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2025-04-23 11:19

オツベルと象『第五日曜』/宮沢賢治

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作品名:オツベルと象
著者:宮沢賢治

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サマリー

オツベルと象の物語では、象が苦しむ様子とその仲間たちが助けに来る様子が描かれています。最終的に、象たちが団結してオツベルを打倒します。

象の苦しみとオツベルの行動
第五日曜、オツベルかね。 そのオツベルは、俺も言おうとしてたんだが、いなくなったよ。
まあ、落ち着いて聞きたまえ。 前に話したあの象を、オツベルは少しひどくしすぎた。
仕方がだんだんひどくなったから、象がなかなか笑わなくなった。
時には赤い竜の目をして、じっとこんなにオツベルを見下ろすようになってきた。
ある晩、象は象小屋で、三羽の藁を食べながら、十日の月を仰ぎ見て、
「苦しいです、サンタマリア。」 と言ったということだ。
こいつを聞いたオツベルは、ことごと象につらくした。 ある晩、象は象小屋で、ふらふら倒れて地べたに座り、藁も食べずに、
十一日の月を見て、
「もう、さようなら、サンタマリア。」 と、こう言った。
「おや、なんだって、さようならだ?」
月がにわかに象に聞く。
「ええ、さようならです、サンタマリア。」
「なんだい、なりばかり大きくて、からっきしい育児のないやつだな。 仲間へ手紙を書いたらいいや。」
月が笑ってこう言った。
「お筆も紙もありませんよ。」 象は細い綺麗な声で、しくしくしくしく泣き出した。
「ソラ、これでしょ?」 すぐ目の前で、かわいい子供の声がした。
象が頭をあげてみると、赤い着物の童子が立って、 すずりと紙を捧げていた。
象はさっそく手紙を書いた。
「僕はずいぶん目にあっている。 みんなで出てきて、助けてくれ。」
童子はすぐに手紙を持って、林の方へ歩いて行った。
赤いの童子がそうして山に着いたのは、ちょうど昼飯頃だった。
この時山の象どもは、サラジュの下の暗がりで、 語などをやっていたのだが、額を集めてこれを見た。
「僕はずいぶん目にあっている。 みんなで出てきて、助けてくれ。」
象は一斉に立ち上がり、真っ黒になって吠え出した。
「オツベルをやっつけよう。」 議長の象が高く叫ぶと、
「おう、出かけよう。」 グララーガー、グララーガー。
みんなが一度にこうする。
さあもうみんな、嵐のように林の中を鳴き抜けて、 グララーガー、グララーガー、野原の方へ飛んで行く。
ドイツもみんな気違いだ。 小さな木などは猫着になり、ヤブや何かもめちゃめちゃだ。
グワー、グワー、グワー、グワー。 花火みたいに野原の中へ飛び出した。
それから何の走って走って、とうとう向こうの青く霞んだ野原の果てに、
オツベルの屋敷の黄色な屋根を見つけると、 象は一度に噴火した。
グララーガー、グララーガー。
その時はちょうど一時半。 オツベルは川の寝台の上で昼寝の盛りでカラスの夢を見ていたもんだ。
あまり大きな音なので、オツベルの家の百姓どもが 門から少し外へ出て、小手をかざして向こうを見た。
林のような象だろう。 汽車より早くやってくる。
さあ、まるっきり血の毛もうせて駆け込んで、
「旦那、象です。押し寄せやした。旦那、象です。」
と声を限りに叫んだもんだ。 ところがオツベルはやっぱり偉い。
目をぱっちりと開いた時は、もう何もかもわかっていた。
象たちの団結と戦い
「おい、象の奴は小屋にいるのか?」
「いる?いる?いるのか?よし、戸を閉めろ。 戸を閉めるんだよ。早く象小屋の戸を閉めるんだ。」
「よし、早く丸太を持ってこい。閉じ込めちまえ。」
「ちくしょうめ、じたばたしやがるな。 丸太をそこへ縛りつけろ。」
「何ができるもんか。わざと力を減らしてあるんだ。」
「よし、もう五六本持ってこい。さあ、大丈夫だ。」
「大丈夫だとも。慌てるなったら。おい、みんな、 今度は門だ。門を閉めろ。」
かんぬきをかえ、つっぱりつっぱり、そうだ。
「おい、みんな心配するなったら、しっかりしろよ。」
オツベルはもう支度ができて、 ラッパみたいないい声で百姓どもを励ました。
ところがどうして百姓どもは気が気じゃない。
こんな主人に巻き添いなんぞ食いたくないから、 みんなタオルやハンケチや汚れたような白いようなものを
ぐるぐる腕に巻きつける。 降参をするしるしなのだ。
オツベルはいよいよ薬気となって、 そこらあたりを駆け回る。
オツベルの犬も気が立って、火のつくように吠えながら、 屋敷の中を馳せ回る。
まもなく地面はぐらぐらと揺られ、 そこらはばしゃばしゃ暗くなり、象は屋敷を取り巻いた。
グララーガー、グララーガー。 その恐ろしい騒ぎの中から、
今助けるから安心しろよ。 優しい声も聞こえてくる。
ありがとう、よく来てくれて本当に僕は嬉しいよ。 象小屋からも声がする。
さあそうすると、周りの象は一層ひどく。 グララーガー、グララーガー。
兵の周りをぐるぐる回っているらしく、 たびたび中から怒って振り回す花も見える。
けれども兵はセメントで、中には鉄も入っているから、 なかなか象も壊せない。
兵の中にはオツベルが、たった一人で叫んでいる。 百姓どもは目もくらみ、そこらをうろうろするだけだ。
そのうち外の象どもは、仲間の体を台にして、 いよいよ兵を越しかかる。
だんだんニューッと顔を出す。 そのしわくちゃで灰色の大きな顔を見上げた時、
オツベルの犬は気絶した。 さあオツベルは撃ち出した。
六連発のピストルさ。
ドーン、グララーガー。
ドーン、グララーガー。
ドーン、グララーガー。
ところが弾は通らない。 牙に当たれば跳ね返る。
一匹なぞはこう言った。
なかなかこいつはうるさいね。 パチパチ顔を当たるんだ。
オツベルはいつかどこかで、こんな文句を聞いたようだと思いながら、 ケースを帯から詰め替えた。
そのうち象の片足が、兵からこっちへはみ出した。 それからもう一つはみ出した。
五匹の象がいっぺんに、兵からどっと落ちてきた。
オツベルはケースを握ったまま、もうくしゃくしゃに潰れていた。
早くも門が開いていて、 グララーガー、グララーガー。
象がどしどしなだれ込む。 狼はどこだ。
みんなは小屋に押し寄せる。 マルタナンゾはマッチのようにへし折られ、
あの白象は大変痩せて小屋を出た。 まあ良かったね。痩せたね。
みんなは静かにそばに寄り、鎖と銅を外してやった。
ああ、ありがとう。本当に僕は助かったよ。
白象は寂しく笑ってそう言った。
おや、川へ入っちゃいけないったら。
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