思わぬトラブル続出
小島ちひりのプリズム劇場
この番組は、小島ちひり脚本によるラジオドラマです。
プリズムを通した光のように、さまざまな人がいることをテーマにお送りいたします。
一瞬ビクッとした画面を見ると、管理会社と表示されていた。
30秒ほど着信音は流れ続け、突然止まった。
俺は部屋を見渡す。
1LDKの部屋はごちゃごちゃと物であふれ、布団の上にも飲みかけのペットボトルが転がったりしている。
半年前までこの部屋はもっと片付いていた。
ゲームをしていれば飯は出てきたし、洗濯も掃除も全部水木がやっていた。
生活費も最初は接班していたが、俺が仕事を辞めてからはなんだかんだ言っても水木が出してくれていた。
水木は俺のことが好きだから、何も言わなくても全部やってくれる。そう思っていた。
なのにある日突然、水木はいなくなった。
いらっしゃいませ。
家にいると気がめいるので外へ出た。
適当に入ったコンビニでは、店員が揚げ物をケースに入れている。
さすがに何か働かないとと思い、求人紙を手に取り脇に挟む。
気分が上がらないからビールを手に取りレジへ行く。
いらっしゃいませ。
店員は手際よくレジを操作し、
292円です。お支払いは?
カードで。
表示変わりましたらお願いします。
俺はいつも通りカードをかざした。
あれ?
エラーっすね。もう一回やるんでお願いします。
俺はもう一度カードをかざした。
すいません。調子悪いのかな?
他の支払い方法ってあったりします?
あ、じゃあ現金で。
俺は小銭入れを出す。
えーっと、292円と。
すいません。ありがとうございます。
何回小銭入れを揺らしても、100円玉が1枚しか見えない。
いや、50円玉が2枚あれば、
ない。
すいません。小銭足りないみたいで。
あ、ほんとっすか。
これキャンセルで。
特速状を見つける
なんかすいません。また出直しますわ。
ありがとうございました。
俺はやれやれと店を出た。
そういえば、今日は何を食おう?
牛丼でも食いに行くか。
駅前の牛丼屋の券売機の前に立った。
今日はまともに食ってないし、張り切って大盛りにしてやるか。
タッチパネルを操作し、支払い方法をクレジットにする。
カードを差し込み、しばらく待つと。
あれ?
もう一度操作してみる。
どうなってるんだ?
どうなさいました?お客様。
会計ができなくて。
クレジットカードですか?
はい。
何か時期が強いものに近づけたりとかしましたか?
いや、いつも通り財布に入れてただけですけど。
じゃあ失礼ですけど、支払い忘れとか。
俺はハッとした。
そうだ、そう言われればクレジットカード会社から何かハガキが来ていた。
面倒だからその辺にやってしまったが、あのハガキは今どこに?
お客様?
す、すいません。出直します。
俺は慌てて店を出た。早歩きで家へ向かう。
家の前に誰か立っている。小柄のおっさんだ。
俺はとっさに壁に隠れる。
戸崎さん、戸崎総一郎さん、いらっしゃいませんか?
戸崎さん、管理会社の者です。
俺の心臓は信じられないくらいバクバクとなっていた。
今出て行ったら、終わる。
おっさんはため息をつくと、ポストに何かを入れてこちらに歩き出した。
俺は慌てて植木の陰に隠れる。
おっさんは俺には気づかず、スタスタと歩いていった。
おっさんが立ち去ったのを確認し、
俺はなるべく静かに部屋に入る。
おっさんがポストに入れたものを確認する。
特速状と書かれていた。
俺は慌ててスマホを見る。
メッセージアプリの友達一覧を順番に見ていく。
あや、えりこ、けいこ、さとみ、しおり、ちえ、まいか、
いた。
もしもし?
あ、もしもし?まいかちゃん?俺、そうちろうだけど。
あー、そうちゃん。久しぶりー。どうしたの?
ちょっとお願いがあってさー。
俺はできるだけ明るい声で話し始めた。
いかがでしたでしょうか?
感想はぜひ、ハッシュタグプリズムアプリで教えてください。
それでは、あなたの一日が素敵なものでありますように。
小島千尋でした。