2023-01-30 09:12

ビートルズが日本にやって来た!②「ビートルズ対策会議で警備に臨む警視庁」

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昭和41年の春、当時警視庁警備課長だった山田英雄は、部下数人を連れ東京・北の丸公園の武道館周辺を歩いていた。あと2カ月もすればビートルズがやってきて、この武道館でコンサートを開く。ファンをどう誘導するか、警備の下見だった。
武道館の北側にある田安門にさしかかったところで、こちらもコンサート見学の下見らしい三人の少女に出くわす。「君たち、ビートルズが来るけど、公演を見に来るのかい」と尋ねる山田に、少女たちは屈託(くったく)なく答えた。
「もちろん。足の一本折ってもいいから、客席から飛び降りてでも舞台まで行って、抱きついてキスするんだ」・・・

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00:01
戦後史開封
ビートルズが日本にやってきた
第2話 ビートルズ対策会議で警備に臨む警視庁
ご案内役は私、ナレーターの小杉和則がお届けします。
昭和41年の春
当時警視庁警備課長だった山田秀夫は
部下数人を連れ東京北の丸公園の武道館周辺を歩いていた。
あと2ヶ月もすればビートルズがやってきて
この武道館でコンサートを開く。
ファンをどう誘導するか警備の下見だった。
武道館の北側にある田安門に差し掛かったところで
こちらもコンサート見学の下見らしい3人の少女に出くわす。
君たちビートルズが来るけど公演を見に来るのかい?
と尋ねる山田に少女たちはくったくなく答えた。
もちろん足の一本折ってもいいから客席から飛び降りてでも舞台まで行って
抱きついてキスするんだ。
山田はこう打ち明ける。
最初は武道館を使う音楽会に過ぎず
さほど警備に手間はかかるまいと思っていた。
それが少女たちの生の言葉を初めて聞いて
これはファンというのはものすごい大変だということで
我々おじんも真剣に警備を練ろうということになった。
警視庁もビートルズとは一体何者だ?と首をひねった口だった。
そこでまずビートルズ研究に取りかかる。
雑踏警備係長の山下哲の話である。
私も全然ビートルズは知らなかった。
新聞雑誌テレビのニュースなど
ビートルズに関するものは全部集めて読んだり見たりしました。
調べが進むにつれわかったことは
ビートルズが訪れた先々で大変な事件が起きているということだった。
来日前に当時の西ドイツのハンブルクで行われたコンサートでも
ファンが暴動を起こし負傷者が出るなど
各地での熱狂ぶりにはすさまじいものがあった。
山下はある日部下数人と共に都内で上映していたビートルズの映画
03:02
アハードデイズナイトを見に行き
ショックに追い討ちをかけられる。
映画なのに少女たちは叫び
スクリーンにほうずりするわ失神するわで
教祖様みたいなものですよ。
これは大変だと覚悟を決めた。
警備の拠点は晴田空港
宿舎となる東京永田町の当時の東京ヒルトンホテル
そして武道館。
警視庁は連日ビートルズ対策会議を開き
警備計画を練ったが
最も不審したのはコンサート会場でのファンの飛び降り
将棋倒しなどの防止だった。
ステージのある1階には客を入れないことにしたが
ある日武道館内の客席を360度見渡した山田は
2階席3階席の最前列の手すりが低く
ファンが容易に身を乗り出せることに気付く。
試案の挙句に警視庁がひねり出したアイディアは
パイプ柵だった。
2年前の東京オリンピックの際に
マラソンなどの誘導路を確保するため
神宮外苑一帯の沿道に設置したパイプ柵を
警視庁はまだ大量に保管していた。
山田は早速客席最前列の手すり部分に
柵を取り付けさせたのだが
後でステージ脇からコンサートを見守っていた山下には
監修がまるで檻の中に入っているように思えた。
客席の通路には私服警官を座らせ
客席の中にも潜り込ませる。
麹町署警備課長の川原春夫は
ビートルズのファンというのは
一犬吠えると万犬吠えるで
少しでも立ち上がろうとすれば
先手先手で抑える必要があったと語る。
とはいえ少年少女が相手だ。
ソフトな警備を印象付けるため
山田は警察官に白手袋を着用させることを思った。
一方で主催者側には
ビートルズを一歩もホテルから出さないでほしいときつく言い渡した。
6月29日午前3時44分
ビートルズを乗せた日本航空機が台風4号の煽りで
当初の予定より大幅に遅れて晴れなに到着した。
読売新聞の事業本部企画部員だった伊藤昭彦によれば
06:04
一時は羽田ではなくファンを避け
米軍横滝地を使うという構想もあり
極秘に交渉した。
しかし幸か不幸か到着が未明になったため
大きな混乱はなく羽田に降りる。
パトカーに先導され
首都高速で羽田から宿舎の東京ヒルトンホテルへ向かう車の窓から
初めて目にする東京の景色を見合っていたビートルズのマネージャー
ブライアン・エプスタインは上下線とも全面通行止めになっていることも知らずに
東京の道路は空いているなとつぶやいた。
ビートルズの4人を乗せた黒塗りのキャデラックを運転していた
共同企画社員のヒダイサオは
警察はどこそこの通過は何分何秒だとそこまでやった
と苦笑する。
山下によると
まさに黒品大工で大の警視庁が振り回されたともいえるが
河原はその理由をこう語る
一つは異常ともいえるファン審理による死傷事故に大変神経質になった
もう一つはビートルズは英国女王から大英帝国勲章をもらっており
彼らに怪我でもあれば外交問題になりかねないという心配もあった
当時は過剰警備との批判も浴びた警視庁だが
河原は何事もなく正しい判断だったと思う
今にすれば楽しい警備だった
東京オリンピックが終わり
学園紛争が始まるまで一服した時期に起きた平和な事件でした
と振り返る
次回は第3話
チケットの応募総数21万通
引きこもごもだった公演当日をお届けします
産経新聞社がお届けする戦後紙開封
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