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2022-01-04 09:28

奇書「マンアフターマン」

架空の生物の進化についての作品を多数、制作してきた生物学者ドゥーガル・ディクソンの著作の中で、作者自身が「好きではない」という奇書中の奇書「マンアフターマン」についてお話しています。

【マンアフターマン】
https://blog.goo.ne.jp/manpukuteinanakoshi/e/9965c8a3ec94c27e72e60f56150027c2

【彗星のガルガンティア】
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BF%A0%E6%98%9F%E3%81%AE%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2

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皆さん、こんにちは。自然を愛するウェブエンジニア、セミラジオです。
今回は、人間の恐ろしい進化の可能性を描いた奇書、
マンアフターマンについてご紹介したいと思います。
マンアフターマンの作者は、これまで架空の生き物の進化についての作品を多数制作している
スコットランドの生物学者、ドゥーガル・ディクソンです。
代表作は、人類絶滅後に進化した架空の生物を描いたアフターマン、
恐竜が絶滅しなかったという過程の下、その後の恐竜たちの進化を描いた新恐竜、
テレビシリーズとして企画され、NHKでも放送されたフューチャー・イズ・ワイルドなどです。
これらの作品は再販され比較的入手しやすい反面、
マンアフターマンは長らく絶版で、本を読むことが困難な状況が続いています。
これはマンアフターマンという作品が、動物ではなく人間が異形の姿へ進化していく非常にショッキングな内容になっていて、
作者自身もこの作品について好きではないと述べていることなどが理由だと思います。
本の内容は、人類の文明活動で荒廃した200年後の世界から500万年後という時代にかけてを描いています。
物語の起点となる200年後の世界は、荒れ果てた地球に見切りをつけて、
遺伝的に優れた特徴を持ったエリート、ジメッツスムートと呼ばれる人にぎりの集団が太陽境外への進出を進めています。
その人にぎりのエリートの宇宙への進出を助けるのが、水中人間、宇宙人間という改造人間たちです。
これは遺伝子工学や肉体改造によって水中や宇宙で活動できるようになった改造人間です。
これらの改造人間の力を借りて、一にぎりのエリート、ジメッツスムートたちは外宇宙に進出するわけですが、
後でお話しするんですが、このジメッツスムートたち、いずれ地球に戻ってくることになります。
地球側に進出した一部のエリート以外の人間は、過酷な環境の中で原始的な農耕生活をしながら、何とか生き延びているという状況です。
時代は進み、300年後、生き過ぎた文明生活のために弱体化した肉体を機械で補うハイテックというサイボーグ人類が誕生しています。
サイボーグというレベルを若干超えていて、生身の部分はほぼ頭部しか残っていない、あとは機械。そんな感じの人類です。
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500年後、人類の遺伝子を荒れ果てた地球で存続させていくために、遺伝子操作によって生まれた人類の子孫たちが地球のあらゆる生態圏に進出しています。
草原や熱帯、ツンドラや温帯などへ。そして彼らは、もともと同じ人間という種族だったことを忘れ、現在の野生生物のように地球上に適応し、進化していきます。
弱肉強食、食物連鎖の中で、かつては同じ人類だったその子孫たちがお互いに喰らいあっている。そんな様子が描かれています。
水中では、より優れた遺伝子工学によって生み出された水中人間がおり、後に体をゼラチンの膜で包むことで地上に進出し、地上の人類の子孫と敵対します。
千年後、地球の環境はさらに激変し、地球上で純粋な人類、ホモサピエンスの遺伝子を保持していた者たちは、濃厚で細々とやっていた人たちも、体をサイボーグや合成器官で補っていた人々も全滅してしまいました。
地上に残るのは、文明を捨て去り、野生に生きる人類の子孫と、海中に住み、食料生産などの文明を持つ水中人間だけ、ということになっています。
さらに時代は進んで200万年から300万年後、アリを主食にするアリ食い人間や、サーベルタイガーのような牙を持ったスパイクマンなど、さらに進化を遂げた人類が登場します。
雪男のようなツンドラ居住者に寄生して生きるパラサイトという人類も登場しています。
そして、マンアフターマンのクライマックス500万年後、かつて地球から外宇宙に旅立ったヒトニギーのエリート、ジメッツスムートの子孫が帰還を果たします。
しかし彼らは、外宇宙の環境に適応するために遺伝子改良を繰り返し、元の人類とは似ても似つかない姿に変貌していました。
地球の大気に適応できないため、黒い外殻に身を包み、彼らの生身の姿は見ることができません。
ジメッツスムートの子孫は、地球に残っていた人類の子孫を、かつての同類とは気づかずに利用します。
食料や自分たちの乗り物として改造するなど、そこに感情などはなく、立っているものは親でも使えというような感じで利用し尽くすわけですね。
ジメッツスムートの子孫と、彼らの乗り物として改造された人類の子孫は、マンアフターマンの表紙の絵にもなっており、このラジオ界のサムネイルはその絵を元に描きました。
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彼らはテラフォーミングという環境の改変を行い、大気構成に至るまで地球の環境を作り変えてしまいます。そして、資源を取り尽くして去っていきました。
ジメッツスムートの子孫が引き起こした大破壊の後も、深海で水中人間たちは生き延びており、彼らが再度陸上に進出し、地上に新たな人類の歴史を刻むことを示唆して、マンアフターマンという物語は終わっています。
というのがマンアフターマンという物語なんですけども、かつての同胞である人類の子孫同士がお互いそうと気づかずに食料にしたりされたり、改造されて乗り物にされたりという構図がめちゃくちゃ怖いですよね。
この話から連想する話がいくつかあって、それはマオリ族とモリオリ族の話と、彗星のガルガンティアというアニメの話です。
モリオリ族とマオリ族の話なんですが、これは1835年にニュージーランドのマオリ族がニュージーランドの東方1000キロにあるチャタム諸島に住むモリオリ族を襲撃し、食事も行ったという歴史上の事件です。
実はこのモリオリ族、かつてニュージーランドから移住したマオリ族の末裔で、襲撃した者、された者、お互いルーツを同じくする民族同士だったという話なんですね。
彗星のガルガンティアというのは2013年に放送されたアニメなんですが、これ完全にネタバレにはなるので、これからもし見る予定の方はご注意ください。
彗星のガルガンティアでは、外宇宙に進出した人類と宇宙生命体ヒリアーズとの戦いが描かれており、主人公レドは宇宙に進出した人類の同盟、人類銀河同盟の戦士として戦っていました。
実はこの宇宙生命体ヒリアーズというのは、遺伝子操作によって宇宙空間での生存を可能にした人類の末裔なんですね。
ちょうどマン・アフターマンでいう宇宙人間のような存在です。
そして外宇宙に遺伝子操作なしで生身の人間として進出した人類と憎み合い、果てしない戦いを続けているという設定だったんですね。
マン・アフターマンとすごく似ていますよね。
マン・アフターマンも彗星のガルガンティアも、あまりこういう風にはなってほしくないという未来を描いた作品なんですが、
人間の怖いもの見たさというか、人間の持つ可能性の闇を覗き込むような、そんなどす黒い魅力を備えた作品だと思います。
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参考リンクを貼っておきましたので、そちらをチェックしていただければと思います。
今日は、起承、マン・アフターマンについてお話しさせていただきました。
ご視聴ありがとうございました。
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