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音声業界の海外市場が見えてくる番組、PODCAST AMBASSADOR。
この番組では、自称オーディオジャーナリストであるあらいりなが、音声を通じて、音声業界の気になるニュースや注目の動きをお伝えします。
音声配信者やポッドキャスターが知っておきたい情報、音声配信が気になっている企業に役立つ視点を、業界目線とリスナー目線でお届けしていきます。
さて、前回のエピソードでは久しぶりに海外の音声業界のアップデートをしていきましたが、
その中で個人的に注目したのが、南アメリカでのポッドキャストの伸びようでした。
そこから関連して今回は、実は最近も注目されている、いわゆるポッドキャストの吹き替え版、多言語放送のトレンドについて取り上げたいと思います。
実は日本でもアメリカで配信されている番組の日本語吹き替え版が、昨年末から配信されています。
そんなコンテンツをボーダレスに楽しめる時代が、ポッドキャストにも来ているのか、振り返ってみたいと思います。
本編は今年2月に放送したエピソードの再放送となります。
それでは、ポッドキャストの多言語放送トレンド、お楽しみください。
本編の書き起こしをご覧になりたい方は、概要欄にリンクを貼っておりますので、そちらからご覧ください。
今回のテーマである多言語放送トレンド、まずは今回Amazonに買収されたワンダリーの戦略についてです。
前回のエピソードでも少し触れたのですが、この会社は既に多言語放送を2019年から開始しています。
最初に多言語放送された番組はドクチャーデス、このポッドキャスト第2話で取り上げたワンダリーの代表作品の一つです。
もともと2018年9月に英語版がリリースされて人気番組となったのですが、それから約1年弱経った2019年の8月、7カ国語に翻訳、吹き替えされて配信されました。
その7カ国語とは、中西スペイン語、カタルーニャ語、ドイツ語、フランス語、中国語、ポルトガル語、そして韓国語。
また、ワンダリーは翻訳、吹き替えした多言語コンテンツ制作だけにとどまらず、いろんな面からのローカライゼーションも同時にしています。
まずは配信プラットフォーム。
AppleやSpotifyといった世界的プレーヤーだけではなくて、例えば中国ならヒマラヤのように、例えば中国語圏で強みを持つプラットフォームと手を組んで配信をしているのです。
さらに音声広告についても同様で、各国の広告会社と契約を結ぶという衆投っぷりです。
コンテンツ、配信プラットフォーム、広告と三本仕立てなローカライズ戦略です。
ちなみにこの1番組だけにとどまらず、前回の放送で取り上げたビジネスウォールスというビジネスドキュメンタリー系の番組も多言語放送されています。
続いては他社の動きについて。
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ここでは多言語放送で注目された他社の放送、そして大手の動きも合わせて3つ取り上げたいと思います。
まず1つ目はRTEというアイルランド放送協会の事例です。
これ実は多言語放送ニュースの中では結構注目を浴びた番組として紹介されているのです。
なぜかというと番組リリース当初から5カ国語同時配信をしているからなんです。
番組名はThe Nobody's Own。
ロンドンで起こった殺人事件の真相を追ったトゥルークライムジャーヌの番組です。
2020年の頭に英語、デンマーク語、スペイン語、ドイツ語、そしてアイルランド語と5カ国語で配信をされました。
また実はそれだけではなく、オーディオシネマバーベーションというYouTuber版も同じくリリースをしていて、
多言語にとどまらず多様なプラットフォームに同時配信をしたという面白いチャレンジをした番組です。
そして2つ目の事例はSpotify。
ポッドキャスト事業にここ数年力をどんどん入れていますよね。
ここも実は2018年にバイリンガル番組をリリースしていました。
言語は英語とスペイン語。
番組名はChapo。
トゥルークライムジャーヌの番組で、メキシコの麻薬密売組織の幹部、通称El Chapoの声声を描いた番組です。
イメージで言うと、ネットフリックスの番組でナルコスというのがありましたよね。
コロンビアの麻薬王の史実を元に作られたドラマだったと思うんですが、それと似たようなイメージだと思います。
こちらはSpotifyとニュースメディアであるVice Newsが共同で制作された番組で、スペイン語圏にも進出するテスト的な意味合いもあったのではないかなと思います。
そして最後の事例はiHeartMedia。
iHeartMediaはアメリカ大手のネットラジオ会社で、世界中のユニークダウンロード数、ストリーミング数で一位を誇る大手のポッドキャスト配信会社です。
ここも実は2019年、人気番組を5カ国語に翻訳・吹き替えすることを発表したんですね。
ただ、現在2021年になってもまだ配信されていないんです。
これをリサーチしたところ、現在は他のスタートアップ企業と協力して、当初の予定とは違う番組を多言語配信する方向で進めているようです。
昨年は多くのポッドキャスト番組でも、緊急事態宣言でインタビューや取材に思うようにいけなかったり、収録がスタジオではなく自宅のクローゼットで行われたりと、なかなか普段通りにいかなかったこともあると思うんですが、
この多言語放送というプロジェクトもアイハートメディアにとっては計画変更となったものの一つだったんだと思います。
今挙げた3つの事例以外にも、ちらほらと独立系ポッドキャストで多言語配信を進めている事例は見られるんですが、
そもそも選ばれる言語というのはですね、例えばスペイン語や中国語のようにその言語発車が多い順というだけではなくて、
例えばその番組の世界観がマッチする国とか文化というところが言語選択の一つの要素にもなっているようです。
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そこで、ではどんな番組だったら日本語吹き替えの対象となるのかというところなんですが、
ついに出てきました。前回のエピソードで紹介したビジネスウォーズ、これが代々的に日本語訳されたアメリカ発の番組です。
この番組、ワンダリーが配信するいわば英語ポッドキャスト版ガイアの夜明け的な番組として前回紹介したんですが、
いろいろあるシーズンの中でも取り上げられたのはニンテンドー対ソニーの回。
もちろん先ほど挙げたように番組の内容がバッチリマーケットにあったシーズンを皮切りに日本語版がリリースされました。
このシーズンオリジナルの英語版は2020年の2月に配信されたんですが、それから約半年後の9月に日本放送から配信されています。
ここも単にポッドキャスト媒体でリリースするのではなくて、日本の音声放送を手と組んで配信するというワンダリーのローカライズ戦略をちゃんと取ってますよね。
ちなみにこの番組、国内でも結構反響が大きかったようで、ついにシリーズ第2弾も今月2月18日に配信される予定です。
選ばれたシーズンはこちらも前回紹介したナイキ対アディダス。今後他のシーズンも配信されるのか注目しています。
さてここからは完全に私の個人的な予想での深掘りなんですが、この番組、ワンダリーはそもそもの英語版制作当初から日本語版リリースを念頭において制作をしていたんじゃないかと思っています。
最初にワンダリーが行った多言語放送のドクターです。これは最初の英語版と多言語版のリリースとの間に1年近くのタイムラグがありました。
それが今回日本語版のビジネスウォーズの場合は6ヶ月、約2倍のスピードで作り上げているんですね。
もちろんドクターですの場合は一気に7カ国語への吹き替えということや各国の配信プラットフォームや広告会社との契約など初めてのことで時間もかかっていたんでしょうが、
すでに経験を積んでいるワンダリー側からすれば新たな国への進出を見込んで番組のテーマ選出の時点からすでに下準備を進めていたということは十分にあり得るんじゃないかと考えています。
そこで最後に多言語放送というのが音声メディアにとってどんな立ち位置になっていくのかという今後の予測についてです。
これについては多言語放送の取り組みをリードしているともいえるワンダリーのCEOエルナン・ロペス氏の言葉をちょっと引用したいと思います。
世界のスマホ利用者数の90%はアメリカ国外なのにもかかわらず、ワンダリーの国外視聴者数はたったの22%しかいない。
この言葉、要は現在彼らの作っているコンテンツはまだまだ海外で伸ばせる余地があるということを言っているんですよね。
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現在の市場の見方として多言語放送に注目が集まっているのは当然、ただ音声業界としてそこに足を踏み入れているプレーヤーはまだまだ少ないといった状況です。
そこでよく引き合いに出されるのがネットフリックス。現在世界190カ国で視聴可能なだけではなく、各国の独自のコンテンツ作成にも力を入れています。
もちろん動画のネットフリックスと音声のポッドキャスト、それぞれの多言語展開の規模感には大きく差があるんですが、視聴者としてコンテンツをボーダレスに楽しめることが当たり前になりつつある現状で、音声コンテンツだけその流れに沿わないというのはちょっと考えにくいですよね。
現在はほぼポッドキャストの聖地ともいえるアメリカ発信の番組を多言語展開という流れが主にはなっているんですが、例えば以前ブログでも取り上げたインド国内のポッドキャスト事情のように、例えばヒンディ語からタミル語というように同じ国の中でも多数の言語が混在する国では多言語化のマーケットがすでに十分あったりしますし、
また例えば、ネットフリックスのテラスハウスの世界的ヒットと同じく、独特な文化拝見をもとにした日本語から英語へのポッドキャストの多言語放送というのももちろん可能性としてはあるんじゃないでしょうか。そう考えると、この多言語放送というトレンド、エルナン・ロペス氏の挙げた視聴者数の数値から見た市場の見方がより納得できるように思います。
さて、今回の放送いかがだったでしょうか。ポッドキャストの多言語放送トレンドについて様々な海外事例をもとにまとめてみました。この情報、実は昨年末の放送なのでまた変わってきていると思うんですが、今まで映画だったりテレビの字幕版や吹き替えを日本国内で私たちが楽しんできたように、今後音声コンテンツの吹き替え版、これあると絶対楽しいだろうなと個人的にも感じてきました。
実は以前、このポッドキャストの吹き替え版を私もプロジェクトとして作ったことがあるんですが、著作権の問題でおくらえりとなっています。また今後ですね、新たなパートナーを見つけられたらこれをビジネスにしたいという思い、何年も持ち続けているんですよね。
そんなポッドキャストの吹き替え版についての内容は以前この番組のポッドキャスト翻訳プロジェクトというミニシリーズで配信をしておりますので、よかったらぜひ聞いてみてください。
今回のエピソードの感想は書き起こし配信をしているノートのコメント欄やツイッターにてお待ちしております。そして今回の放送が役に立った、面白かったという方は、ぜひApple PodcastやSpotifyからのフォローやレビューも嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。ポッドキャストアンバサダーのあらいりながお送りしました。それでは次回のエピソードで。