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二つの鞄 香倶土三鳥 夢野久作
小さな鞄と大きな鞄と二つ店に並んでおりました。
大きな鞄はいつも小さな鞄を馬鹿にして、
お前なんぞは俺の口の中に入ってしまう、と冷やかしました。
二つの鞄は同じ時に同じ人に買われて、同じ家に行きました。
すると、小さな鞄の中にはお金や何か尊いものが詰められて、
人間に大切に抱えられていきます。
大きな鞄はあべこべに詰まらないものばかり詰められて、
荷車に詰まれたり、投げ飛ばされたりしておりました。
小さな鞄は大威張りで、
大きな鞄の育児なし、と笑っておりました。
大きな鞄はたいそう口をしがって、
自分をいじめる人間を恨んでおりました。
ある日、大火事があって、この家の人が逃げ出すとき、
衣服と一緒に小さな鞄を大きな鞄の中に入れて、逃げ出しました。
大きな鞄はここで敵を取って、
先を取ってやろうと思って、
火事が済んだあとで、人が開けようとすると、
口をしっかりと閉じて、中の小さな鞄を出すまいとしました。
人間はたいそう困って、いろいろやってみましたが、
どうしても開きません。
この鞄はだめだよ。
口を開かなきゃ、
逆に立ちはしない。
中の小さな鞄が入りようだから、
仕方がない。こうしてやろう。
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と言いながら、
横腹を切り、破ってしまいました。