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戦後史開封
ビートルズが日本にやってきた
第4話 外出禁止の4人
ご案内役は私、ナレーターの小杉和則がお届けします。
ビートルズのメンバーが日本に滞在していた
昭和41年7月初め
宿舎の東京ヒルトンホテル実会の
1005号室プレジデンシャルスイートを
赤坂の芸者4人が訪れた。
ビートルズの4人があまりに退屈しているのを見かねた
プロモーターの長島達司がこっそり呼んだのだ。
芸者集は踊りや小歌、シャミセンを披露したが
長島によればビートルズはあまり関心を示さなかったという
4人は厳重な警戒態勢のもと
公演の時以外は外出禁止の行使なき牢獄に閉じ込められていた。
部屋で絵を描き、レコードを聴き
唯一の楽しみといえばコンサートが終わり
ホテルのサウナに入ること。
一度だけ地下1階のナイトクラブスターヒルに行き
ピアノを弾いたりした。
来日当日の29日午後6時過ぎ
俳優で歌手の香山優蔵がお忍びで訪れた。
小柄なはずのリンゴスターと握手した香山が
でかいなと不思議に重い足元を見ると
高げたを履いていた。
4人は香山が持参したLP
ハワイの休日にレコードバリを落とし
夕食を共にしながら3時間も過ごす。
今でも何一つ古さを感じさせる曲はない。
そこがビートルズの偉大なところ
という香山はこう振り返る。
ジョージは東洋に憧れていて
インドの音楽に興味を持っていると言っていた。
彼が時折カメラを持って窓の方へ行き
外を取ると下の方でファンがキャー
すき焼きを頼んだら
4人とも箸の使い方がわからず
一本の箸でブスッと突き刺したりしていた。
ジョンは一本は椅子じゃないよと言って
床に正座してふざける。
かっこ悪いからサインしてくれとは言えなかったが
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心の中にサインは残っている。
やがてポール・マッカートニーが音を上げた。
外の空気が吸いたいんだ。
なんとか連れて行ってよ。
共同企画社員の中村実に何度も哀願した。
警察がついているから無理だ。
勝手な行動は許されないんだよと渋る中村に
ポールも諦めず交渉は成立した。
7月1日午前11時15分
ポールはマネージャーの一人マル・エバンス
それに中村と連れ立って部屋を出た。
中村は上司や同僚にさえ内緒の毒弾だったと打ち明ける。
最上階の10階フロア全部が貸し切り。
ビートルズとそのスタッフの他
警察や主催者など関係者が陣取り
私服の警察官が常に厳しいチェックの目を光らせている。
ロビーにある3台の客室エレベーターのうち
10階まで登れるのは警察官が乗っている1台だけで
他は9階泊まり。
奥にある従業員用エレベーター3台は2台が9階まで
1台が9階から10階専用で
途中で乗り換えなければならない。
従業員用エレベーターに乗り込んだポールたちは
案の定血相を変えてついてきた私服の警察官と推し問答になる。
構わずロビーを通り正面からホテルを出ると
用意してあった車に滑り込んだのだが
すかさず警察官も飛び乗ってきた。
中村が運転する横で警察官は逐一無線連絡を入れている。
神宮外苑へ行くがポールは面白くないというので皇居へ向かい
二重橋で車を降り玉砂利を踏みしめた。
間もなくパトカーが到着し皇居滞在。
わずか5分で無念にも御用となったポールはこうつぶやいた。
どうして僕だけなんだ。
今頃ジョンはショッピングしているのに。
実はジョンレノンもこっそりホテルを抜け出し
原宿の表参道にあるオリエンタルバザーなどで
ホットお品を買い漁っていた。
こちらは長髪をかき上げピンで留め帽子をかぶるなど変装した上で
ビートルズのスタッフのカメラマンがジョンとそっくりで
その通行証を召し上げ借用したため警察官にも気づかれずに済んだ。
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翌日ビートルズとの単独インタビューに成功した音楽雑誌
ミュージックライフの編集長星香留美子にポールはこう語った。
こっそり皇居前で散歩して帰ったら大目玉さ。
でも日本独特で美しかった。
ホテル周辺をぐるりとファンが取り囲む。
ホテルに部屋を取り客として潜入していたファンもいる。
ルームサービス担当だった餅月忠孝はこう話す。
実会で使われたシーツやフォークなどの食器をエレベーターで一度9階に下ろすんですが
9階に泊まっている女の子が20人くらいおり
これビートルズが使ったんでしょと群がってきてわーっと全部持っていかれた。
スタッフが使ったものもあるのに悲惨な目に遭いました。
彼女たちが奪い去ったシーツかどうかはわからないが
後になってビートルズが使ったというシーツがコマ切れで売りに出されたことがある。
ホテルの屋上から両足を友達につかませ逆さずにになり部屋を覗き込もうと考え
寸前で警察官に制止された命知らずの少女もいた。
ビートルズの宿泊料は締めておよそ250万円。
当時東京ヒルトンホテルの営業部員だった島岡俊夫は宣伝効果の方が大きかった。
当時ヒルトンはできたばかりでタクシーも来てくれず我々が拾いに行っていたんですが
ビートルズの後は来るようになったと語る。
次回は最終話彼らが残したものをお届けします。
産経新聞社がお届けする戦後紙開封。
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