こんにちは。株式会社KAZAORIの矢沢 彩乃です。
推し活未来研究所へようこそ。
この番組では、ますます盛り上がりを見せる
推し活をビジネスの視点から、そして時には私自身の経験も交えながら、楽しくそして深く紐解いていきます。
私は普段、推し活をテーマにしたビジネス、
例えばファンの皆さんがイベントを一緒に盛り上げられる
福ートというサービスを提供しています。
それと同時に、ベーシストとしてアーティストさんのバックでベースを弾かせてもらっているので、
推す側と推される側、両方の視点を持つ私だからこそ見えてくる
推し活の面白さや可能性を皆さんと共有したいなと思っています。
さて皆さん、仕事の合間などにコーヒーを飲んだり、ちょっとカフェで仕事なんてことありますよね。
その時、どこのお店を選びますか?
私はよくスターバックス、スタバを選んでしまうんですよね。
そう、本日のテーマは、スタバと推し活、現代最強の推されるブランドはいかに生まれたか、です。
この緑のマーメイドのロゴを見ない日はないかもしれません。
私たちの日常に深く根付いて、もはや推しと呼べるほど愛されている存在になっています。
SNSを見れば、スタバ新作、今日のスタバカスタム、
スタバで勉強タイムといった投稿で溢れ、好きなアイドルのアクリルスタンドと一緒にグラベチーノを撮ったり、
友達と集まってグッズを広げたりする光景はすっかりお馴染みになりました。
なぜ多くの人々が、ごく自然にスターバックスという空間に引き付けられ、そこを自分の居場所として選ぶのか。
実は最近、その理由が腑に落ちるようなあるきっかけがあったんです。
それが、一冊のフォントの出会いでした。
元スターバックスコーヒージャパンCEO、岩田松尾さんの著書、
スタバ社長だった父が息子に綴る仕事と人生の本質です。
この本は単なるビジネス書ではありませんでした。
岩田さんがご自身の2人の息子さんに向けて綴った40通を超える手紙という形を取った、とても温かいメッセージだったんです。
私もよくビジネス書などを読むのですが、この本一冊で仕事の本質をすべてわかりやすくまとめてくれているなと感じました。
もし読書が苦手という方でも、すごく読みやすい一冊だと思います。
そして、読み終えて気づいたんです。
私がこれまでスタバに対して感じてきた心地よさや、ファンたちが自然と集う理由、
そのすべてがこの本に書かれている哲学、岩田さんが大切にされてきたミッションという考え方につながっていると。
このミッションという考え方がキーワードになり、すべての軸だったんです。
まるでこれまで見てきた現象の裏側にある仕組みや、根本的な考え方を初めて見せてもらったような感覚でした。
そこで今日の推し勝つ未来研究所は、この岩田さんの著書から得た感動と洞察を新たな視点として、もう一度スタバと推し勝つの世界を研究していきたいと思います。
スタバが押されるブランドである理由は、決して匠のマーケティング戦略だけにあるのではありません。
それは一人のリーダーが信じ、会社全体で実践し続けた人間中心の揺るぎない哲学がめぐりめぐって私たちのもとに届き、
文化として花開いた結果だったんです。
この壮大な物語を皆さんと一緒に紐解いていきたいと思います。
番組を聴いての感想や、あなたのスタバ推し勝つエピソードなど、ぜひハッシュタグ推し勝つ未来研究所でシェアしてくださると嬉しいです。
それでは早速本編に入っていきましょう。
まずスタバが、なぜこれほどまでに私たちの日常に不可欠な存在になったのか。
その根幹には、あまりにも有名なサードプレイス、つまり第三の居場所という概念があります。
家庭が第一の場所、職場や学校が第二の場所、そしてそのどちらでもない社会的な役割から解放され、自分らしさを取り戻せるニュートラルな空間が第三の場所です。
しかし岩田さんの本を読んで、私はこのサードプレイスという概念のさらに奥深い意味に気づかされました。
これは単なる優れたマーケティングコンセプトではなかったんです。
これはスターバックスが掲げるあるミッションを物理的な空間として形にしようとする試みそのものだったんです。
スターバックスには世界共通のミッションがあります。
それは人々の心を豊かで活力あるものにするために、一人のお客様、一杯のコーヒー、そして一つのコミュニティからというミッションです。
サードプレイスとは、この人々の心を豊かで活力あるものにするという抽象的なミッションに対して、スターバックスが出した具体的な答えだったんです。
どうすればコーヒーを通じて人々の心を豊かにできるのか、その問いへの答えが、家でも職場でもない心からリラックスできる空間を提供することだったんです。
そう考えると、スタバの店舗デザインのすべてが、このミッションを達成するための緻密な設計であることがわかります。
例えば、店内のBGMや人々の話し声が混じり合った、あの心地よい環境音。
これには、F分の1揺らぎと呼ばれる、人の心を落ち着かせる効果のあるリズムが含まれていると言われています。
また、一人で集中したい人のための窓際のカウンター席と、友人との会話を楽しむためのソファー席が自然に分けられていることや、温かみのある照明の色合い。
これらはすべて、お客様の心を豊かにするという一点から逆算されてデザインされているんです。
皆さんは、仕事をしたり作業をするとき、静かなところやイヤホンなどで自分の環境を整えるタイプでしょうか。
私は割と、程よく周りの環境音があった方が仕事がはかどるタイプです。
逆にイヤホンなどで音楽などをはっきり聞いていたり、静かすぎる環境だと集中できないタイプかもしれません。
店内の食器の音や、たまに聞こえる人の会話、小さめの音楽など、ちょっとザワザワした感じの方が落ち着きますね。
つまり、私たちがとりあえずスタバでとなるあの居心地の良さは、風船の産物ではありません。
それは壮大なミッションを達成するために、空間の隅々にまで埋め込まれた哲学の表れなんです。
ファンが求める心理的な安全自体は、企業が掲げる人を大切にするという理念そのものによって作り出されていたんですね。
スタバはコーヒーを売っているのではありません。
ミッションを体現した体験と空間を私たちは買っていたんです。
スタバの大きな魅力の一つが、豊富なカスタマイズオプションですよね。
シロップの変更、ミルクの種類、ソースの追加、この自由度の高さが推し活文化と非常に高い親和性を持っていると感じています。
このカスタマイズの魅力は、自分だけの推し方を見つける喜びにあるのかもしれませんね。
実は、もともと私はスタバデビューがすごく遅くて、スタバってサイズの名前も独特だし、カウンターでいざメニューを見てもカタカナばかりでよくわからなくて緊張してしまって、最初はすごく苦手でした。
実は、私10年以上前にアルバイトでキュレーションサイトのライターをやっていたことがあったんです。
そこで、スタバ初心者向けのオーダーの仕方やメニュー紹介の記事を書いたんですが、それがめっちゃ当たっていろんなネットニュースに取り上げられたんです。
それが私のスタバ推しになったきっかけで。
すごく余談なんですが、今ってAIで文章をほとんど書けちゃうけど、本当にまだ10年くらい前ってちゃんと人が書いてたんですよね。
調べたりすることもあって、1記事2、3時間はかかってましたね。
10年経つとこんなにAI技術が進化して、一瞬で記事が書けちゃうような世の中、改めて時代を感じます。
さて、スタバの話に戻しましょう。
SNSでもたびたび話題になる推しカップを皆さんご存知でしょうか。
これはスタバのモバイルオーダーペイという事前注文システムを利用した遊びで、アプリに登録するニックネーム欄に自分の名前ではなく推しの名前や推しに関連するメッセージを入力するんです。
すると商品を受け取ったとき、カップに貼られたラベルに自分の推しの名前が印字されているんですね。
たったそれだけのことなのに、ただの紙コップがその瞬間自分と推しだけの特別なグッズに生まれ変わるんですよね。
ライブ会場に近いスタバ店舗などで推しの名前をニックネームにしていたら、店員さんからライブ楽しんでくださいねなんてメッセージが書いてあることもあるそうです。
こういう遊び心もスタバならではですよね。
もう一つの創造的な遊びが推し色ドリンクです。
これは推しのイメージカラーに合わせてドリンクの見た目をカスタマイズするというもの。
例えば推しが赤色担当だからファッションティーにホワイトモカシロップを追加してピンク色のドリンクを作ろうといった具合に、
ファンは豊富な選択肢を駆使して、まるで絵の具を混ぜ合わせるかのようにオリジナルのドリンクを創作しています。
これは自分の推しへの深い知識と愛情を表現する極めてクリエイティブな活動になっているんです。
これらの現象を見て、私はこれまでスターバックスはファンに遊びの余白を提供しているのがうまいなと考えていました。
企業がこう楽しんでくださいと指示を出すのではなく、ファンが自分たちの文脈で自由に使いこなし、新しい文化を生み出している。
これこそ現代におけるブランドとファンの理想的な関係性だと。
しかし岩田さんの本を読んで、この遊びの余白がどこから生まれてくるのか、その根源を理解することができました。
それはスターバックスの内部に深く根付いた信頼とスタッフに判断を任せる文化がそのまま外側のお客様との関係に反映された結果だったんです。
岩田さんの哲学の中心には、人を信じ任せるという考えがあります。
その最も象徴的な事実が、スターバックスには接客方法を細かく定めたサービスマニュアルが存在しないということです。
これは後ほど詳しくお話ししますが、会社が従業員、パートナーを心から信頼している証です。
この内部での信頼と自由の文化が、ブランド全体の雰囲気を作り出します。
マニュアルに縛られず、自分の頭で考えて行動することが推奨される職場で働くパートナーたちは、自然とお客様に対しても柔軟で、心が広い姿勢で接することになります。
この内側から滲み出る自由な空気を、私たち顧客は無意識に感じ取っているのではないでしょうか。
だからこそ、ファンはこんな風に使ったら怒られるかなと躊躇することなく、ニックネーム機能で遊んだり、複雑なカスタムを考えたりできるんです。
ブランドが提供するシステム、モバイルオーダーというキャンバスに、自販家が自由に絵を描けるのは、そのキャンバスの周りの空気そのものが信頼と許容に満ち溢れているからです。
顧客が感じる創造的な自由は、従業員が受け取っている組織的な自由が鏡のように映し出されたものだったんで。