ウルビーノのヴィーナスの解説
ボイスドラマ、ティツィアーノのウルビーノのヴィーナス。
秋の日の午後、ある美術館の一室。
ルネッサンスの巨匠ティツィアーノの描いたウルビーノのヴィーナスの前に、
マリアとトミーは立っていました。
光沢のあるニスに守られた銘画は、静かに、そして感濃的な美しさを放っています。
トミー、いよいよこの絵の前だね。
ティツィアーノのウルビーノのヴィーナス。
名高いこの作品を、君の言葉で感じさせてくれるかい?
ええ、もちろんです、トミー。
深呼吸して、私の言葉の筆で、あなたの心にこのヴィーナスを描いていくわ。
ナレーター、全体の構図と主要な描写。
まず、この絵の全体の構図からね。
画面の手前、ほぼ中央を占めているのは、
寝石に横たわる一人の女性、ヴィーナスよ。
彼女は、干渉者である私たちの方を向き、とてもくつろいだポーズをとっているわ。
横たわっているんだね。その女性と背景との配置は?
彼女の横たわる空間は、豪華な宮殿の一室のよう。
背景は左右に大きく二分されていて、
左側がヴィーナスが横たわる室内、
そして右側は、彼女の背後の壁と厨廊を通して見える遠景の風景になっているわ。
手前の女性の豊かな肉体と、奥の日常的な空間や風景の対比が、この絵の大きな魅力よ。
ナレーター、ヴィーナスの描写と色彩。
さあ、主役のヴィーナスよ。
彼女の肌の色は、まるで磨かれた真珠のように明るいアイボリー色で表現されているの。
とても滑らかで温かみを感じる柔らかな光沢を放っているわ。
その肌に対して、彼女の髪の色は?
髪はテチアーノが得意とした燃えるような赤みがかった金色。
まるで熟した小麦のような色。
豊かに波打って枕の上に広がり、その金色の房が白いシーツの上にこぼれているわ。
なるほど、温かさと光を感じるね。
彼女は何か着ているの?
いえ、彼女は裸体よ。
ただし、完全に裸体というわけではないの。
左手には、薔薇のような白い蕾の花を優しく握っている。
そして、右の手で恥じらいと感濃を同時に示すように、端部を軽く覆っているの。
この仕草が、この絵に人間的な親密さを与えているわ。
その視線はどこを捉えているんだい?
彼女の目の色は、はっきりとは見えないけれど、暗く魅惑的よ。
そして視線は、まっすぐ、干渉者である私たちの方を向けられている。
それは、挑発的でもあり、同時に静かに語りかけてくるような非常に強い視線よ。
彼女の表情は穏やかで自信に満ちていて、まるで、これが私よ、と言っているようだわ、慣れた。
周囲の色彩と細部、彼女が横たわる寝台は白いシーツに覆われているけれど、
その上から真空色の布が、ビーナスの体の下に優雅なドレープを描きながら敷かれているわ。
この真空色が、彼女のアイボリー色の肌を際立たせる、ドラマチックな色彩のコントラストを生み出しているわ。
白と真空色の対比か、それが彼女の裸体をより印象付けるんだね。
その通り、そして足元に注目して、彼女の足元には小さな愛らしい犬が一匹丸まって眠っているの。
この犬は忠実さの象徴とも言われているわ、慣れた。
奥の風景と次女たち、絵の奥の右を見てみて、そこには二人の次女が描かれているわ。
彼女たちは控えめな服を着て、大きな木製のチェスト、あるいは滑走音と呼ばれる婚礼用の衣装箱を覗き込んでいるの。
一人はひざまずいて、もう一人は立って中の服を取り出している様子ね。
婚礼の支度か。日常的な光景が混ざっているんだね。
次女たちの服装やその滑走音の色は?
次女たちの服装は落ち着いた茶色や灰色といった地味なトーンよ。
そしてその滑走音は濃い茶色で描かれて、この日常的な空間の静けさを象徴しているわ。
その部屋の向こう側?
その次女たちがいる空間のさらに奥、窓や中楼を通して遠くの風景が見えているわ。
空の色は夕暮れに近い柔らかな青で、地平線近くはピンクやオレンジに染まっているよう。
木々の緑は深い青緑で描かれて、全体的に温かく落ち着いたトーンで室内とつながっているの。
これは単なる神話の女神ではなく、現実の女性が持つ人間的な美しさと家庭的な幸福を表現していると言えるわ。
ナレーター
マリアの丁寧な説明にトミーは静かに耳を傾け、彼の心の中にティチアーノの描いた鮮やかなビーナスの像が結ばれていきます。
作品の魅力と感情
マリア、君のおかげで僕は今このビーナスの肌の温かさ、燃えるような金色の髪とあの強い視線を感じることができたよ。
真空色とアイボリーのコントラストがこんなにも美しいとはね。本当にありがとう。
どういたしまして、トミー。絵はいつだって心で感じることができるものよ。
ウルビーノのビーナスは今も静かにその感能的な人間的な輝きを放っています。