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父の夢 原作 アジシユウジロー 脚色 未知のみちる
あ、あ、もしもし。ああ、元気にしてるか?
俺は元気だけど。
俺も元気だ。
なんか調子悪そうな声だけど。
疲れてるだけだよ。とこに変わりないさ。
あんま無理しないでよ。若くないんだし。
いや、父ちゃんまだ若いぞ。
絶賛稼ぎ時の年頃だ。
ああ、はいはい。
あ、でね、僕さ、プロのチームに入ったんだよ。
プロ?そっちの世界ってそんなもんまであるのか?
日本じゃまだメジャーじゃないし、日本人では少ないしね。
すっげえなあ、プロアスリートかよ。
日本飛び出して、アジア制覇して、世界かあ。
まあ、父ちゃんのおかげ。
受験時のあれ、先行投資させられたわけか。
で、本拠地って言えばいいのか?やっぱり東京とかが。
いや、デンマーク。
デンマーク?と?
うん。でもほら、日本でも試合あるしさ。
まあ、そん時は宝の山でも持って帰ってきてくれや。いいなあ、お前。
うらやましがってるとは思ってた。
なんとなくさ、分かってきたよ、父ちゃんの夢。
お?お前、冒険家に転職か?プロチームに入ったばっかりなのに。
そんなわけないじゃん。
だよなあ。洞窟連れて行こうとしたら、暗くて怖いだ。変な虫そうだ。
傷つくくらい嫌そうな顔されたしなあ。
俺も早くガッツリ稼いで世界中巡りたいね。
遺跡周りの夢叶えるまでは死んでたまるか。
そう思うんだらさ、無理はやめてね。
そうは言っても忙しいんだよ、ここのとこ。
いつも忙しいでしょ、父ちゃんは。
まあ、そのうち俺が父ちゃんの冒険のスポンサーになってやるって。
頼もしいね。大きくなったなあ。
なんだよ、そんなしみじみと。
反省してるんだよ。
は?
最初はこっそりバカにしてた。
今さらだよ、今さら。知ってたしね。
アスリートか。
あ、そうだ。
何?
よく覚えとけ。勝負は時の運。
トラック上でも、ウェブ上でも、人生でもな。
コンスタントに結果を出し続けるってのは難しいことだ。
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うん。
お前さ、シビアな世界で戦ってるんだろうからさ、
それに比べればちょっとくらいの無理が俺にはちょうどいいんだよ。
大げさだし、むっちゃくちゃだなあ。
いいんだよ、気にすんなよ。
父親の見栄だ。
で、お前今どこにいるんだ?
あ、ドバイ。大きな大会があってさ、
ネット観戦あるから後でアドレス送るよ。
お前パケット代大丈夫か?
しかし目に焼き付けたいとなあ、楽しみだわ。
今はパケ放題ってのもあるんだよ。
嘘、マジで?
大げさ。
だって大きな大会なんだろ?
まあ、そうだけどさ、
まったくさ、疲れすぎじゃない?
体壊すよ。
はい、はいはいはいはい。
お宝待ってるよ。
あ、ごめんごめんごめんごめん。
キャッチキャッチキャッチ。
仕事の電話だな、こりゃ。
じゃあな、がんばれよ。
水谷さん、検査のお時間ですよ。
すみません、つい長電話に。
うちの息子、
Eスポーツのプロ選手でしたね。
頼みますよ、先生。
宝の山が待ってました。
先生の腕、信じてますよ。
