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2025-09-06 05:10

ターナー「雨、蒸気、スピードーグレート・ウエスタン鉄道」

世界の名画ランキング第38位 ターナー「雨、蒸気、スピードーグレート・ウエスタン鉄道」のご紹介

サマリー

このエピソードでは、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの絵画『雨、蒸気、スピードーグレート・ウエスタン鉄道』について語られています。視覚に障害があるトミーと彼の友人マリアが、この作品を通してスピードや自然の対比を感じながら、その美しさを体験しています。

絵との出会い
雨、蒸気、スピードーグレート・ウエスタン鉄道 秋の午後、美術館の前に立つ二人の姿がありました。一人は視覚に障害を持つ男性
トミー。もう一人は、そんな彼にいつも寄り添い、世界の美しさを言葉で伝える女性、マリアです。 今日のお目当ては、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの
雨、蒸気、スピードーグレート・ウエスタン鉄道。 トミーは、マリアの言葉を頼りに、その絵の前に静かに立ち止まりました。
これが、ターナーの雨、蒸気、スピードーグレート・ウエスタン鉄道。
うーん、マリア、どんな絵なんだい? なんだか、蒸気機関車の音が聞こえてきそうだ。
ふふっ、本当に音が聞こえてくるみたいね。 そうねー。
まず、全体を見てみて。 この絵は、画面の右から左へ斜めにぐんと伸びる鉄橋が主役になっているわ。
ちょうど真ん中あたりに、黒い機関車がこちらに向かって走ってきているのが見える? うーん、見えないけれど、鉄橋が斜め?
ね、すごいスピードで駆け抜けている感じなのかな? その通り、すごいスピードよ。
この絵の構図全体が、その疾走感を強調しているの。 機関車は、画面の右端から中央に向かって、私たちに迫ってくるように描かれているわ。
はあ、具体的にはどんなものが描かれているんだい? 一つずつ教えてくれる?
マリアがトミーの腕を優しく引きながら、少し絵に近づきながら。 ええ、もちろん。まず、絵の真ん中あたり、機関車から説明するわね。
その機関車は、ほとんど黒い塊のように? その塊から、ものすごい勢いで白い蒸気が吹き出しているの。
その蒸気が、機関車を覆うように、また上空へと立ち上っているわ。 でも、機関車の形ははっきりとは描かれていなくて、
スピード感と蒸気の勢いが強調されているの。 うーん、蒸気が立ち上っているんだね。
まるで生きているみたいだ。 そうよ。そして、その機関車が走っている鉄橋は、まるで細い線のように描かれているわ。
自然と文明の対比
この鉄橋が、画面を斜めに横切っているから、さらにスピードを感じるの。 鉄橋の下は薄暗い水面と、そこに架かる橋のアーチが見えるわ。
風景はどんな感じなんだい? それがね、この絵の一番面白いところよ。
機関車の周りは、全体的にぼんやりとしているの。 雨が降っているから、景色が滲んでいるように見えるの。
右側には、雨に煙る川が描かれているわ。 川の水は、暗い灰色や茶色っぽい色で、鈍く光っているの。
雨、そうか。 だからこんなに景色がぼんやりしているんだね。
そうなの。 そして、その川の向こう側には、ぼんやりとした家々や木々が見えるわ。
全部が、雨と蒸気で霞んでいるの。 空もね、明るい黄色やオレンジ色と、薄いグレーが混じり合っていて、
まるで夕焼けのようにも見えるし、雨上がりの光のようにも見える。 この全体的に曖昧な色彩が、この絵に神秘的な雰囲気を与えているの。
人や動物は描かれてる? ええ、いるわ。
鉄橋のすぐ手前、画面の左下あたりに、うっすらとウサギらしきものが描かれているの。 ウサギは、機関車から逃げているように見えるわ。
でも、ウサギの体もはっきりとは描かれていなくて、ほとんど白いぼんやりとした塊のようね。 そのすぐ下あたりには、漁師と思われる人影も見えるけれど、これもはっきりとはわからないの。
ウサギが逃げているのか。 早いものとゆっくりしたもの。
なんだか文明と自然の対比みたいな感じだね。 すごいわ、まさにその通り。
ターナーはこの絵で、新しく登場した蒸気機関車がもたらす速さや力と、それまであった自然やゆっくりした時間の流れを対比させているのかもしれないわね。
それに、この絵にはターナー独特の光と色の表現が詰まっているの。 油絵の具を重ね塗りして、まるで水彩画のような透明感を出しているわ。
マリアの言葉に傾けながら、トミーは静かに目を閉じていました。 彼の心の中には、雨の中を疾走する蒸気機関車と、ぼんやりと霞む風景と、光と色の神秘的な世界が鮮明に描かれていたことでしょう。
言葉が二人の間に目に見えない美しい橋を架けていたのです。
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