コローの作品の紹介
ボイスドラマ、コローのモルトフォンテーヌの思い出。
ある日の午後、tomyとマリアは美術館のベンチに座っていた。
マリアはtomyに、コローという画家が描いたモルトフォンテーヌの思い出について話そうとしていた。
tomyはヘッドホンを外し、マリアの方に顔を向ける。
マリア、今から私が話す絵は、コローという画家が描いたモルトフォンテーヌの思い出っていう作品なの。
うん、知ってるよ。でも、どんな絵なのかは想像がつかなくて。
そうだね。この絵は、まるで柔らかな夢の中にいるような、とても静かで美しい風景画なんだ。
全体の構図から説明するね。絵は横長で、まるで窓から外を眺めているみたい。
手前には大きな池があって、その向こうに背の高い木々が並んでいるの。
そして、その木々の間から遠くの森が見える。
池に木々、なんだか少しひんやりした空気を感じるね。
その通り。まさにそんな感じ。まずは手前の人物から説明するね。
絵の右下には、二人連れの女性が座っているの。
二人の女性?
うん。一人は少し奥に、もう一人は手前に座っている。
奥の女性は背中をこちらに向けていて、青みかかったグレーの服を着ているの。
手前の女性は私たちに横顔を見せていて、淡いピンク色の服を着ているの。
二人とも髪は茶色で、一つにまとめられているみたい。
肌の色は少し色白で、とても滑らかな感じ。
この二人は静かに池を眺めているように見える。
その女性たちの様子が目に浮かぶようだ。穏やかな表情をしているのかな。
うん、そうだと思う。
特に表情ははっきりとはわからないんだけど、その佇まいから、とても落ち着いて平和な時間を過ごしているのが伝わってくるの。
それに、彼女たちの視線は遠くの方、池の向こう側を向いているわ。
絵の感情と解釈
なるほど。その二人以外に人は?
いるの。絵の中心、池の向こう側の土手の上に、もう一人黒っぽい服を着た女性が立っている。
この女性は何かを積んでいるように見える。彼女の姿はとても小さくて、まるで風景の一部みたい。
その女性がいることで、絵に奥行きが生まれるね。
そう、まさにそうよ。そして、この絵の一番の特徴は、その色彩と光なんだ。
全体を覆っているのは、霧がかかったような何とも言えない優しい色合い。灰色がかった緑や少し青みかかった空、そして池の水面は空の色を映して淡いグレーになっている。
光はどんな感じ?
光はね、とても柔らかな光なの。強い日差しではなくて、水面に反射して木々の葉をぼんやりと照らしているような、この光が絵全体を優しく包み込んでいる。
コローの絵って、いつもこんな風に空気や光の存在を感じさせるんだ。
マリアはゆっくりと、まるで絵の中の風景を指さすように言葉を続けた。
トミーは目を閉じて、その言葉を一つ一つ丁寧に心の中に描き出していく。
池の水面は本当に静かで、その水鏡には木々のアゲがぼんやりと映っている。
そして遠くの森は、さらに霧がかかったような薄い緑色に見える。
まるで現実の世界と夢の世界の間にいるような不思議な感覚になるの。
マリアの説明を聞いていると、僕もその場所にいるような気がしてきた。
静かで優しい時間が流れている場所なんだね。
そうなの。きっとコローはこの場所で感じた穏やかで懐かしい気持ちを絵に込めたかったんだと思う。
ただの風景画ではなくて、心の中にある思い出を表現した作品なの。
だから、モルトフォンテーヌの思い出っていうタイトルなんだと思う。
トミーは静かにうなずき、マリアもまたその柔らかな色彩を心に描きながら、静かに微笑んだ。
二人の間には温かく心地よい沈黙が流れていた。