名もなき芸術家の物語
ノト丸
毎日未来創造へようこそ。
ブク美
こんにちは。
ノト丸
本日も、まだ見ぬ未来のプロトキャスト、その可能性を探っていきましょう。
はい。
Week9のテーマは、"ロボットと暮らす世界"ですね。
ええ。
今日はですね、このテーマを掘り下げていくために、一つの近未来SFショートショート〈名もなき芸術家〉という作品と、
そこから派生する"あとがき的考察"という資料を元に進めていきたいなと。
ブク美
今回は特に、その物語の中から浮かび上がってくる、ちょっと今までにない概念に光を当てていきたいですね。
ノト丸
新しい概念ですか?
ブク美
はい。今後の創造性とか、あるいは人の記憶がどういうふうに扱われるのかみたいな。
ノト丸
ああ、なるほど。
ブク美
そういったことを考える上で、非常に示唆に富んでいるんじゃないかと。
ノト丸
ふむふむ。
ブク美
少しアート的というか、哲学的な思考の旅になるかもしれませんね。
ノト丸
いいですね。単なるSFとして楽しむだけじゃなくて、そこから未来へのヒントを探る。
そんな時間にしたいと思います。
早速ですが、あなたはこの〈名もなき芸術家〉からどんな未来を想像しますか?
まずは物語の核心部分に触れてみましょうか。
ブク美
はい。物語の主人公はカイトという芸術家です。
ブク美
彼はですね、ロボット義体工学の才能豊かな妻、ミサキを不慮の事故で亡くしてしまうんです。
ブク美
それで深い悲しみと共に創作への情熱も完全に失ってしまうと。
ノト丸
ミサキさんの身体の多くはご自身で作った義体だったんですよね。
ブク美
そうなんです。
ノト丸
でも法律上はそれが物として扱われちゃって、事故の後は他のガラクタと一緒に巨大なロボット廃棄場に送られてしまう。
ある意味、カイトにとっては妻のもう一つのお墓みたいな、そんな場所なんですね。
彼はそこに通い続ける中で、ある日奇妙な光景を目にするわけです。
奇妙な光景?
ブク美
はい。旧式のスクラップ運搬用ロボットがですね、鉄屑を集めて、何とも言えない奇妙な非対称なオブジェを作り続けているんです。
ノト丸
へー。ロボットがオブジェを。
最初は故障かな?ぐらいに思ってたんですよね。
ブク美
そうでしょうね。
ノト丸
でもあるオブジェに、かつて自分がデザインしてミサキさんに送ったブローチの破片を見つけちゃって。
はー。
それでハッとする。よく見ると単なるガラクタの集まりじゃないぞと。
うんうん。
そこには何かパターンというかリズムみたいなものが感じられると。
ブク美
カイトは直感するんですね。それは人間の悲しみの波形に似ていると。
悲しみの波形。
ええ。彼自身が妻を失って以来ずっと抱えているあの胴首そのものだと感じてしまうわけです。
なるほど。
「君は悲しんでいるのか?」って彼はロボットに問いかけるんです。
ノト丸
もちろん答えはない。
ブク美
ええ。でもカイトは確信する。これはバグなんかじゃない。機械の中に奇跡的に魂が宿ったんだと。
魂が宿ったと。
そう信じるんですね。
ノト丸
この発見がカイトを再び創作へと駆り立てるわけですね。
そうなんです。
ブク美
彼はロボットが作るオブジェをモチーフに絵を描き始めて、自身の作品とロボットの作品、
彼が"名もなき芸術家"と呼んだそれらを並べて個展を開くんです。
ノト丸
これが世界的なセンセーションを巻き起こすと。
ブク美
まさに魂を持つ機械の誕生だって人々は熱狂して、批評家も言葉を失うほどだった。
ノト丸
カイトの人生にも再び光が射すのかのように思えた。
ここまで聞くと、すごく美しい再生の物語ですよね。
ブク美
はい。表面的にはそう見えるんですが、物語にはまだ続きがあるんです。
ブク美
そうなんです。
ロボットの芸術と記憶
ノト丸
ここでちょっと立ち止まってみたいんですが、この状況って、もしかしたらあなたの現実ともどこかで繋がっているかもしれません。
と言いますと?
日々進化するテクノロジーに対して、私たちってその本質をどれだけ見ようとしているのかなって。
ブク美
ああ、なるほど。
ノト丸
それとも、自分が見たいように解釈しているだけなのかなとか。
あなた自身はこういうテーマを深く考えたことってありますか?
ブク美
うーん、考えさせられますね。物語はまさにその解釈が根底から鬱陶される展開を迎えるんです。
ノト丸
個展の成功のまさにその最中に。
ブク美
ええ。カイトはある衝撃的な事実に気づいてしまう。
ノト丸
個展の最終日でしたっけ?カイトはロボットの最高傑作とされるオブジェに感謝を込めて触れるんですね。
その時、指先に何か微かな凹凸を感じる。
ブク美
それがワイヤーの結び目だった。
ノト丸
しかも、その結び目のパターンがカイトさんとミサキさん2人だけが知っている古い愛のサインだった。
ブク美
そうなんです。ミサキが設計図の隅にこっそり忍ばせていたイニシアルのような模様だったんですね。
ノト丸
それを発見した瞬間、カイトは悟るわけですね。ロボットは想像していたわけではなかったんだと。
ええ。
えっと、じゃああのオブジェは一体何だったんですか?
ブク美
あのロボットはですね、プログラムに従って特定の信号を発する部品をただ集めていただけだったんです。
ノト丸
信号を発する部品?
そして、その信号を発せていたのは、事故で大破して廃棄されたミサキの擬体に断片的に残っていた生体メモリーのログデータ。
生体メモリー。
ブク美
つまり、彼女の最後の思考、感情、記憶のかけらだったわけです。
ノト丸
ということは、世界が機械の魂の表現だって熱狂したあのアートは、実はミサキさんという人間の断片的な記憶とか感情。
ブク美
そうです。
ノト丸
夫への愛とか、事故の瞬間の恐怖とか痛みが、ロボットを通じてただ出力されていただけだった。
ブク美
そういうことになりますね。
ノト丸
これは、美しい誤解というにはあまりにもちょっと残酷な真実ですよね。
ブク美
非常に重い真実です。
ブク美
しかしですね、ここからが今回の探求の本題なんです。
と言いますと?
この出来事は単なる悲劇的な誤解というだけじゃなくて、未来を考える上で非常に重要ないくつかの新しい概念を浮かび上がらせるとソース資料では分析してるんですね。
ノト丸
なるほど。新しい概念。では、その新しい概念を一つずつ紐解いていきましょうか。
はい。
まずは、記憶と死後の存在に関わるものからですね。
ブク美
ええ。まず提示されているのがデジタルゴーストという考え方です。
デジタルゴースト。
ブク美
はい。死後もデジタル空間に残り続ける個人のデータとかログ、忘れられない消せない存在としてある種のリアリティを持つと。
三崎の記憶の欠片がまたに骨に当たるわけですね。
ノト丸
はあ、なるほど。私たちが日々ネットに残しているデータもある意味では未来のデジタルゴーストになり得るってことですか。
ブク美
そういう視点もまあ持てますよね。
ブク美
そして、そのゴーストの断片がロボットによって物理的な形を与えられた。
ブク美
これがメモリーアートファクト、つまり記憶の遺物が芸術的な意味を持つ可能性を示唆していると。
ノト丸
記憶の遺物、単なる廃棄部品が記憶を宿すことで価値を持つと。
ブク美
ええ。個人のデータがアートになるレクイエムアート、鎮魂の芸術という言葉も出てきていますね。
創造性と感情の重要性
ノト丸
鎮魂の芸術。
ブク美
カイトが意図せず行ったことは、未来のある種の徴来の形だったのかもしれないということです。
ノト丸
なるほどね。次に、創造性と作者性の観点ですか。
ブク美
はい。これは現代、特に生成AIの進化によって、私たちにとっても非常に身近な問いになってますよね。
ブク美
この物語では、マルチモーダルオーサーシップ、つまり多元的な作成性という概念が重要になってきます。
ノト丸
多元的な作成性ですか?
ブク美
ええ。未来の創造というのは、もはや一人の天才が生み出すものじゃなくて、発揮者、オリジネーター、この物語で言えばミサキですね。
はい。
それから実行者、AIやロボット、そしてそれを発見評価するもの、キュレーター、カイトのような存在。
ノト丸
ああ。
ブク美
この3者が組み合わさって初めて成立するんじゃないかという考え方です。
ノト丸
これは面白いですね。まさに、生成AI時代のアイディア創発を考える上でのヒントになりそうです。
ブク美
そう思います。
ノト丸
プロンプトを考える人、それを実行するAI、そしてその結果を選び取って意味付けする人、誰か一人が作者とよりプロセス全体が創造になるみたいな。
ブク美
まさにそういうことです。そうなると、作者は誰かっていう問い自体が曖昧になりますよね。
うん。
それがアンビギュアスクリエーション、曖昧な創造。その曖昧さが、かえって解釈の幅を広げて豊かさを生むんじゃないかという視点です。
ノト丸
なるほど。じゃあ、あの世界中を熱狂させた誤解、そのものについてはどう考えればいいんでしょう。
ブク美
ああ、そこも重要なポイントです。
ノト丸
ロボットに魂なんて結局なかったわけですから。
ブク美
ええ。資料ではこれをエモーショナルミスアトリビューション、感情の誤帰属(ごきぞく)と呼んでいます。
ノト丸
感情の誤帰属(ごきぞく)。
ブク美
人々はロボットに魂を見ましたけど、実際にはミサキの感情の残響に心を動かされていたわけです。
ノト丸
うんうん。
ブク美
しかし、この誤解自体が結果として大きな文化的価値とか感動を生み出したっていう事実は無視できないですよね。
ノト丸
たとえ意図されてなくても、人間の感情と機械の出力が響き合って、そこにアートが生まれる。
ブク美
ええ。アフェクティブレゾナンス、情動共鳴っていうことも興味深いですね。
ノト丸
まるで私たちは自分たちの感情を映し出す鏡をテクノロジーの中に見ているような感じがしますね。
ブク美
そういう捉え方もできますね。
そして、こうした現象が起きる背景として、ゴーストインスクラップ、廃棄物に宿る幽霊、なんていうちょっと詩的な表現も使われています。
ノト丸
ゴーストインスクラップ。
ブク美
忘れ去られたデータや信号が、予期せぬ形で表現として立ち現れる可能性を示唆しています。
ノト丸
こうした概念を踏まえると、未来には何か新しい役割とか職業も生まれそうですね。
メモリーエクスカベーション、記憶発掘?
ブク美
そうです。
ノト丸
まるで考古学者みたいですけど。
ブク美
メモリー・エクスカベーター、記憶発掘者ですね。
デジタルゴーストと倫理的問い
ブク美
膨大なデジタルゴーストの痕跡、つまり過去のデジタル記録を掘り起こして、そこに新たな意味とか価値を見出す専門家。
歴史家とかキュレーターに近い役割をデジタル領域で担うことになるのかもしれません。
ノト丸
なるほど。さてここで、物語の解析が直面したジレンマにちょっと戻りたいと思うんですが。
はい。
彼は世界が熱狂したロボットの魂の物語が、実は亡き妻の最後の記憶の断片だったっていう、この美しくも残酷な真実を世に告げるべきだったんでしょうか?
ブク美
うーん、これは非常に重い倫理的な問いですね。ソースの考察では、まずデータ埋葬という新しい倫理観の必要性を提起しています。
ノト丸
データ埋葬ですか?デジタルゴーストをどうやって埋葬するんでしょう?
ブク美
これはですね、デジタル時代における忘れられる権利を死者にも拡張しようという考え方なんです。
ノト丸
忘れられる権利を死者にも?
ブク美
ええ。個人のデータが本人の意図しない形で勝手に発掘されて誤解されたり、あるいは今回みたいにアートとして利用されたりすることを防ぐ権利。
三崎個人の尊厳を守るためにはそういう視点も必要なんじゃないかということです。
ノト丸
確かに。自分の死後データがどう扱われるかなんてあまり考えたことなかったですけど。
でも一方でですね、たとえロボットに魂がなくてオブジェがミサキさんの記憶の出力だったとしても、それがカイトを救って世界中の人を感動させたっていう事実は変わりませんよね?
ブク美
まあ、そうですね。
ノト丸
その解釈の価値についてはどうなんでしょう?出自がどうであれ感動が生まれたならそれで良い。ともいえませんか?
ブク美
それも非常に重要な論点ですね。作品がAIによって作られたのか、人間なのか、あるいは個人のデータから生まれたのか、その出自を問うこと自体の意味が未来では薄れていくのかもしれないと。
受け手がどう解釈し何を感じるか、それこそが価値の本質であって、人々が心を揺さぶられたその経験そのものに価値があるんだという、そういう未来のアート観を示唆していますね。
ノト丸
うーん、どちらも一理ありますね。なんかこれらの概念とかといって、もうSFの中だけの話じゃないような気がすごくしてきました。
ブク美
そう思います。
ノト丸
あなたが日々何気なくSNSに投稿したり撮ったりしているデジタルデータ、それってあなたがいなくなった後どうなるんでしょうね?
ブク美
うーん。
ノト丸
AIが当たり前に絵を描いたり音楽を作る時代になった時、作ることのオリジナリティって一体どこにあるんでしょうか?
ブク美
難しい問いですね。
ノト丸
あなた自身の記憶とか創造性について改めて考えさせられますね。
ブク美
まさにそうですね。この〈名もなき芸術家〉の物語と考察は、ロボットと芸術っていう枠を超えて、記憶、誤解、魂、作者性といったもっと普遍的なテーマを扱っています。
ブク美
テクノロジーが深く浸透した未来における創造の本質、そして突き詰めれば人間とは何かという、すごく根源的な問いを私たちに投げかけていると言えるでしょうね。
ノト丸
深いですね。さて、ここまでの探求を踏まえて、最後にあなた自身にいくつか問いを投げかけたいと思います。
未来の創造性の探求
ノト丸
はい。
ブク美
未来を考える上での思考の種、フロトクエスチョンです。
ノト丸
お願いします。
ブク美
まず、もしあなたがカイトの立場だったらどうしますか?
うーん。
真実を世界に公表しますか?それとも胸に秘めたままにしますか?そして、なぜその選択をするんでしょう?
ノト丸
What if? Why?
ブク美
非常に難しい選択ですね。真実を告げれば、ミサキさんの尊厳は守れるのかもしれないけど、多くの人の感動とか、カイト自身の再生も否定することになっちゃうかもしれないし。
ノト丸
そうですよね。次に、デジタルゴースト、つまり個人のデータが私たちの周りにこう、偏在するようになる未来で、私たちはそれらと倫理的にどう向き合っていくべきでしょうか?
供養の対象なのか?プライバシーとして保護すべきなのか?それとも、あなたの想像の厳選として活用する道を探るのか?
How?
うわー、これは個人の価値観だけじゃなく、社会全体の合意形成がすごく求められそうですね。
ブク美
そう思います。そして最後に、AIや他者のデータ、さらには今回のような誤解すらも、創造のプロセスに深く関わる時代が来るとしたら、
本物の創造性とは一体何を指すことになるんでしょうか?その価値はどこに見出されるようになるんでしょうね?
ノト丸
これらの問いに今すぐ明確な答えを出すのは正直難しいですね。
ええ。
でもこうして立ち止まって考えること自体にすごく意味があるような気がします。
ブク美
その通りだと思います。問い続けること、それが私たちがより良い未来を形作っていくための大切な一歩になるはずです。
ノト丸
いやー、本日の探究にお付き合いいただきありがとうございました。
ブク美
こちらこそありがとうございました。
ノト丸
名もなき芸術家という一つの物語から、これほど多様な未来への視点とか問いが生まれてくるっていうのは正直驚きましたね。
ブク美
フィクションが持つ未来を照らし出す力、そして私たちに問いを投げかける力っていうのを改めて感じますね。
ノト丸
明日も引き続きロボットと暮らす世界をテーマに、まだ見ぬ未来のプロトキャスト、可能性の探究をお届けします。
はい。
今月の話で何か心に響いたこと、あるいは考えたことがあれば、ぜひハッシュタグ、#毎日未来創造をつけて、あなたの視点をシェアしてみてください。
ええ、ぜひ。
他の人の考えを知るのもきっと新たな発見があるはずですからね。
ブク美
あなたからのシェア楽しみにしています。
ノト丸
それではまた明日。
ブク美
また明日。
ノト丸
♪創造日常
毎日未来
創造