西洋館の探検
2.森の中の古い西洋館の窓から、小さい女の子が助けを求めて泣き叫んでいたそのあくる日のこと。
2人で森の中の西洋館を探検することになりました。真っ昼間ですから、怖いことはありません。
でも、2人とも探偵7つ道具の懐中電灯や絹糸の縄端子や呼ぶ子の笛などは、ちゃんと用意していました。
小林団長と木村君は、薄暗い森の中を通って、お化け屋敷の西洋館の前に来ました。
入口のドアを押してみますと、なんなく開きました。
鍵もかかっていないのです。
2人は中へ入り、広い廊下を足音を立てないようにして忍び込んでいきました。
懐中電灯を照らし、長い間かかって1階と2階の全部の部屋を調べましたが、誰もいないことがわかりました。
全くの空き家です。
どうもこの部屋が怪しいよ。
なぜだかわからないが、そんな気がするんだ。
1階の広い部屋に戻った時、小林君が独り言のように言いました。
すると、ちょうどその時、どこからともなく、かすかに、かすかに、
おじさん、かんにして、あ、こわい、たすけて、という悲鳴が聞こえてきました。
小さい女の子の声のようです。
2人はぞっとして立ちすくんだまま顔を見合わせました。
床下から聞こえてきたようだね、小林君が首をかしげながら言いました。
するとまた、あれ、いけない、はやくたすけて、と、かすかな声が。
どこかに隠し戸があるにちがいない。どこだろう。
小林君は懐中電灯を照らして部屋中をさがしまわりました。
その部屋には大きな暖炉がついていて、その暖炉の下側に丸いぼっちがずっと並んでいます。
飾りの彫刻です。
小林君はそのぼっちをひとつひとつ指で押してみました。
すると右から7番目のぼっちがちょうどベルの押しボタンのように動くことがわかったのです。
小林君はそれをぐっと押してみました。
するとガタンという音といっしょにアッという叫び声。
びっくりしてふりむくと今までそこにいた木村君の姿が消えうせていました。
恐ろしいカブトムシの登場
小林君はびっくりしてそこへかけつけました。
すると床板に四角い穴がぽっかりとあいていることがわかりました。地下室への落とし穴です。
小林君が暖炉のぼっちを押したのでそれがひらいたのです。
木村君、だいじょうぶか?
穴の中へ懐中電灯を向けて呼んでみました。
う、う、う、だ、だいじょうぶだ。
木村君が苦しそうに答えました。
見ると穴の下にすべり台のような板がずっとつづいています。
小林君は思い切ってそこへ飛び降りました。
すーっとすべりました。
そしてどしんと地下室のかたい床に尻餅をつきました。
やっとのことで起き上がって懐中電灯を照らしてみますと、そこは十畳ほどの広い地下室でした。
しかし悲鳴をあげた女の子の姿はどこにも見えません。
向うの壁にまっくらなほら穴があいています。
その向うに別な地下室があるのでしょうか。
あ、君、あれなんだろう。
木村君がおびえた声でそのほら穴を指さしました。
二人の懐中電灯がぱっとそこを照らしました。
まっくらなほら穴の奥でぎらぎら光った二つの丸いものが宙に浮いているのです。
そしてそれがだんだんこちらへ近づいてくるではありませんか。怪物の目です。
何かしら恐ろしいものがこちらへやってくるのです。
まるでヤドカリが貝殻の中から顔を出すようにそれがにゅっと首を出しました。
あ、二人は思わず声を立ててお互いの体を抱き合いました。
その体は真っ赤でした。
真っ赤な長い大きな角、その根元に不気味なとんがった口、
二つのぎらぎら光る目、折れ曲がった六本の長い足、
それは人間ほどの大きさの真っ赤なカブトムシだったのです。
二人はどうなるのでしょう。
さっき悲鳴をあげたかわいそうな女の子は一体どうしたのでしょうか。