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2025-01-31 04:31

蜘蛛の糸『一』/芥川龍之介

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作品名:蜘蛛の糸『一』
著者:芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)

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7・15・23・31日更新予定

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BGMタイトル: Maisie Lee
作者: Blue Dot Sessions
楽曲リンク: https://freemusicarchive.org/music/Blue_Dot_Sessions/Nursury/Maisie_Lee/
ライセンス: CC BY-SA 4.0
00:06
蜘蛛の糸 芥川龍之介
一 ある日のことでございます。
お釈迦様は極楽の蓮池の淵を、一人でぶらぶらお歩きになっていらっしゃいました。
池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のように真っ白で、
その真ん中にある金色の髄からは、何とも言えない良い匂いが絶え間なくあたりへあふれております。
極楽はちょうど朝なのでございましょう。 やがてお釈迦様はその池の淵にお佇みになって、
水の表を覆っている蓮の葉の間から、ふと舌の様子をご覧になりました。
この極楽の蓮池の舌は、ちょうど地獄の底にあたっておりますから、
水晶のような水をすき通して、 山頭の川や梁の山の景色が、
ちょうど覗き眼鏡を見るようにはっきりと見えるのでございます。
すると、その地獄の底に、 カンダタという男が一人、他の罪人と一緒にうごめいている姿がお目にとまりました。
このカンダタという男は、人を殺したり、家に火をつけたり、 いろいろ悪事を働いた大泥棒でございますが、
それでもたった一つ、良いことを致した覚えがございます。 と申しますのは、ある時、この男が深い林の中を通りますと、
小さなクモが一匹、ロバタを張っていくのが見えました。 そこでカンダタは早速足を上げて踏み殺そうといたしましたが、
いやいや、これも小さいながら命のあるものに違いない。 その命をむやみに取るということは、いくら何でもかわいそうだ。
03:04
と、こう急に思い返して、 とうとうそのクモを殺さずに助けてやったからでございます。
お釈迦様は地獄の様子をご覧になりながら、 このカンダタにはクモを助けたことがあるのを、思い出しになりました。
そうして、それだけの良いことをした報いには、 できるなら、この男を地獄から救い出してやろう、と、お考えになりました。
幸い、そばを見ますと、 翡翠のような色をした蓮の葉の上に、
極楽のクモが一匹、美しい銀色の糸をかけております。
お釈迦様は、そのクモの糸をそっとお手にお取りになって、 玉のような白蓮の間から遥か下にある地獄の底へ、
まっすぐにそれをおおろしなさいました。
04:31

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