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ボイスドラマ エゴン・シーレ 家族
美術館の静かな一角 エゴン・シーレの絵画の前に一国の男女が立っています。
彼女の名前はマリア。 彼の名前はトミー。
トミーは生まれつき目が見えません。 マリア、
今日は、シーレの家族という絵だよ。 シーレの家族?聞いたことあるよ。
でも、どんな絵なんだろう? うん。
じゃあ、私がトミーの目になって、この絵を丁寧に説明するね。 この絵の正式な名前は応用なんだけど、一般的に家族と呼ばれているの。
ナレーター 全体の構図と人物
まず絵の全体像からね。 この絵には3人の人物が描かれているの。
真ん中に男性、 その左側に女性、そして2人の足元に小さな子供が座っている。
この絵はね、未完成なんだ。 特に背景は描きかけのままで、人物だけがはっきりと描かれている。
未完成なのか。 そう。
構図はね、3人がまるでピラミッドのようにまとまっている。 特に男性と女性が体を寄せ合っていて、子供を包み込んでいるような形になっているよ。
ナレーター 人物の描写と色彩
まず真ん中の男性。 これがシーレ自身と言われているの。
彼は裸で左腕を女性の肩に回して抱き寄せている。 彼の体はとても痩せ細っていて、肋骨が浮き出ているのがわかる。
肌の色は灰色がかったくすんだ色で、正気が感じられない。 髪はショートで黒いね。
大きな目は少しうつろでどこか一点を見つめている。 視線は定まらない感じかな。
正気がない肌、灰色なんだね。 そう。
次に彼の左側にいる女性。 彼女はシーレの妻、エイリットだと言われているの。
彼女も裸で男性に身を譲けている。 彼女の体も男性と同じように痩せている。
肌の色も男性と似ていて、土のような茶色に近い灰色。 でも男性よりも少しだけ温かみがあるように見える。
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髪はショートで、男性より少し明るい茶色だね。 視線はね、伏し目がちで少し下を向いている。
女性も痩せているんだね。 そして最後に2人の足元にいる子供。
この子供も裸で男性と女性の間にちょこんと座っている。 この子の体はまだ未熟で肌の色も男性や女性よりも少しピンク色がかっている。
髪は金髪で天使のようにも見えるんだけど、 顔には表情がなくて目も閉じているように見えるよ。
目を閉じているのか。 うん。
3人とも何かを失ったようなとても悲しい雰囲気が漂っているんだ。 ナレーター。
風景と背景。 背景はね、ほとんど描かれていないんだ。
人物の周りに茶色やグレー、黒の絵の具が塗り付けられているだけ。 まるで彼らが何もない空間にポツンと存在しているみたい。
彼らの足元には土のような茶色と緑の絵の具が滲んでいるように描かれている。 これが地面を表しているのかもしれないね。
何もない空間に家族がただいる。 ナレーター。そう。
この絵を描いた時、シーレは妻のエイディットとお腹の中にいた子供をスペイン風邪で亡くしたばかりだったの。
だからこの絵には彼が家族を失った悲しみや孤独感が強く表現されている。 未完成なのは彼自身が絵を完成させる気力さえ失ってしまったからだと言われているんだ。
そうだったんだ。 そんなに悲しいお物語があったんだね。
マリア。 ありがとう。
なんだか絵のことが少しわかった気がするよ。 どういたしまして。