き換えられて
釘町くんを殺そうとする殺人ロボットとして
襲いかかってくるんですよ
この漫画はかなり強烈な苦味のある青春物でありつつ
パニックホラー要素もあるんですよね
お掃除ロボットがチェーンソーを持って襲いかかってきたり
警備ロボットが実弾を発砲してきたりするんですよ
めちゃくちゃ怖いんですよね
で、釘町くんは生徒会室や屋上にいて難を逃れた
生徒会長の坂爪さんや友達のヤシロくんと
襲ってくるロボットから必死に逃げ回るわけです
学校の外にも逃げようとするんですが
学校内のシャッターを封鎖されて逃げられなくなっちゃうんですね
真央がその状況を作り出したということなんですよね
ロボットから逃げ延びて安全な部屋で一呼吸ついた時
どうして真央はここまでやるのかという話になります
そこで坂爪さんが
彼女はそこまでこの学校を恨んでるの?
だからってこんな
と言うんですが
そこでヤシロくんが真を食ったことを言うんですね
いや、むしろその逆かもしれない
何かを求める気持ちが強ければ強いほど
その反動も大きくなる
欲しくても手に入らないものだと知った瞬間から
それは否定に変わり憎しみに変わるんだ
俺は陸上がそうだった
と言うんですね
自分が一生をかけて打ち込もうと思っていた陸上を
続けることができなかったヤシロくんは
真央の気持ちをそういう風に察するわけです
そんなヤシロくんですが
3人でロボットから逃げるうち
その彼が陸上をやめざるを得なくなった
足の不調が再発して走れなくなってしまいます
そこでヤシロくんは他の2人を先に行かせて
ロボットを食い止めようとするんですが
警備ロボの銃弾によって致命傷を受けてしまいます
ヤシロくんは差し違えるかのように拾った武器を使って
30:03
警備ロボを破壊することには成功するんですが
残ったお掃除ロボのチェーンソーによって
とどめを刺されてしまいます
友人を殺された釘町くんは激怒して
お掃除ロボと戦おうとするんですが
泣きながら止める坂爪さんに引っ張られて
命からがら校長室までたどり着きます
で校長室にはガラスの窓がありまして
坂爪さんはこの窓を壊して外へ逃げようよと言うんですけど
釘町くんは俺はあいつに会うよと言うんですね
坂爪さんには会ってどうするのって普通に突っ込まれるんですけど
釘町くんもわかんねえって正直に言うんですね
わかんねえけどなんか会わなきゃいけない気がすると言うんです
釘町くんは魔王がこういう行動を起こした原因の一端は
自分にあるというふうに思ってるわけですね
で釘町くんは窓を椅子で叩き割って
坂爪さんに逃げろと言うんですが
坂爪さんは釘町くんと一緒じゃなきゃやだ
一人で逃げるくらいなら釘町くんと一緒に戦うよと言うんです
で釘町くんは校長の趣味の模造刀を持って
坂爪さんと二人で魔王の祭放送室に向かうんですが
そこには魔王はいませんでした
ちょっと片透かしをくらった感じになるんですね
放送室にはたくさんのモニターがあって
そのうちの一つは体育館の様子を映していました
坂爪さんはそこで初めて体育館の床に倒れた
たくさんの生徒の様子を目にして
ぎょっとした表情をするんですけども
でおもむろにタバコの箱を取り出して吸い始めるんですよ
精神安定にどう?と言って
釘町くんも一緒にタバコを吸うんですけど
生徒会長の坂爪さんはよくこっそり生徒会室でタバコを吸っていたそうで
釘町くんもそうですけど
坂爪さんも優等生でもなければ
清廉潔白な人でもないんですよね
でも分かりやすく問題児という感じの人でもなくて
周りには普通に見せてるんだけど
心に鬱屈や葛藤を抱えている子たちなんですよ
この作品に出てくる一人一人がそうで
だから感情移入できるのかもしれないですね
で魔王は逃げたのかな?という釘町くんに
ヤシロくんの言ったことが当たってるならきっと逃げないよ
と坂爪さんは言います
33:00
ヤシロくんの言ったことというのは
何かを求める気持ちが強ければ強いほど
その反動も大きくなる
欲しくても手に入らないものだと知った瞬間から
それは否定に変わり憎しみに変わるんだ
という下りですね
坂爪さんは続けて言います
だって彼女はやっとこの学校を手に入れたんだもん
ここは今や彼女のお城なんだよ
その直後不意をつかれた坂爪さんは
背後からお掃除ロボのチェーンソーの直撃を食らってしまいます
釘町くんはもぞうとうでお掃除ロボを破壊するんですが
坂爪さんの傷は明らかに致命傷で
なすすべもなく亡くなってしまいます
ヤシロくんに続き坂爪さんも
魔王のロボットにやられてしまったわけです
学校に残るのは魔王と釘町くんだけになりました
釘町くんは折れて短くなった刀を手に
怒りを込めて叫びます
魔王どこだ
この学校にはもう俺とお前しかいねえ
お前のロボットも死んだ
釘町くんは魔王を呼びながら手当たり次第に
教室の扉を開けて回るんですが
そのうちの一つで魔王は釘町くんを待っていました
この事件を起こした時点で
魔王はずっとジャケットとジーンズという
出出しだったんですが
この時の魔王は在学中と同じセーラー服を着て
教室で一人たたずんでいたんですね
どうしたの?釘町くん
帰らないの?もう放課後だよ
そんな風に何事もないように語りかけてくるんですね
釘町くんはそんなふざけた態度を取る魔王に激行して
刀で魔王を一思いに刺そうとするんですが
その勢いで魔王の髪が乱れて
髪で隠れた魔王の顔の傷を見てその手を止めます
思い留まった釘町くんだったんですが
魔王はそんな釘町くんの手に自分の手を添えて
釘町くんの持った刀を自分の胸に
深々と突き刺すんですね
どうしてなのか
魔王は誰かが強い憎しみを持って
自分を殺しに来てくれるのを待ってたと言うんですね
釘町くんと学校への執着を
魔王はそういう形でしか決着させることができなかった
少なくとも本人はそう感じていた
ということかもしれません
釘町くんは坂爪さんの遺体を担いで
魔王によってロックを解除された正面玄関から
学校の外へ脱出するんですが
36:01
そこで学校に仕掛けられていた爆弾が爆発して
校舎全体が倒壊するとともに
花火が空に打ち上がります
この花火はここまで触れてなかったんですが
事件の間中仮面をかぶったり
ロボットにコミカルな顔を描いたりしていた
魔王の愉快版っぽい行動を締めくくるものになっています
その様子を唖然と見ながら
釘町くんは静かにつぶやきます
ズリーよ
全部持ってって何も残さないつもりか
という風に物語は終わっていきます
これがゼロという作品です
魔王が取る行動はものすごく極端だったり
現実場内した展開も多いんですが
要素として分解した時の登場人物の心の動きは
説得力を持ってすごく丁寧に描かれていて
心を揺さぶられる作品です
ただお聞きいただいた通りの救いようのない話なので
かなり好き嫌いはある作品かなと思います
ここまで聞いていただいて
ご興味がある方はチェックしてみてくださいね
続いては僕らの変表紙という
透明計算の短編になります
この短編はコミックバーガーの
1994年6月号に掲載されたのが初出になります
こちらの作品はゼロのように
いきなり床に人が倒れていたりはしないんですが
こちらも透明計の作品らしく緊張感のある展開もありまして
ほろ苦さのある青春者という感じで
とても好きな作品なんですよね
主人公は普通高校に通う男子高校生の柳川君という人です
柳川君は彼女もいて仲良く映画とか見に行ったりしていて
割と楽しげに生きているように見えるんですけど
実は彼の人生に一つ影を落としている出来事がありまして
もともと幼い頃からピアノに打ち込んで
音題も目指していたんですけど
交通事故で左手を負傷したことによる後遺症で
以前のようにはピアノが弾けなくなってしまったんですね
作品の冒頭で音楽室に置いてあるピアノの前に座って
鍵盤に指を置こうとするんですけど
アホくさいと言い捨てて
弾かずに音楽室を後にしたりしてるんですね
39:03
ピアノに未練や執着があるんだなというのが
ひしひしと伝わってくるわけです
そんなモヤモヤした気持ちを抱えていながら
淡々と日々を過ごしていた柳川君なんですが
ある日の下校時に潰れたはずの肺病院から
不審な様子のサラリーマンが出てくるのを見つけるんですよ
不思議に思って入ってみると
中は荒れ果てて廃墟じみた感じになってるんですが
奥に行ってみるとそこには一人の女の子がいまして
開校一番に
1G5000円だけどどうする?
って言うんですよ
柳川君は
は?
っていう感じでキョトンとしてしまって
女の子も
あんた何しに来たの?
という感じで話が全然噛み合わないんですが
柳川君の着ている制服を見た女の子は
何かに気づいたような表情をして
これあげる?と言って
箱に入ったタバコをくれるんですよ
唐突にタバコくれるんですよね
で誰にも喋っちゃダメだよ?と言って
その肺病院の奥の方に姿を消すんですね
柳川君は訳がわからないまま
とりあえず病院を出て
家に向かって歩き出すんですけども
よくわからないんですけど
とりあえずもらったタバコを吸ってみるんですよね
でもらったタバコ吸って
何か変な味だなぁとか言ってるんですけども
しばらくタバコを吸いながら歩いてると
何やら柳川君の五感に変化が訪れるんですね
視界がグニャグニャと揺らいで
どこからかピアノの音が聞こえてくるんです
空には不思議な形の不定形の何かが見えるようになって
その何かはどうやら音を視覚化したものみたいなんですね
そして柳川君の思考も徐々におかしくなってきます
あれ?でも変だな
音ってこんな最奇な色してたっけな
ピアノの音はもっと青くて
いや違うな
みたいなことを考え始めちゃうんですね
で、はっと我に返って
何かおかしいぞ
もしかしてこのタバコのせいか?と気づくんです
怪しい女の子にもらったタバコに
幻覚成分が含まれてたみたいなんですね
柳川君はそれに気づいて
やばい犯罪じゃんと驚きつつも好奇心で
とりあえずその一本は最後まで吸っちゃうんですけども
で、次の日とりあえず普通に学校に行くんですけど
屋上で友達と喋ってると
遠くの方に見覚えのある女の子見つけるんです
42:04
それは肺病院にいて
怪しいタバコを柳川君に押し付けてきた女の子で
実は同じ学校の同級生だったんですね
その子は有嶋さんって言うんですけども
で、どうしたかというと
柳川君は有嶋さんを問い詰めます
このタバコを口止めるようなつもりだったんだろう
と言うんですね
肺病院を根白に怪しいタバコを
1g5000円とかで売ってることを
ばらされたくなかったんだろうと
柳川君は誰にも言うつもりもないし
このタバコ返すよと言って
チャラにしようとするんですけど
有嶋さんは
そんなのここで返されても困るよと言って
受け取ろうとしないんですね
返したかったらあの場所まで来なよって言うんですよ
あの場所というのは肺病院のことですね
有嶋さんという子は
こういう主人公を戸惑わせたり翻弄したり
社会的なモラルとかあまりそういうものに縛られない
自分の欲求とかやりたいことを
やりたいようにやるんだという
そういうタイプの人なんですね
で有嶋さんに言われて
仕方なく肺病院に行ってみると
そこには有嶋さんだけじゃなくて
いろんな年代の男女がたむろしてて
みんな怪しげなタバコを吸ってるんですね
僕はダウンはダメなの
働けなくなるから
働くの好きだから僕
と言ってるサラリーマンもいて
味わい深いんですけど
で柳川くんも雰囲気に飲まれつつ
有嶋さんと一緒にまた怪しいタバコを吸うんですね
そうすると有嶋さんが思い出した
そういえば君音楽室でピアノ弾いてたよね
って言うんですね
柳川くんは昔はもっとうまく弾けたよ
と返すんですけども
このあたりの柳川くんの鬱屈とした感じ
なかなか味わい深く描写されています
でそれから柳川くんは頻繁にその肺臆に
入り浸るようになるんですよ
彼曰く別にやめられなくなっているわけじゃなく
有嶋さんと同じで無条件に幸福感が味わえるから
好きなんだとそういうことなんですけども
ただそんな生活にも終わりが訪れることになります
有嶋さんは自分の母屋の店で働いている外国人から
怪しいタバコの原料を買ってたんですけど
その外国人が警察に追われていて
有嶋さんのところにも警察が事情聴取に来るんですね
45:02
で有嶋さんと柳川くんは
二人でそのことについて話し合うんです
あの外国人が捕まったら
芋づるしきに私も捕まるかもと有嶋さんは言うんですが
続けて私喋んないよ君のことって言うんですね
柳川くんは推薦入試決まってるけど
私は学校なんかいつでも辞めてもいいし大丈夫だよ
って寂しそうに微笑んで見せるんですよね
そんな風に言ってくれる有嶋さんに対して
柳川くんが何を言うかというと
ここから急展開なんですが
一緒に逃げようって言い出すんですね
有嶋さんは以前に卒業したら
一緒に南米に怪しいキノコ狩りに行こうよって
柳川くんを誘ってたんですけど
そのこととつなげて何なら南米まで逃げよう
物価が安いから何とかなるって言い出すんですね
何言ってんの混乱してんの
あんたそんなことする必要ないんだっては
という有嶋さんに対して柳川くんはこう返します
このくだりちょっと引用しますね
カッコつけでも何でもないよ逃げたいんだよ
俺もう何もかも嫌なんだ
大学とか推薦とか左手のことも
ピアノみんなうざったい
だから頼むよ有嶋一緒に逃げてくれよ
というんですね
柳川くんが今まで抑え込んでいたいろんな感情が
ここに来て爆発したように吹き出してくるわけです
それを静かに聞いていた有嶋さんは
それもいいかもしれない
荷物取ってくるね駅で待ち合わせしよう
好きだからね柳川くんと微笑みます
で場面変わって駅です
駅のホームで大きなカバンを持って有嶋さんを待つ
柳川くんの姿が描かれるんですが
そこに有嶋さんの姿はありません
有嶋さんは来なかったんですね
柳川くんは例のタバコの箱を握りつぶしながら
わかってる有嶋はわざと来なかったと悟ります
その後有嶋さんの母親の店で働いていた
外国人は捕まったんですが
有嶋さんのことは喋らなかったようで
なんですけど有嶋さんは学校を辞めて
柳川くんの前から姿を消しました
有嶋さんとの日々が終わった中で
柳川くんが向かったのは学校の音楽室でした
ピアノの前に立って
いろんな思いをかみしめているところに
48:00
柳川くんの彼女がやってきて言うんですね
ピアノ弾きなよ
そんなに辛いなら弾けばいいじゃない
そうだよ一人でうじゅうじ悩んでバカみたい
簡単なことだよ
諦められないならやればいいじゃない
左手だって動かないわけじゃないでしょ
思い通りにならなきゃできるようにすればいいんだよ
という彼女とのやりとりがあった後で
柳川くんは推薦入試で入ろうとしていた大学を
故事して音大を目指すことを決意します
決まった推薦断ると後輩に迷惑がかかるんだぞ
という先生に対して
ごめんなさい反省文を書きます
それを大学に提出してくださいと
覚悟を決めたような表情を見せるんです
挫折を味わって以前のように
ピアノを弾けなくなってしまった自分に絶望して
いろいろあったけど柳川くんは最後には
前を向こうとするわけです
順風満帆な人生じゃないけど
それでもできることをやろう
そういう姿勢に心を揺さぶられるんですよね
この短編の最後に柳川くんは
有嶋さんのことを考えます
今頃どうしてるんだろう
あいつのことだからこんな狭い日本
とっとと飛び出して
今頃は明るい太陽の下で
幸せでいるのかもしれない
という柳川くんのモノローグと
南米をイメージした豊かな緑の中に立つ
有嶋さんの絵で
この物語は締めくくられています
ゼロでもいわゆるドラッグが
物語の要素として登場したんですが
僕らの変拍子では
より大きな要素としてそれがありました
遠目系の初期作品には話のお膳立てとして
そういうものが出てくる
という傾向があったんですね
ということでゼロと
僕らの変拍子についてお話ししてきました
思い入れのある作品なので
今回結構長くなってしまったんですが
いかがだったでしょうか
ゼロの方はあまりにも
救いようのない結末の話なので
何度か話すのをやめようかと思いかけたんですが
ただただひどいだけの話じゃなくて
誇張した部分はもちろんあるんですが
登場人物の心の動きや感情が
とても丁寧に説得力を持って描かれていて
やっぱり自分にとっては
とても重要な作品なので
今回ご紹介させていただきました
遠目系さんのゼロと僕らの変拍子
ご興味があればチェックしてもらえればと思います
セミラジオではお便りを募集しています
51:01
概要欄のフォームや
ツイッターのハッシュタグ
セミラジオでご感想いただけると嬉しいです
今日は漫画家遠目系さんの初期作品
ゼロと僕らの変拍子について
お話しさせていただきました
ご視聴ありがとうございました
51:17

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