ロートレックとムーラン・ルージュの導入
ボイスドラマ、ロートレック、ムーラン・ルージュに入るラ・グリュ。舞台の照明がゆっくりと落ち、ジャズのピアノが静かに流れ始めます。
パリの喧騒が遠くに聞こえるような雰囲気。秋の夜、パリのムーラン・ルージュ。華やかな喧騒の中、一人の女性がその入り口へと向かっていました。
その姿を、画家ロートレックが描き出します。彼の代表作の一つ、ムーラン・ルージュに入るラ・グリュ。
マリア、この絵はね、ムーラン・ルージュの入り口を描いているの。絵の真ん中に一人の女性が立っていて、まるでスポットライトを浴びているみたいに見えるのよ。
ほう、その女性がラ・グリュっていう人なんだね。
そう、彼女はムーラン・ルージュの人気ダンサーだったの。絵の構図はね、少し変わっているんだ。
右側に黒い大きな帽子の男性が何人かいるんだけど、顔はぼやけていて、なんだか脇役みたい。
その人たちが大きな影を作っているの。一方で、絵の中心にいるラ・グリュは光の中にいて、とてもはっきりと描かれているんだよ。
絵全体が彼女に注目が集まるように描かれているんだよ。
照明がより一層ムーラン・ルージュの赤を思わせるように変化していきます。
画面の右側には黒いシルエットのような男たちが描かれています。
彼らはロートレック自身とその友人たちで、画家は自らの姿を主役であるダンサーの引き立て役として配置したのです。
ラ・グリュの姿を詳しく説明するね。
彼女はね、明るい黄緑色の服を着ているの。
袖はふんわりと膨らんでいて、とても軽やか。
襟元はフリルになっていて、白いレースが何層にも重なっているように見えるわ。
髪はね、明るいブロンドで、ふんわりと頭の上でまとめられている。
そして前髪が特徴的なの。
短いんだけど、くるんとカールしていて、額に張り付いているみたいに見えるのよ。
肌はとても白くて、まるで陶器のよう。
でも、目の周りや頬には少し赤みがさしていて、それがすごく色っぽく見えるの。
黄緑色の服か。華やかな場所にはぴったりの色だね。
うん、そうなの。
そして顔立ち。
彼女の鼻は少し高くて、口元は小さくキュッと引き結ばれている。
目はね、はっきりと黒く描かれていて。
視線はまっすぐこちらを見ているというよりは、少し斜め上を向いているの。
まるで何か遠くを見ているような、少し憂いを帯びたような表情に見えるんだ。
音楽が少しだけ大きくなり、賑やかさを増す。
彼女の表情は、ただのダンサーの姿だけではなく、その内にある孤独や憂鬱も感じさせます。
絵の感情と影響
華やかな世界の光と影を、ロートレックは彼女の瞳の中に映し出しました。
ねえマリア、この絵はね、音で言えば、賑やかな音楽と静かなため息が同時に聞こえてくるような感じかな。
うん、マリアのおかげで、その絵が見えた気がするよ。
光と影が交錯するパリの夜、ロートレックの描いた世界は、今も多くの人々の心をとらえ続けています。