ノト丸
こんにちは、今日の探究へようこそ。今週もですね、#毎日未来創造の活動
Week12人間拡張を一緒に見ていきたいと思います。サブタイトルは"考えるハラワタの時代"。未来のモノゴトのプロトタイプ
これを通じてその可能性を探っていくという取り組みです。今日私たちが深く掘り下げていくのはEpisode4で発表された
SFショートショート〈思考翻訳機〉、それとその創作の裏側を語る、"あとがき的対談"
この記録ですね。これらの資料からコミュニケーションの未来とか
テクノロジーが私たちの関係性、あるいは人間らしさにどういう変化をもたらすのか一緒に考えていけたらなと。
早速なんですけど、ちょっと想像してみてほしいんです。あなたも言葉を交わさなくても相手が考えていることとか
その場の雰囲気みたいなものがなんとなく伝わってくる、そういう瞬間ってありませんか
今日の物語っていうのはまさにそうした感覚がテクノロジーによって増幅されたちょっと先の未来を描いているんですよね
物語の舞台は2053年です。キーになるのが[The Interpreter]っていう耳につけるタイプのデバイスなんですね
これが思考をリアルタイムで相手の母国語に翻訳しちゃうと、これが広まった当初、期待されたのはどんな世界だったと思います
ブク美
やっぱり言語の壁がなくなって、誤解による争いも消えて、外交とかビジネスとかも極限まで効率化される
まるで言葉の呪縛から解放されたユートピアみたいな感じですよね
ノト丸
まさにそうですね。言語フリーで、ダイレクトにコミュニケーションが取れるっていう夢のような技術ですよね
資料を読むとこの技術、実際に国際会議なんかでの同時通訳のタイムラグをなくしたりとか
他言語が関わるプロジェクトの進行を劇的に早めたりとか、そういう目覚ましい効率化を実現したってありますね
ブク美
表面的には本当にコミュニケーションの多くの障壁が取り払われたように見えたんでしょうね
ノト丸
そうそうなんです。表面的には。でもこの物語はそこに潜んでいるちょっと複雑な側面を浮き彫りにしていくんです
主人公は老主人の了庵(りょうあん)という人物。彼はどちらかというとテクノロジーの流行りとは少し距離を置いていて
書斎で万年筆を使って紙に向かって言葉を紡ぐ、そういうタイプなんですね
彼が大切にしているのって言葉そのものだけじゃなくて言葉と言葉の間とか、あと沈黙が持っている豊かさみたいな
ブク美
その了庵がですね国際的な文学賞を受賞して受賞式に出るために、まぁちょっと渋々、[The Interpreter]をつけると
そこから物語がぐっと動き出すんですよね。彼が体験するのはその効率化された世界の裏側というか
人間の内面の結構生々しい部分なんです
ノト丸
まさにそうなんですよ。例えば完璧な笑顔でサービスしてくれるウェイターさんの志向
早く注文決めてくれよ次待ってるんだから、みたいなのがこう流れ込んできたり
賞賛の言葉を述べている主催者の志向、よしスピーチは順調、次はああ写真撮影の段取りだなとかそういうのが聞こえてきちゃう
了庵は、なんか人々の頭の中って絶えずいろんな思考とか意図とか計算とか
いわばノイズの洪水みたいになってるって気づくんですよね
外面の表情とか言葉と内面の志向とのギャップがあまりにも大きいと
これ想像するだけでも結構なストレスですよね
ブク美
それは非常に強烈な体験だったと思いますね
そしてこの思考の垂れ流しみたいな状態が、了庵にとっては
単なる不快感だけじゃなくてもっと本質的な恐怖へと変わっていく瞬間が描かれていますよね
それが彼が自身の想像性の確信部分というか試作のプロセスにこのデバイスを持ち込んでしまった時なんです
ノト丸
ああありましたね
ホテルの自室で受賞スピーチで読むための詩を推敲している場面
一行書いてペンを止めて窓の外の月を見上げるみたいな
言葉にならない感情が胸に満ちてきて次の言葉を探す
詩人にとってはそれってある種、想像のための神聖な沈黙とも言える時間のはずですよね
ブク美
まさに。その瞬間に何とも不粋なんですけどデバイスが冷たい合成音声で分析を始めちゃうんですよ
《思考中断。主題:月。感情:ノスタルジア。
現在、比喩表現を検索中…
ブク美
候補:孤独、静寂、希望…。ユーザーの語彙データベースとの照合を開始します》って
ノト丸
うわぁ自分の内面がそんな風にリアルタイムで解剖されてタグ付けされていく感じですか
ちょっと私だったらもうなんか何も考えられなくなりそうです
ブク美
了庵もまさに血の気が引くような思いだったと描写されてますね
彼にとって一番大切な言葉が生まれる前のあの混沌としてるんだけどでも美しい葛藤みたいなもの
あの言語化できない"間"とか余白が AIにとっては単なる思考の遅延とか非効率な探索プロセスとして処理されちゃうわけです
ブク美
詩っていうのは言葉そのものだけじゃなくて言葉と言葉の間とか行間、沈黙にこそ宿るんだって信じてる彼にとってはこれはもう自己の存在意義そのものへの
ノト丸
まあ冒涜にも近いような感覚だったんじゃないでしょうか。ああその感覚すごくよくわかります効率とかデータ化とは全く逆にあるようなすごく人間的な営みの
核心の部分というか。で、この了庵の葛藤が あの、あとがき的対談で議論されている中心的なテーマにつながっていくわけですね
ブク美
その通りなんです対談の中で非常に印象的だったのが、人と人間の違いっていうのはひょっと したらこの"間"があるかないかなんじゃないか、という問いかけですね
効率とか処理速度を追求する AI、あるいはそういう側面だけを評価される人っていうのは情報処理装置としては非常に有能かも
しれない でもその「間」つまり非効率に見えるかもしれないけど内面で何かがこう熟成されたり
変化したりする時間とか、言葉にならないニュアンスや余韻。そういうのを持たない存在っていうのは、果たして人間と呼べるんだろうか?っていうかなり深い問いですよね。
ノト丸
AIは有能な人、プロセッサーにはなれるかもしれないけど人間にはなれないん じゃないか?っていう提起ですね人と人間の違いが「間」にあるかもしれないか
考えさせられますね。単なる機能的の存在ともっと複雑で奥行きのある存在との境界線がそこにあるかもしれない
と さて物語はいよいよクライマックス受賞式の壇上へと進みます
ブク美
えぇ。聴衆はみんな[Interpreter]をつけて両案のスピーチを待っているわけです で彼は思うんですね
もしこのままデバイスをつけて詩を読んだら、自分の詩の一番大事な「間」とか沈黙が「効果的な ポーズ1.8秒
ノト丸
聴衆の期待感を高める。みたいに分析されてその価値が台無しになっちゃうんじゃないかって そこで了庵は本当に驚くべき行動に出るんですよね
マイクの前に立って深く息を吸い込むとゆっくりと耳からずインタープレターを外すんです 会場が一瞬ざわめくんですけど彼は構わずマイクも通さずに自身の名の声で
ブク美
それも多くの聴衆には多分理解できないであろう日本語で朗々と詩を読み始める これは非常に象徴的なシーンですよね
言葉の意味内容の伝達意っていうのをあえて放棄するわけですから その代わりに声の震えとか息遣い"間(ま)"の取り方
そして何よりも一行と一行の間に生まれるあの張り詰めたようなあるいは愛しむような 沈黙そのものをもう身体全体で伝えようとする試みというか
ブク美
効率とはまさに真逆の極めて人間的なコミュニケーションへの回帰 あるいは再発見と言えるかもしれないですね
ブク美
言葉の意味自体はわからなくてもその場の空気感とか 了庵が込めた思いみたいなものは、きっと伝わったんでしょうね
そしてその朗読の後、了庵は再びデバイスを装着する。 ここからの展開がまた面白いんですよね
ノト丸
ええそうなんです 静寂に包まれた会場に向けて彼は言葉を発するんじゃなくて思考するんです
今皆さんが感じているこの静けさ 言葉が失われた後に残るこの心の響き
それこそが私の詩なのですってこの思考がデバイスを通して瞬時に多言語に翻訳されて 聴衆一人一人の脳に直接届けられるとここで了庵はある種の逆転の発想というかそういう
ブク美
ものに至るわけですね 。そうなんです彼は気づくんですねこの忌まわしいとさえ思っていた機械が単に言葉の
まあ表面的な意味を効率よく伝えるだけじゃないかもしれないと 使い方によってはむしろ言葉にならないもの
この沈黙が持っている豊かさとかその価値そのものを翻訳して共有するために使えるん じゃないか
で言葉を効率化するために言葉を殺すんじゃなくて言葉を超えた沈黙を翻訳してその尊さを 伝えるためのツールになり得るかもしれないという可能性をここで見出すわけです
ノト丸
それは大きな発見ですねテクノロジーに対する見方が何か180度変わるような この点について後書き的対談ではさらに深く掘り下げられていたりするんですか
ブク美
はい対談ではこの沈黙を翻訳する可能性について さらに発展的な議論がされてますね
もし AIが単に効率とか論理だけじゃなくて、この"間"が持つ価値、つまり非効率に見える時間の中に生まれる豊かさとか、言葉にならないニュアンス
そういうものを本当に理解して学習して尊重できるようになったとしたら、 それはAIが我々人間という存在をより深く理解するためのかなり重要な一歩になるかも知れないという視点ですね
ノト丸
AIが間の価値を理解する
それは今の ai のイメージからするとかなり飛躍した話にも聞こえますけどでももし実現 したら人間と ai の関係性って根底から変わりそうですね
ブク美
まさに。そして対談ではさらに重要な洞察も示されていて
"間"っていうのは単なる静止状態空っぽの時間じゃないんだと。それは人間内部で起こっている変化そのものなんだという見方です
例えば蛹(さなぎ)がチョウになるまでの時間みたいな外からは見えないけど内部では劇的な 変容が起こっている状態
あるいは考えがまとまらなくて逡巡している時間っていうのも新しいアイデアが生まれる 前のすごく重要なプロセスかもしれない