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今晩は、今夜もまた、おやすみ歴史ラジオの時間がやってきました。 ベッドに入って、一番リラックスできる姿勢で聞いてね。
前回は、跡継ぎ争いに危機感を覚えたおふくが、追瀬参りと偽って寸布城の家康公へ命がけの直走を行い、見事な大逆転劇によって竹千代の跡継ぎの座を決定づけたところまでを見てきましたね。
大御所である家康公の鶴の一声により、江戸城の流れは一気に変わりました。 もう竹千代の味方をする者は誰もいません。そしてついに待ち望んだその日がやってきます。
竹千代は厳復して家光と名乗り、堂々と三大将軍の座へと就任したのです。 かつて暗い部屋の隅で孤独に震えていたあの少年が天下の頂点に立つ。
その姿を誇らしげに見つめながら、おふくはこれまでの苦難がすべて報われたような深い感動に包まれていました。 しかしおふくはそこで満足して歩みを止めるような女性ではありませんでした。
将軍となった家光を間近で支えながら、おふくの胸にはある強い決意が芽生えていました。 それは自分が経験したような身内同士が跡継ぎをめぐって激しく争い、血を流し合うような悲劇を二度とこの江戸城の中で繰り返してはならないという強い思いでした。
政治を行う表の舞台と将軍のプライベートな空間が曖昧だからこそ、様々な人間の思惑が入り込み争いが生まれてしまう。 ならば誰も立ち入ることのできない将軍の四次を残すためだけの独立した仕組みを作ればいい。
そう考えたおふくは江戸城の奥深く、誰も立ち入ることのできない最強の砦、大多くの組織作りに着手します。それはこれまでの常識を覆す鉄の規律で縛られた女性たちだけの世界でした。
表の政治から完全に隔離され、将軍の命を狙う毒殺や暗殺の危険から身を守り、徳川の血筋を未来永劫へと確実に繋いでいくためのシステム。 おふくはそのすべてのルールを自ら作り上げ、大多くの総取締まり、つまり最高権力者である霞の局という名を朝廷から授かることになるのです。
王逆臣の娘として生まれ、一時はすべてを失ってどん底の生活を送っていたあのおふくが、今や天下の将軍を背後から動かす、国で最も影響力のある女性となって大多くの頂点に君臨していました。
最高権力者である霞の局となり、大多くの頂点に立ったおふくは、毎日隅々にまで鋭い目を光らせていました。少しの妥協も許さないその姿勢は、周囲から厳しすぎる冷徹な鬼のようだと恐れられることもありました。
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しかし、おふくはそんな陰口を気にすることなど、とうの昔にやめていました。自分がどれほど嫌われようとも、悪者になろうとも、命を懸けて守ると誓った家光が、誰にも脅かされることなく安心して天下を治められるなら、どんな泥でも喜んで被る覚悟ができていたからです。
おふくにとっての幸せは、自分が褒められることではなく、家光が立派な性分であり続けること、ただそれだけでした。そんなおふくの深い愛を、家光もまた誰よりもよく理解していました。
身の母との間に深い溝があった家光にとって、おふくこそが唯一、心の底から甘えることができ、同時に最も信頼できる人生の詩だったのです。二人の絆を表す、ある有名なエピソードがあります。
ある時、家光が重い病に倒れてしまいました。医者たちが手を尽くしても熱は下がらず、江戸城内が絶望に包まれる中、おふくはただ一人、神仏に向かって祈り続けました。そして、おふくは一つの誓いを立てたのです。
それは、上様の命を助けてくださるならば、私はこれから死ぬまで、一切の薬を口に致しません、というあまりにも過酷なマイルールでした。おふくの祈りが通じたのか、家光の病は奇跡的に回復します。
家光は涙を流して喜びましたが、同時におふくの体が心配でなりませんでした。頼むから薬を飲んでくれ、と何度も頭を下げる家光に対し、おふくは静かに首を振りました。一度神仏に誓ったマイルールを破れば、再び上様の身に災いが降りかかるかもしれません。
おふくは微笑みながら、その誓いを生涯、頑固なまでに貫き通したと言われています。しかし、そんな強いおふくの体にも、確実に老いと病の影が忍び寄っていました。それから数年後、今度は本当におふく自身が、病の床に伏せることになってしまったのです。
日に日に病が重くなり、自分の命の灯火が消えかけていることを悟ったおふくは、静かに死を待っていました。神仏への誓い通り、差し出される薬には決して手をつけようとはしません。そんなおふくの枕元へ、引き止める家神たちを下がらせて、三大将軍である家光が駆けつけました。
今や立派な天下人となった家光でしたが、横たわるおふくの前では、かつての孤独な少年、竹千代に戻ったかのように、その大きな目から涙をぼろぼろとこぼしていました。
おふく、私のためにそこまで体を痛めつけて、なぜ薬を飲んでくれないのだ。お前がいなくなってしまっては、私はこれから誰を頼りに生きればよいのだ。取り乱す家光の手を、おふくは残された最後の力でそっと握り返しました。
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その手はとても小さく、すっかり痩せていましたが、家光にとってはかつて暗闇から救い出してくれた、あの温かくて力強い手のままでした。おふくは息も絶え絶えになりながら、しかしはっきりとした口調で、愛する我が子のような将軍に最後の言葉を残します。
泣いてはなりませぬ、上様、私は大逆心の娘として生まれ、本来なら生きていることすら許されない身でした。それなのに、上様の恩馬となり、こうして徳川の未来を築くお手伝いができた。これ以上の幸せがどこにありましょうか。
おふくは家光の涙を拭うように微笑み、さらに言葉を続けました。私の命はここで尽きますが、私が築った多くは、これからも上様と徳川の血筋を命懸けで守り続けます。ですから上様、どうか悲しみにとらわれず、この平穏な世を強く優しく導いて下さいませ。それこそが私の生きた証にございます。
おふくのその強い眼差しを見て、家光ははっと胸をつかれました。この人は、最後の最後まで私のために、徳川のために、自らの命を燃やし尽くそうとしている。その大いなる覚悟が、家光の涙を止め、その心に熱い火を灯したのです。
わかりました。おふく、お前が命を懸けて守り、育ててくれたこの天下を、今度は私が命を懸けて守り抜いてみせる。安心して眠るがよい。家光の力強い言葉を聞き届けると、おふくは満足したように深く深く息を吐き、静かにその激動の生涯を閉じました。
王逆臣の娘から王国の頂点へ、己の定めに決して屈せず、ただ一つの愛とマイルールを貫き通したかすがの曲の美しい最後でした。おふくが去った江戸城には、深い悲しみが広がりました。しかし、その翌日、家臣たちの前に現れた三大将軍、徳川家光の瞳には、もう涙はありませんでした。
その顔には、おふくから受け継いだ、何者にも負けない強い意思と、真の天下人としての覚悟が、はっきりと刻まれていたのです。おふくが命懸けで繋いだバトンは、今、しっかりと次の時代へと引き継がれました。
さあ、かすがの曲がその命を捧げて守り抜いた三大将軍、徳川家光は、これから一体どのような江戸の世を作り上げていくのでしょうか。それはまた次のお話。今夜はもうゆっくりお休みね。おやすみなさい。