地下の市民プールには様々な人が通っている。 彼らはプールで泳いでいる時だけ、仕事や現実的な悩みを忘れ、自分自身でいられる。
ある認知症の女性もそのプールに通っていた。 その女性が覚えていること、覚えていないこと、覚えることができなくなりつつあること。
一人の女性とその家族のかけがえのない日々が浮かび上がる。 ジュリー・オオツカのスイマーズを紹介します。
どうもみなさんこんにちは。文学ラジオ空飛猫たちです。この番組は、いろんな人に読んでもらいたい、いろんな人と語りたい文学作品を紹介しようコンセプトに、文学と猫が好きな二人がゆるーくトークするポッドキャストです。
パーソナリティは私、ダイチとミエの二人でお送りします。文学のプロではない二人ですが、お互いに好きな作品を時には熱く、時には愉快にそれぞれの視点で紹介していく番組です。
今回紹介するのは、ジュリー・オオツカさんのスイマーズになります。小竹由美子さん役で、新潮クレストブックスから2024年に出版された本になります。
はい、今回割と新しい本を紹介しますね。 出売してすぐぐらいかな。この本はもともと、出売が発表された当初、表紙がカシワイさんということで、しかも新潮クレストブックスっていうところでかなり注目してました。
新潮クレストブックスの表紙をやるのは、カシワイさん初めてかなと思いますね。
カシワイさんって誰って話だと思うんですけど、イラストレターの方で、ちょっと柔らかくて、優しそうな絵というか、親しみやすそうな絵を描く方で、独特の世界観がありますよね。
個人的に、その世界観がSFの世界とリンクしていて、書房で出しているキムチオヨプさんのSFの作品も、今までの3冊はカシワイさんが表紙のイラストを描かれていて、個人的にはその世界観の印象が強いですね。
そうですね。確かに今回もスティーマーズ、現代の物語で特にSF要素は全くないんですけど、この表紙の絵がプールの中で泳いでいるとか浮かんでいる女性がいて、その中に結構ソファーがあったりとか、ちょっと非現実的な世界、プールの底には結構いろんなものが、ちょっと非現実的な世界が表紙になっていて、それはすごくいい味を出している作品なんですけど、
ちょっと幻想的とかSFっぽい絵の中に、人のぬくもりを感じるような。
水とか植物とか、そういう自然の絵もすごく特徴的でいいですよね。
そうですよね。ちょっとカシワイさんの話、もうちょっとさせてもらうと、7月の下旬、2020年7月の下旬に、今日の原宿で小さいギャラリーだったんですけど、あの個展をやっていらっしゃいました。
で、私行きまして、サッシ買いましたね。風待ちの二人かっていう漫画が結構有名なんですけど、なんかそれの雰囲気を感じるような絵も、結構描き下ろしの絵が多かったっぽいんですけど、昔の絵も見れたりして、かなり興奮しましたね。
で、その個展、僕も見に行っていてですね、ちょうど夕方ちょっと仕事終わって行ったんですけども、受付のノート、来場者の人の大地さんの名前があって、先に来てたんだっていうのがわかったっていう。
しかもあれですよね、あの台帳って多分6名か8名分ぐらい、8名描いたら次に行っちゃうような台帳だったので、そんな時間離れてないはずですよね。
たしかに私いっぱいになってて、自分が描けなくて、新しいとこを描き出したのを覚えてるんで、たぶん一番左上に描いてあったと思うんですけど、ほぼ同じ時に行っていたという。
そうですね。
たぶん同じだったから、原画化ほぼ売り切れてましたよね。
そうですね、結構売り切れてるのが多かったですね。
あと何点かしかなかったですね。結構ね、回帰の早い段階に行ったんだけど、ほぼ売り切れててすごいなって思ったのを覚えてますね。
そんな柏井さんが表紙を飾っている作品ですが、今回スイマーズっていうこのタイトルからすると結構ポップな話なのかなとか、ちょっと思ったりしたんですが、思ったよりもなんか深い話で。
そうです。
しかもこれ何ページだっけな、短かったんだよな。150ページぐらいかな。結構短くて読みやすいので、これは結構いい作品だなってまず読み終えた時に思いました。
深い話だっていう話を今しましたけど、結構これ何でしょうね、認知症の話に途中でなっていって、そうなると記憶ですよね。
覚えていることを忘れてしまっていることを忘れてしまっていくことみたいな。
結構家族って時間空間を共有している存在だと思うので、同じことを覚えてたりすると思うんですけど、やっぱりその家族の中でもこの人はこれを覚えているとか、この人はこれを忘れてしまっているみたいなことが多分あるんだろうなとか思ったりして。
なんかいろんなことを考えてしまう一冊でした。
これ読み終わった後に何となくすぐ落ちてくるものではなくて、結構時間が経つとどんどん迫ってくるんだなと思いましたね。
だからちょっと今回いろいろ話すと思うんですけど、なんか気になったら読んでいただきたいなって思っちゃいましたね。
短いし、でハマる人は結構多いような作品だと思うので、記憶っていう誰しもフックになるようなものを扱ってますし。
ぜひちょっと今日頑張って紹介するので、気になったら読んでいただきたいなと思います。
確かに。これは語り口がすごいユーモアなんですよね。
それもあるよね。
文章のその個性っていうんですかね。
なんかそれがすごい良くて、どんどん読んでいきましたし、最初の5章の構成なんですけど、うち最初の2章は公民プールが舞台で、そこに通う人々を描いているすごい面白い話があって。
最初すごく面白かったんですよね。そういうので、なんかそういうプールに通っている愉快な人々を描いたそんな小説かなと思っていたら、途中からちょっとアリースという高齢の女性とその家族の話にちょっと切り替わっていくんですけども、
そこにすごいギャップを感じましたし、それは良さだと思うんですね。
なんかその、なかなか何ですよね、これちょっと仕掛けなのかどうかわからないですけども、まさかこんな展開になってくるとはっていうですね、ちょっと驚きもありましたし。
で、読んでいるとそのアリースの話ですね。アリースの人生を回想していくような、そんな断片的な情景というのがところどころ浮かんでくることがあって、それを読んでいるとなんか自分にも重ねてしまうですね、ところがあってですね。
悲しさとか寂しさを感じることもあって、すごいユーモアがあって、どんどん読んでいける小説なんですけど、一方で何かその悲しさ、寂しさも味わえるというところで、何とも言えない独語感が実はありまして、大地さんが言ってたみたいですが、読んですぐ落ちてくるものではない小説かなというのは僕も思いましたね。
なんか後々、ちょっと時間が経ってから、この小説のこういうところが、なんか自分には心に刺さったなとかですね。なんか後々、なんか来そうな、そんな予感はしてますね。
そうですよね。そういう意味では、たぶんミエさん言ったけど仕掛けなのかどうかはちょっとわからないけど、かなり丁寧に書かれているのを感じますよね。
その狙っている部分もあるのかもしれないけども、もちろん。じゃあ著者紹介したいと思います。ジュリー大塚さんなんですけれども、大塚という名前からもですね、お伺いになると思うんですけども、この方日経にルーツを持つ方です。
ジュリーさん自体はアメリカ、カルフォルニア州で生まれていてアメリカ人です。イエール大学で絵画を学び、コロンビア大学大学院科で美術学学習士、美術学習士号を取得とあるので、元々小説というよりは絵画とか美術系の人なんですね。
2002年に小説あの頃天皇は神だったを発表して好評博士。2011年刊行の屋根裏の仏様はペンフォークナー賞とフランスのフェミナ賞外国小説賞を受賞しているという、あと全米図書賞最終候補作ともなったという、かなり評価が高かった本みたいですね。
で、このスイマーズでは米カネルギー文学賞を受賞しているということです。かなりあまり作品は10年に1冊書くか書かないかぐらいの。
作目ってちょっと、ジュリー大塚さん名前はよく聞くんですけど、こんなに出版されていたのがまだ3点って少なかったとあって、すごいちょっと意外でしたね。
10年に1冊のペースで書いているみたいだね。この1冊1冊多分すごいんだろうね。この前の2冊読んでないけどめちゃめちゃ評価が高くて、結構その日本の歴史というか、日本とアメリカの歴史のあたりをちょっと描いている部分もあるそうなので、そこのあたりにやっぱりルーツを持つから、アイデンティティを持つから描いているところがあるみたいなので、非常に読みたくなった2冊ですね。
作品紹介入っていきたいと思います。クレストブックスのホームページから引用させていただきます。
私たちはどんな痛みからも解き放たれる。泳いでいる。その時だけは。過食・リストラー・憂鬱症。地下の市民プールを愛し、通い詰める人たちは、日常では様々なことに悩み苦しんでいる。そのうちの一人、アリスは認知症になり、娘が会いに来ても誰なのかわからなくなって、ついに施設に入ることになる。瞬時に消えてしまうような、かけがえのない人生の煌めきを捉えた。米カネルギ賞受賞作。となっております。
今、辻から市民プールの話だってのはちょっとわかったと思うんですけれども、これはプールに集まってくる人たちが、まずはメインとした話になってますね。で、ちょっとその前提を置きながら、ちょっといろいろストーリーを話していきたいんですが、まずはその前にこの作品ってどういう作品なのっていう話をちょっとしていきたいと思います。
まず1点目は、語りと構成については必ず触れなきゃいけないなと思っていて、かなり独特な作りをしています。
みなさんも冒頭でちょっとお話ししてましたけど、結構小説好きな人は好きな作り方をしてるんじゃないかなってちょっと思いますね。あまり他では見ないような構成語りをしているので、あんまり他で味わったことないような読み心地から入っていくので、それだけで結構この小説面白いって思う方いらっしゃると思います。私はそうでした。
どういう語りなのかっていう話をさせてもらうと、まず結構ですね、視点っていうのがまず第一章は誰かがこのプールのこととかプールに通ってる人たちのことを語ってるんですけど、それが一体誰なのかちょっとよくわからないですね。
でもこの人もおそらくこのプールに集まっていくスイマーズの一人なんですよ。私たちはっていう認識を使っているので、私たちはとか言いながら個々の事例をちょっとずつ挙げていく感じですね。このプールにはこんな人たちがいるよみたいな早く泳いで往復する回数を稼ぎたい人とかゆっくり泳いでいる人がいるよとかいるんですけど、でも地上では地上っていうのはあれですね。
地下のプールなので地上のこと現実生活なんですけども、仕事だったり家族との関係とかことですね。だったりすると警官だったり俳優だったり売れない俳優だったりとかビーガンだったり、いろんな人たちがここには来てると。
でもこのプールの中では誰もがただのスイマーズで3種類に分かれると。早い人と中くらいの人ゆっくりの人みたいな感じでちょっと語られていくんですけども、こんな感じでちょっとずつ誰か明示したりしなかったりしながらどんな人たちがこのプールにいて。
しかもかなりこのプールに集まっているスイマーズは本当に日常的に毎日までいかないかもしれないですけど依存症に近いぐらいの形でこのプールに通い詰めている人たちばかりなんで、ちょっと普通の水泳に生きてるような人とちょっと違うんですよね。
そのあたりもちょっと一人一人少しずつ語られていくという形になってきます。で、それが割と一症二症なんですけど、やがてですねこれがあの認証がちょっとずつ変わっていって、症状ってちょっと変わったりして、二人症ですね。
言うあなたはっていうあの認証になったりとかしてちょっと変わっていったりして、最初の一症二症は結構多くの人を語っていくんですけど、三症予行はその多くの中の一人アリスっていう認知症になりかけてるかもなってしまっている女性をメインに描きながら娘ですね。娘との関係も描いていくという形になっていきます。
なので結構最初は私群蔵劇かなと思ったんですけど、徐々に徐々に子の話に集約していく、徐々にじゃないか、まあ三症以降割とこの子の話に集約していく小説で、この変遷はめちゃめちゃ面白く読みました。で、この小説を魅力的にしている側面であるなと思いますね。
この章によって語りをこれだけ変えてるっていうのはね、なんかすごいダイナミックだと思いましたし、なかなか確かに他の小説でここまで思い切ったその章によって変えるって少ないのかなって思いましたし。
あともう一個面白いなと思ったのは、最初の第1章とかプールの話ですけど、第4章がアリスが入ることになる介護施設の話で、ベラビスタっていう名前の施設なんですけど、このプールとかベラビスタっていうその箱物ですよね。
なんかその特性というんですかね、プールだとこういう人が集まってこんなルールがあってと。で同じくベラビスタでも認知症になった人々、こんな人が集まってベラビスタには職員とかもいるんでこんなルールがあって。
で、テレビがもう24時間ずっとつけっぱなしなんですけどほとんど。それなぜかというとまあそれは職員がテレビ見たいからとかですね、謎のルールがあったりするんですけど。なんかそういうその箱物の話をその章を丸々さえてしているっていうところはかなりちょっと風変わりだと思いつつ面白いところだなと思います。
確かにここって、あ、そっかここ構成というか構造に行ってたんだね。みえさんに言われるまで気づかなかったけど。確かにここプールとベラビスタっていう施設、介護施設か確かに語られ方一緒だね。面白いなこれ確かに。
いやでも5章のうち2つをね、2章もほぼほぼプールの話なんで、実際3つか5章のうち3つの章プールとこの介護施設に咲いてるっていうのは相当ちょっとねなんかバランスとか考えたらなかなかこの実際自分がじゃあ小説とか書こうかなと思った時にこのバランスで思い浮かべようがないような書き方で。いやすごい面白いですよね。
確かに。ベラビスタの話はちょっと後でもしすると思うけど、ストロニーとかでも触れたいけど、結構いろいろね、あの辛辣というか。
そうですね。福祉施設なんですけど、民間がやってる営利型ということで、ちゃんとビジネスとしてやってるっていう、その側面が結構強調されていて、それがなかなかちょっとブラックな感じの面白さとかね、ありましたね。
次お話ししたいのは、ちょっと今のところも繋がるんだけど、表現方法ですね。この小説、今のプールの話とかベラビスタの話もそうなんですが、逆にベラビスタは割とはっきり書いてるのが、ちょっとあれなんですけど、なんて言ってるのかな、それと分かるような形を結構積み重ねてくるんですよ。
大きいところで言うと、例えば3章とか、3章と5章か、5章のあたりとか、明確にアリスっていう名前とか出てこなかったりするんですけど、出てきたりするのか、するんだけど、最初、彼女とかっていう形でアリスのことを表現してて、もちろんそれは、これは認知症が棲み出してそうだからアリスのことなんだなっていうのはすぐわかるんですけど、
そんな感じで、あんまりちゃんと明記しないけど、それとわかるっていう表現を結構積み重ねてくる小説です。で、その中で徐々にわかってくる部分がある、見えてくる部分がある、急にわかる部分があるみたいなところで、こういう文章を読んでいくと、こういろんなことがわかってくっていうタイプの小説って、いくつかあると思うんですけど、こういうのが好きな人には結構ハマるんじゃないかなと思いますね。
これはすごい文章の重ね方も上手いし。
二人称であなたっていう呼びかけるように語っているっていうところは確かに、しかもこの三章とか、アリスはこれは覚えている、これは覚えていないとかっていう、重ねていくような書き方とか、すごい迫ってくるものがあるので、確かに最初は何気なく読んでいても、何かの描写で読んでいるとちょっとハッてするところあると思うので。
この辺はすごい表現方法も面白いですよね。
そうなんですよね。この文章の積み上げは結構好きで、今みえさんが言ったことなんですけど、何々は覚えている、何々は彼女を覚えている、何々は彼女を覚えている、何々は彼女を覚えていない、何々は彼女は覚えようとしないとか、覚えていると覚えていないで表現していくのが、
三章かなんですけど、ここを読んでるだけでも、自分の記憶についてもぐるぐる考えちゃう部分でもあるから、すごくいいなと思いました。
ちょっと今の話につなげると、これやっぱり最終的なテーマの話をしておきたいんですけど、作品のテーマ、スイマーズって名前がついてるので、結構プールに引っ張られそうになっちゃうんですけど、やっぱりこれ最終的には忘れてしまうことというか、覚え、記憶ですよね。
記憶がテーマになってるなと思っていて、忘れてしまうこと、覚えていること、覚えていたいのに忘れてしまうこととか、そもそも覚えていなかったことみたいな部分、こういうのが多分描かれていて、認知症っていうことをもちろん絡めながら話は進んでいくので、どうしても記憶について語られていく部分はあるんですけど、
でもこの同じ時間を共有しながら、ある人は忘れてしまったけど、ある人は覚えているみたいなそんなこと、日常的に多分いろんな場面で起きていて、しかもこれは家族を最終的に描いていくので、母親と娘を描いていくので、やっぱりこの部分、母は覚えてるけど娘がちっちゃい頃のことなんか覚えてないし、逆に認知症が進んでいく中で自分のことをわからなくなってしまってる母親みたいなところとか、結構いろいろ迫ってくるところはあります。
で、なんかこれは大きいテーマだし、これだからこそ多分いろんな人に捧ぐ作品になっているはずだなと思いますね。
そうですね。このテーマというか、認知症を扱った小説だと、日本で作品だったの、小木原博さんが明日の記憶という作品を2004年に出して、映画は渡辺健さん主演で、僕は原作も読みましたし映画も見たことがあってですね、明日の記憶は結構認知症について、もう本当正面から書いてて、
もう主人公の渡辺健さんがその症状が進行していてっていう話で、結構ハード、なんていうか認知症というものを描いた中ではハードな方かなと思っていてですね、やっぱりちょっとそれを見るのはちょっときついところがあったんですけども、このシーマーズの認知症はどっちかというと認知症を扱っているんですけど、ちょっとソフトな扱い方なのかなとは思ってですね。
アリスがそういう症状になるんですけども、そのアリスが直接語り手とかそういうわけではなくて、また別の人物の視点からアリスについて述べていたり、あとはアリスの娘さんですね。アリスの娘さんを通じてアリスを人生を述べていたりしたりするので、まだちょっとソフトかなと面白いように読んでいてですね、結構かなりちょっとね、グッてくるところとかはね、あったりはしたんですけども。
そこのところはちょっとね、思いましたね。認知症という題材はありつつも、まだソフトに読めるタイプの作品かなっていう。
それで言うとあれかもね、このスイマーズの認知症の描き方って、言い方あれだけどエモーショナルじゃないんだよね。感傷的ではなくていうか、結構淡々としてて、その中に確実に秘めてる感情っていうのはわかる。
書き方をしてはいるんだけど、すごくそれが前面に出てくるような書き方はしてなくて、だから逆に読み手が多分、想像する余地というか共感する余地を残している、書き方をしていると思いますね。
そうですね。なんかその人生の回想の描写とかも、量としては短いんですよね。本当に断片、断片淡々と入っているんで。もちろんね、その断片の中でもそうですね、さっきなんかその想像したりとか、こういう光景は結構自分も重なるところがあるとかですね。
そういうので響くところはあるんですけども、ちょっと前に紹介したある一生でも人生を俯瞰で描かれている作品で、主人公がこの光景は人生の中で最後まで忘れることがなかったとか、その上司に言われたこの言葉は一生忘れることがなかったとか、結構そういうなんかその時何を人生の最後まで覚えているとかですね、そういうのが描かれていて。
ちょっとある一生とこのシーマーズもその人生の中の何が残るのかっていうのがですね、共通して、しかも意外とそれが本当にその細部の細かいところが描かれていたりするので、そこの面白さもあるなと思いましたね。
そうなんだよな。ある一生の人生の最後はすごくいい最後だったな。その彼が送った人生が全てが全て良かったっていうわけではないと思うんだけれども、良かったなと思ったけど、この認知症の最後はちょっとやっぱり怖さはあったなと思いながら、ラストはすごくいいんだけど、このラストすごくいいんだけど、でもやっぱりいろんなことを考えてしまう。
また後で息子だけはあれですけど、このラストになるとアリスの娘さんについて語られているんですけども、そうなんですよね。じゃあそのアリスとしては何なのかっていうと、アリスとしての最後はどうだったんだろうっていうところとかはですね。
いやでもわかんないなと思った。本当自分がどういう人生の最後を迎えていくのかわからないから、こういうこともあるんだろうなと思いながらちょっと読んでましたけどね。で、ここからちょっとストーリー話していきたいと思います。で、今回割と最後まで話してしまおうと思っています。もういろいろ話しているところで、こういう話なんだなって察しがついている方いらっしゃると思うんですけれども、今回のお話はですね、割と全部話してもこの感動とかはあまりそがないかなと思っています。
たださっき話したようにちょっと認証が変わっていくところが結構あるんで、そこに対する驚きっていうのはちょっともしかしたら何も聞かずに読んだ方が神聖な驚きを持つと思うんですけれども、ストーリーとかが流れ自体はですね、お話ししてもあまり得る感動に影響を与えないかなと思っています。
というのは、これはやはり読んだ時の細部が非常に重要な小説なので、大枠を知ってもですね、あまり小説から得たいものに大きく影響はないかなと思っているので、ほぼ全てお話ししていこうと思います。
さっき言ったとおり5章構成で、一番最初の章はプールの話になります。地下のクエプール、市民プールを日々利用しているスイマーズが描かれています。この方々は地上では様々な職業や立場にあるようなんですが、このプールで泳いでいる時だけはですね、現実的な悩みを忘れて、ただただ一人の自分となっていく、解放されていく、その様子が描かれます。
ここにあるのはもう3つだけですね。速いレーン、中クライムレーン、ゆっくりなレーン。それを泳いでいる人たち。あと1つ、プールのルールは守ることということが絶対にされています。これ細かいルールはあるので、それは色々語られていきます。
あと最後にですね、アリスという女性がいらっしゃるんですけど、高齢の女性がいらっしゃるんですけど、彼女に対しては親切に優しくすることということが共通認識として持たれています。これ完全にこのプールですね、通い詰めちゃってる人たちが描かれているので、完全に依存症になっているような感じの人たちが描かれていきます。
第2章で、そんなプールにもちょっと不穏な空気が流れ出します。ある日ですね、プールの第4レーン、これ中クライの速さのレーンですね、そこにヒビが見つかりますね。このヒビがいつからあったのか、どうやってきたのかわからないと。利用者は不安に思ったり、全く気にしなかったりしていきます。
措置がされて、埋めるような作業がされて、ヒビは一瞬消えるんですけど、また措置が剥がれちゃったのかな、また再び現れ始めます。これですね、第4レーンだけじゃなくて、他のレーンにもですね、現れ始めて、合計5つ同じようなヒビが見つかります。これに関していろんな憶測が飛び交えます。
よくないことが起きるんじゃないかとか、調査不足なんじゃないかとか、そもそもこれは何かの陰謀なんじゃないかとか、わからないことを言い出す人もいます。プール側は問題はない、プール側は問題ないと言うんですけれども、人々の不安は消えない、そんな状況になってきますね。さらにこのヒビがですね、どんどんどんどん増加していきまして、これを受けてプール側がプールの閉鎖を決定します。
で、このスイマーズはですね、このプールが閉鎖してしまったため、行き場を失っていくという話になっていきます。ここは何かちょっとあれだよね、このヒビって結構不穏だけど、何かちょっと私は何かコロナみたいなのをちょっとイメージした。何か確実にあるんだけど、人によって受け取り方が全く違う、あの不安の種みたいな。
ちょっとそういうウイルス的なちょっとイメージ。しかも増えだすしね。
最初はちょっとこのヒビごときでこんだけ動揺するってちょっと大げさだなって。
分かる分かる。
確かにそういう捉え方とかができそうですよね。
ここはいろんなメタファーとして捉えることができるヒビだったなと思いますね。
続く3章がですね、口のところでも話してますけど、彼女という名前で呼びかけられるアリスを描いた章です。
アリスが彼女は何を覚えている何を覚えていないみたいな形で淡々と延々と語られていきます。
時折あなたという形で語られるのはアリスの娘のようですね。
アリスが何を覚えているのか何を覚えていないのか、このことが描かれていて。
最終的にこの章の冒頭で覚えたこともアリスは忘れてしまうという様が描かれていき、記憶が失われていく過程にあるということが描かれていきます。
それを受けて第4章、これ施設の名前ベラビスタという名前がついているんですけど、
この介護施設の職員がですね、あなたに向けてこの介護施設を説明するという形で進行します。
今回この章でのあなたはアリスのことですね。
介護施設に入るあたりにどういうことが待っているのか、かなりセキュララに説明されます。
もうちょっとこれ入れたいのか入れたくないのかわからないような形ぐらいのレベル感で語られますね。
でも最低賃金で働いているスタッフのこととか、追加料金払えば優遇されるよとか、
あとここは結構ある意味なんていうか誠実だなって思うようなところは、もうあなたの病状は全く良くなりませんと。
改善することはないですと言い切られるところとかですね。
かなり辛辣ではあるんですが、このあたりは正直誠実だなと思いました。
この感情の持ちようっていうのがなかなか。
そうなんだよね。自然に入っていけると思う部分もあるから、そういう意味では割とこの小説で任せていけば、読み進めていけば、ある場所にたどり着けるっていうのは間違いないかなと思いますね。
ちょっとラストの話をしちゃうとあれなんだけど、さっきちょっと言ったけど、やっぱり認知症の部分の最後の進行っていうか、ただどこまで話すかあれなんだけども、最後アリスとしてはもうかなり進行していて、どうしようもなくなってしまっている状態だけれども、
あなたですよね、このジュリー大塚さんの視点というかからすると、何か一つ持ち帰ることができたような終わり方をしていて、なんかそれは個人的にはちょっと感動する部分でもあったかなっていう。すごく感動するところなんだけれども、ちょっとこれ受け取り方が難しい部分でもあったなとちょっと思いながら、複雑な気持ちで読み終わるっていう。だからね、読み終わった後いろいろ考えてしまう作品なんだよね。
そうですね。なんかあの感情としては、このアリスの娘さんにやっぱりちょっと自分を重ねてしまうところがあってですね。
やっぱりこの娘さんはちょっと後悔しているところがあって、多分両親にとっては自慢の娘だったと思うんですけども、やっぱりその仕事とかして作家になって、なかなかその両親のこと、お母さんのことにそこまで寄り添ってあげることができなかったんじゃないかって思っていたりしてっていう。
なんかアリスの娘からすると、その認知症になったお母さんがこの開業施設に入っている時の状態で多分マイナスな、このマイナスっていうのがなんかそのなんていうのかな、なんか気持ち的にはマイナスなところから始まっていて、そうですね。
で、ラストに向けて後悔しているだけじゃなくて、このお母さんに寄り添っていこうとするっていうですね。だんだんこのマイナスからちょっと浮上していくようなところがあってですね。
たしかに浮上感はあるね。
そうですね。だからそこのところの感情というか、いやでもこれ結構きついというかですね、個人的にかなり泣きそうになったのはこの135ページなんですけども、アリスの娘さんが開業施設に行って、そこには高齢の女性が多いみたいで、一部男性がいるみたいなんですけども、ランチルームの時ですね、各テーブルに高齢の女性たちがいて。
で、お母さんに微笑みかけをかけたら、それは違う人やって、アリスではなかったと。で、よく見るとその隣のテーブルでランチを黙って食べている、ゆっくりと下動作で食べている人がいて、それがお母さん、アリスだというですね。
この描写、こうやって話していると何ともないかもしれないんですけど、この描写を読んでいるときはすごいちょっとね、泣けてきてですね、お母さんという人がちょっと他人の中にいるお母さんみたいなですね、そういう距離感でちょっと見えてしまったっていう、なんかその娘さんのこの心情というか。
なんかそれを思うと、ちょっと細かい、いや細かいですけど、なんかそういう、なんかね、これがちょっと自分だったらというか、なんかちょっとこの娘さんにちょっと重ねてしまうところが結構ありましたし。
ここちょっと、なんかやばい、やばいというかそうですよね。自分のお母さん間違えるっていうね。しかも多くは語られていないからあるけど、多分いろんな感情の流れがそこにはあって。
で、今割と後半の話をしてしまったんですけれども、前半のプールの話少しもうちょっとしたいと思っていまして、特にですね、一章二章プールの話しかないんですけど、このプールに関しての考察みたいな、なんていうのかな、状況の説明がめちゃめちゃ面白くて。
これがやっぱりのめり込んでしまう部分ではあったんですけど、地下に集まってきている人たちがこういろんな人がいましたと。で、地上ではいろいろ各々の生活があって、なんか交わることはないんだけれども、スーパーとかで会ってしまうと。
そうすると一瞬誰だかわかんないし、どんな挨拶していいかわかんないしみたいな。後衣室で裸ではいろいろ話すけれども、服を着た状態で会うと何も話せないみたいな。なんかそういう話とかがあって、面白いなと思って。
これなんか馴染みの場所でよく会ってる人と全く違う場所で会うと、一瞬誰だかわかんなくなる感覚にめっちゃ似てるなと思っていて。あれ、この人絶対会ったことあるけど誰だっけみたいな。そういう感覚に似てて、すごい面白いなってちょっと思いながら読みました。このプールの描写がやっぱめちゃめちゃ面白いよね。
そうですよね。しかもプールに集まってる人たちがまた個性的な人が結構多くて、この語り手の人の情報収集力がすごいというか、プールに何十年も通ってる人だからっていうのはあると思うんですけども、この人はこうでこの人はこうでとかである人はテレビの司会者かな。善良な人として世間でイメージされてるけど、実は治官の常習犯だったとかですね。そんなこととかも掴んでいたりするとかですね。
面白いです。このプールの中だと自分が何者でもないっていう、その感覚を大切にしているっていう。今の社会だと自分が何者であるのかっていうのが大事だっていうかですね。そこをちょっと意識させられる、意識を向けさせられるところがあると思うんですけど、逆にプールに入る人々、プールを求める人々っていうのは何者でもない自分を求めているのかなと。
だからそこに安心感とか、そこの生きてるっていう感覚を味わえるっていうか、そんなことがね、ちょっと感じる。だからこのプールの描写はすごいいいなと思いましたね。
そうですね。確かに何者でもない感じになれる場所って、確かに今、現代ってなかなかないかもしれないからめっちゃいいよね。
僕も昔、社会人になった頃に一時期ジムに通っていたときは、週に3日ぐらいひたすら運動して帰ると。それはリフレッシュの効果があったと思うんですけども、行くと必ずいる人とかいるんですね。
僕は筋トレの機械とか、ここにはこの人がいるみたいなんですね。そういうルーティンというか、そういうのを持っている人がやっぱりいてですね。プールとかジムとか、やっぱりそういう要素があるんだろうなって思いましたし。
これで体を動かすことでなんか得られる安らぎというか、なんかそういうのもね、わかりますし。
うん、そうだよね。うん、確かに。そっか、俺ジムって通ったことないから、その感覚があんまりないのかな。なるほど。
ジムとかやっぱりそうなんですよね。曜日とか時間とか、この曜日のこの時間に行くとかって決めてる方が絶対続くと思いますし。
うんうん、そうだよね。そうなると同じ人ばっかいるわけ。
しかもこの小説では、結構プールに依存するような人々もやっぱり描かれていて、直木賞を取った奥田秀夫さんのイン・ザ・プールっていう小説があって、昔読んだことあるんですけども、ちょっとね、どういう話かもう忘れてはしまったんですけども、
イン・ザ・プールの世界観とも多分重なるところあるんじゃないかなと思いますし、イン・ザ・プールもなんかそのプールが良いして、そこにのめり込んでしまう人の話ですね。
というのを精神科医の主人公がちょっと選ぶという。精神科医のシリーズだよね。そうです。精神科医の人がそれに対処するみたいな話ですね。
そうか、プールってあれか。やっぱり水の中って音も遮断されるし、なんかすごい自分に潜っていけるっていうか、自分だけになるのかな。
そうかもしれないですね。そこでヒビが入った時のこの感覚。方から見ているとそこまでそんな気にしなくてもと思いつつ、プールに通っている人からすると、これはもうとんでもない嫌な予感がするっていう。
もうこの世の終わりだみたいなぐらいに思えてしまうっていう。結構なんかそれが人生と重なるところがあると思いますし、このプールで毎日決まったレーンをね、
何往復するみたいな自分の泳ぎを繰り返していくっていう。それも人生だと似たと言えると思いますし、そこにヒビが入るっていうのもそれも人生なのかなっていうですね。
そうですね。メタファーって大地さん言われてましたけど、本当にね。
そうですね。このヒビはね、なんかいろんなものに捉えることができるので。
特に後半の展開を読んでいくより、そうですね。最初のプールとヒビっていうのは人生に重ねていけると思いましたね。
じゃあ最後、感想とどんな人に読んでもらいたいか話して終わりたいと思います。
結構いろいろ話してきたけども、気になったら読んでもらいたいなって思ったのと、真口がめちゃめちゃ広い小説だと思うので、どんな人にでも合うかなって思うので、気になったら本当に読んでもらいたいですね。
で、多分独語感めちゃめちゃいいっていうかなんだろうな。読んだ後にいろいろ感じるところ多いので、ぜひ短いですし、気になったら配信がまだ夏かなと思うので、夏も感じられる一冊だと思うので、ぜひ読んでいただけたらなと思います。
そうですね。確かにこのSWIMMERSを選んだのって、夏にぴったりそうっていう。
そうだったね。
しかも150ページぐらいで結構簡単に読めるかもって思ったのが最初のきっかけだったんですけども、本当プールの話面白いですし、その先の話もやっぱり読んでいくとすごい驚きとかいろいろ感情を揺さぶられる話が待っているので、