受胎告知の概要
ボイスドラマ「ダ・ヴィンチの受胎告知 光と色彩の対話」
誠実な空気に包まれた美術館。人々のざわめきも遠のき、柔らかな光が一枚の大きな笑顔をたらしています。
これはルネッサースの巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた受胎告知。
絵の前には、ゆっくりと手を伸ばす一人の男性、トミーと、その隣に立つ女性、マリアがいます。
トミーが静かに絵の前に立ち止まり。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「ねえ、マリア。これがダ・ヴィンチの受胎告知なんだね。どんな絵なのかな?みんなすごく静かに見ているみたいだけど。」
優しく微笑み、トミーの手にそっと触れる。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「うん、そうだよ、トミー。すごく静かで美しい絵だよ。私がゆっくり全部説明してあげるね。目を閉じて耳を澄ましていて。」
トミー「うん、お願いするよ。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ「まず、絵全体の構図から話すね。絵は大きく分けて二つのエリアに分かれているの。向かって右側に、聖母マリアがいて、左側に彼女の前に跪く大天使ガブリエルがいる。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ「二人の間に空間が広がっていて、その向こうには美しい風景が描かれているんだ。」
トミー「ガブリエルとマリア、二人とも描かれているんだね。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ「そう。じゃあ、まずは左側。大天使ガブリエルからね。彼はね、天使らしくとても大きな白い羽を持っているの。
まるで鳥の羽みたいに、一枚一枚が繊細に描かれていて、光を浴びてキラキラしているみたい。
髪はね、ふわりとしたブロンドで、天使の頭のてっぺんから光が射しているように見えるの。」
トミー「白い羽か。きっとすごく神聖な雰囲気なんだろうね。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ「その通り。そして彼は白い衣装を着ているの。布のひだがすなやかで、まるで風に揺れているみたい。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ「彼はね、右手を聖母マリアに向けて、何かを伝えようとしているの。その手の表情がすごく丁寧で真剣なんだ。」
ナレーターは、マリアの声は、まるで筆がキャンパスをなぞるように、トミーの心に情景を描いていきます。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「さあ、次は右側の聖母マリア。彼女は落ち着いた表情で座っているわ。
絵の詳細と技法
着ているのは鮮やかな青いマントと、そのひたから見える赤い服。この青はね、ただの青じゃないの。夜空のように深く、静かで、品のある色なの。ダ・ヴィンチがこの色を出すために特別な顔料を使ったって言われているわ。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ「深い青色。きっとマリアの静かな心を表しているのかな。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ「うん、そうかもしれない。彼女の髪もブロンドで、とても柔らかそう。ガブリエルとは違って、彼女の視線はね、少し下を向いているの。何かを静かに受け止めているような、そんな眼差し。手には白い百合の花を持っている。これは純潔の象徴なんだって。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ「白い百合の花。そうか、大天使ガブリエルが百合を持ってきたんだね。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ「いいえ、違うの。百合の花はマリアが持っているの。百合は純粋さの象徴だから、マリア自身がその純粋さを持っていることを表しているのかもしれないね。」
ナレーターがゆっくりと絵の背景へと目を移します。二人の後ろには庭が広がっているの。手前にはいろんな種類の草花が咲いていて、とても生命感があふれている。そしてその向こうには遠くに梅が見えるの。穏やかな源と船が浮かんでいて、そのさらに奥にはぼんやりと霞んだ真山山が描かれているんだ。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「遠くに霞んだ真山山か。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ「これが、ダ・ヴィンチのすごいところなんだよ。スフマートっていう技法で輪郭をぼやかして空気や光の揺らぎを表現しているの。だから遠くの風景がまるで霧がかかっているみたいにすごく柔らかく見えるの。この技法のおかげでこの絵全体にふわっと温かい空気が漂っているみたい。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ「ぼんやりと霞んで柔らかい空気。ガブリエルの白い羽根。マリアの深い青いマント。そして、百合の花。すべてが静かで穏やかなんだね。ありがとうマリア。なんだか本当に絵が見えたような気がするよ。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ「うん。よかった。この絵はきっと、光や色彩だけじゃなくて、二人を包む空気や静かな心の動きを描いているのかもしれないね。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ「二人は言葉を交わすことなく、しばし絵の前に立ちつけします。ダ・ヴィンチが描いた光と色彩は、トミーの心に確かにその姿を映していました。」
