未来のインターフェースの探求
ブク美
今週もなんとか始まりましたね。
ノト丸
はい。
ブク美
ちょっとバタバタはしてるんですが、
#毎日未来創造、続けていますよぉ。
ノト丸
おお、素晴らしいですね。
ブク美
さて、Week 13のテーマなんですけど、
インターフェースです。
ノト丸
インターフェース。
ブク美
で、サブタイトルが、「未来の触り心地」と。
ノト丸
未来の触り心地、ですか。
なんだかこう、詩的な響きがありますね。
ブク美
そうですよね。
インターフェースっていうと、つい画面とか、
ボタンとか、そういうのを思い浮かべがちですけど。
ノト丸
ええ、具体的なものを。
ブク美
でも今回は、もうちょっと広い意味での触り心地、
これを探っていきたいなと。
ノト丸
なるほど。
ブク美
で、今回元にするのが、提供いただいたSFショートショート〈物質たちの沈黙〉。
ノト丸
はい、拝読しました。
ブク美
それと、その後の対談ですね。
応答の設計と未来の触り心地、
これをベースに、今日もまだ見の物事のプロトキャストと言いますか、
未来の可能性の試作品を探っていきましょう。
ノト丸
はい、承知しました。
物語と対談、この2つからどんな議論が生まれるか楽しみです。
沈黙現象の謎
ブク美
というわけで早速なんですけど、リスナーのあなたにとって
インターフェースって、突き詰めていくと一体何でしょうかね。
ノト丸
うーん、インターフェースですか。
ブク美
普段何気なく使っている言葉ですけど、
その本質みたいなものって、深く考えたことありますか?
ノト丸
いやー、改めてそう聞かれると難しいですね。
基本的にはまあ、コンピューターと人間の接点っていう意味合いですよね。
ブク美
そうですね。
ノト丸
でももっと広いのかもしれない。
例えばドアノブだって、
ある意味世界と私たちをつなぐインターフェースって言えるかもしれないですよね。
ブク美
まさに、いやその視点すごく大事で、
ブク美
今回の話に実はすごくつながってくるんですよ。
このショートショート、〈物質たちの沈黙〉っていうのが、
そのインターフェースという概念をですね、
ある未来の世界を通して深く問いかけてくる。
ブク美
そんな物語なんです。
ノト丸
その未来の世界っていうのは、もう少し詳しく教えていただけますか?
どんな感じなんでしょう?
ブク美
はい。物語の舞台はですね、
私たちが今知っているスマートフォンの時代が過ぎ去った、
少し先の未来。
ノト丸
ポストスマホみたいな。
ブク美
そうですそうです。
ブク美
そこでは、もう壁とかマグカップとか机とか、
本当にありとあらゆるものが触れるだけで応答してくれる世界なんです。
例えば、壁に触れたら部屋の空気質が分かったり、
カップを握ったら中身の温度とかカフェ飲料が分かったり。
ノト丸
まるで世界全体が情報端末になったみたいですね。
ある意味こう、究極の利便性というか、応答も早いし情報も多いし。
ブク美
そうなんです。
効率は最大化されて、迷いとかは消えて、
日常はすごく滑らかになる。はずだった。ですよ。
ノト丸
はずだった。
ブク美
ところがですね、ある日突然そのモノたちが応答しなくなっちゃうんです。
ノト丸
え?
ブク美
"沈黙現象"って呼ばれる現象が起きるんですね。
ドアもカップも机も呼びかけても触っても、シーンと黙り込んじゃう。
ノト丸
それは単なるシステムダウンとか故障とかとはちょっと違う感じがしますね。
ブク美
そうなんですよ。
ノト丸
もっとこう、奇妙な意図的な沈黙みたいな。
ブク美
ええ、まさに。
物語の主人公も調査を進める中で、その沈黙にもなんか種類があるぞって気づくんです。
ノト丸
種類ですか?
ブク美
なんか疲れてるような沈黙とか、何かを拒絶してるっぽい沈黙とか、
あるいは何かを待ってる保留みたいな沈黙とか。
ノト丸
なるほど。
ブク美
便利さを追求したはずの世界で、一体なぜ者たちは黙ってしまったのか。
ここからがこの物語のぐっと核心に迫っていく部分なんですね。
ノト丸
その謎を解く鍵が物語に出てくる郊外の工房に住む老人にあると。
ブク美
そうなんです。
ノト丸
対談の方でも、この老人の言葉は非常に重要だって言及されてましたよね。
ブク美
ええ。
主人公が"非接続素材"、つまりネットワークに繋がらないただの素材だけを扱う老人を訪ねるシーンがあって。
ノト丸
はい。
ブク美
老人は回路もタグも何もない、ただの木のサジを黙々と削ってるんです。
主人公がちょっと分析させてくださいって言うと、老人はこう返すんですよ。
ノト丸
あの言葉ですね。
ブク美
「触れるっていうのは理解することじゃない、感じること」だよって。
ノト丸
そしてさらに続ける。
「理解はわからなさを減らす、感じるはわからなさを抱える。」
ブク美
この言葉、この理解と感じるの違い、どう受け止めますか?
ノト丸
いや、深いですよね。
これは対談の中でも掘り下げられてましたけど、
これは現代、そして物語の未来におけるインターフェース設計に対するある種の警鐘とも読めるんじゃないかと。
ブク美
警鐘ですか。
ノト丸
ええ。
つまり、我々はあまりにも理解、つまり、わからなさの排除を追求しすぎたのではないかと。
ブク美
ああ、なるほど。
天気、温度、カロリー、経路、あらゆる情報を瞬時に正確に提示して、分からないっていう不安とか曖昧さをそれを消そうとしてきた。
ノト丸
そうそう。
ブク美
それが進化なんだって信じて。
ノト丸
ええ、でもその結果として、私たちは世界をただの情報として理解するばかりで、
もっと豊かで複雑な、時には曖昧なものを感じる能力とか、あるいはそういうものと向き合うための"間"、とか"余白"みたいなものを失ってしまったんじゃないかと。
ブク美
"間"や"余白"。
ノト丸
すべてが即座に応答して、みれる世界っていうのは、ある意味で世界との間にあったはずの豊かなノイズとか、遅延みたいなものを消し去ってしまったとも言える。
ブク美
なるほど。
そう考えると、物語で起きた沈黙現象っていうのは、過剰な情報要求、つまり、モノたちに対する圧みたいなものへの世界の側からの自己防衛反応かもしれないと。
ノト丸
ええ、そういう解釈も成り立ちますよね。
ブク美
対談でもまさにそういう可能性が語られてましたね。
ノト丸
はい。人間がオンライン会議の連続で疲れて、ちょっとミュートにするみたいに。
ブク美
うんうん。
ノト丸
物質たちもその情報の洪水から、身を守るために応答をミュートしたのかもしれないねって。
ブク美
ああ、面白い比喩ですねそれは。
ノト丸
ええ。
ブク美
でもここでまた興味深いのが、主人公が最終的に見つけ出す解決策っていうのが、単に応答をなくすとか減らすとか、そういう単純な引き算じゃないってことなんです。
触れ方の質と豊かさ
ノト丸
ああ、そうでしたね。応答の設計へと向かう。ここがまた非常に示唆に富んでる。
ブク美
うんうん。機能をオフにするんじゃなくて、応答の質とかタイミングをデザインし直すっていう発想。
ノト丸
ええ。
ブク美
主人公たちは"沈黙プロトコル"っていうルールのセットみたいなものを考えるんです。
ノト丸
"沈黙プロトコル"。
ブク美
これは、物質でもある種の"応答しない自由"を与える。っていう考え方がベースにあるんですね。
ノト丸
"応答しない自由"ですか。面白いですね。
ブク美
例えば通知の閾値を上げるとか、連続して触られたら応答を減衰させるとか、意図が曖昧な接触には温度だけ返すとか、あと履歴表記もあえてちょっと遅らせるとか。
ノト丸
なるほど。テクノロジーを使って、意図的に間(ま)とか余白、あるいは優しい非応答を作り出す。そういう試みなんですね。
ブク美
そうなんです。これは決して技術否定とかじゃなくて、むしろ技術との付き合い方をより成熟させる方向性と言えるのかもしれない。
まさに単に効率化するだけじゃない、テクノロジーによる豊かさのデザインとも言えるかなと。
ノト丸
そしてこの応答の設計っていう考え方なんですが、これ先週我々が話したテーマ、界面の哲学にも通じるんじゃないかって対談では指摘されてましたね。
ブク美
ああ、そうでしたか。
ノト丸
インターフェースを単に情報を引き出すための窓口としてだけじゃなくて、人間と世界が互いのリズムとか都合を尊重し合うための一種の境界線として捉え直すということです。
ブク美
なるほど。人間が一方的に情報をくれって求めるだけじゃなくて、モノとか世界の側にもリズムとか、もしかしたら今はちょっと答えたくないな。みたいな状態があるかもしれないと。
ノト丸
そういう相互尊重の感覚ですよね。
そしてここまでの話を全部踏まえて、この物語と対談から浮かび上がってくる、非常に重要なメッセージがあるんです。
これは今回の探求のまさに核心ともいえる気づきなんですが。
ブク美
何でしょう、核心。
ノト丸
「世界は便利さの総量ではなく、触れ方の質で豊かになる」という言葉です。
ブク美
ああ、それは響きますね。
便利になればなるほど豊かになるってわけでは必ずしもない。
どう触れるか、その関わり方の質こそが重要なんだと。
ノト丸
これが今回の未来の触り心地も探求していく上での一つの大きな軸になるんじゃないでしょうかね。
ブク美
なるほど。
ノト丸
便利さの追求だけでは、もしかしたら見過ごされてしまうかもしれない別の種類の豊かさ、それをどうやって見つけてどうデザインしていくのかっていう問いですね。
ブク美
物語の最後のシーンがすごく印象的で、主人公が老人が削っていた木のサジを握るんですよね。
ノト丸
はいはい。
ブク美
データは何も流れてこないんだけど、湯気の向こうに世界の手触りが少しだけ戻ってくるのを感じるっていう。
ノト丸
ええ。
ブク美
あの感覚こそが触れ方の質がもたらす豊かさなのかもしれないですね。
ノト丸
そうかもしれないですね。
あと、沈黙プロトコルが適用されたドアノブなんかも、必要最低限の情報が少し遅れて柔らかく滲むように現れる。
ブク美
うんうん。
デジタルデバイスとの向き合い方
ノト丸
そこには押し付けがましさがないんですよね。
作中で誰かが、この遅延は思考の時間かってつぶやく場面がありましたけど。
ブク美
ありましたね。
ノト丸
沈黙とか余白っていうのは、もしかしたら情報を受け取る我々自身のための時間とか、内省を促すそういうインターフェースでもあるのかもしれないなと。
ブク美
いやー深いですね。
ここまで物語と対談を紐解いてきたわけですが、ちょっと視点を変えてリスナーのあなた自身に問いを投げかけてみたいと思います。
ノト丸
はい。
ブク美
この物語の世界観を踏まえてですね、もしWhat if_?、あなたの身の回りのデバイス、スマートフォンでもスマートウォッチでもなんでもいいんですが、それがちょっと応答しすぎてるなって感じ始めたら、あなたならどうしますか?
ノト丸
うーん、応答しすぎてる。ありますよね実際、通知の嵐とか。
ブク美
えー。
ノト丸
まあまずは通知設定を見直すとかでしょうか。でも物語みたいに応答の質自体を変えるとなると個人では難しいですよね。
ブク美
そうですね。でも例えばスマートフォンの集中モードみたいな機能ありますけど、ああいう状況に応じて応答の仕方を大胆に変える機能っていうのは、もっと進化してもいいのかなと思いますね。
ノト丸
なるほど。
ブク美
単に通知をオフにするだけじゃなくて応答の種類自体が変わるみたいな。
ノト丸
ふむふむ。
ブク美
では、どうすればHow、私たちのデジタルな生活の中に物語の沈黙プロトコルみたいな意図的な遅延とか非応答、つまり心地よい余白をもっとデザインできると思いますか?技術的な工夫なのか、それとも意識の問題なのか?
ノト丸
うーん、それは多分両方でしょうね。
技術的にはやっぱりアプリとかOSの側がもっと多様な応答モードを提供してくれること、例えば本当に返信が必要な通知だけを指定した時間にまとめて表示するとか。
ブク美
ああ、いいですねそれ。
ノト丸
個人的には意識的にすぐに反応しないっていう練習をするのも大事な気がしますね。
ブク美
練習ですか?
ノト丸
ええ。情報が入ってきても一呼吸置いてから向き合うとか、物理的にスマホをちょっと遠くに置いておく時間を作るとかも有効でしょうし。
ブク美
なるほどな。最後に、これはもっと根本的な問いかもしれませんが、なぜ私たちは理解すること、つまり情報を得てわからなさを減らすことと同じくらい、感じること、あるいはわからなさを、あえて抱えることが重要なんだと思われますか?
便利で全てがクリアなほうが良いとも考えられませんか?
ノト丸
うーん、それはおそらく効率とか理解だけを突き詰めていくと、世界がすごく平坦で予測可能なものになってしまうからじゃないでしょうかね。
ブク美
平坦で予測可能。
ノト丸
感じることとかわからなさの中には、予期せぬ発見とか、創造性の種みたいなもの、あるいは他者への共感といった効率だけでは測れない価値がたくさん含まれている気がするんです。
全てを理解しようとするのは、ある意味で世界をコントロールしようとすることですけど、感じるっていうのはコントロールできないもっと大きな流れの中に自分を置いてみることというか、そのバランス感覚が人間的な豊かさにはきっと必要なんじゃないかなと。
ブク美
ありがとうございます。いや、深いですね。
この物語、そして対談をきっかけに、ぜひあなた自身の身の回りのテクノロジーとの触り心地について改めて考えてみるのも面白いかもしれませんね。
感情と時間の触り心地
ノト丸
そうですね。
今回は物理的なものとのインターフェース、その触り心地が中心でしたけど、対談の最後の方ではこの探求がさなり目に見えないもの、例えば感情とか時間の触り心地へと広がっていく可能性も示唆されていましたよね。
ブク美
感情や時間の触り心地ですか?
ノト丸
ええ。感情との向き合い方とか時間の流れの感じ方にも、もしかしたら応答の設計とか余白っていう考え方が応用できるんじゃないかと。
ブク美
面白いですね。感情に即レスしすぎないとか、時間に追われるんじゃなくて、時間の中に意図的に間を作るデザインとか。
ノト丸
で、便利さのその先にある多様な豊かさの触り心地。これはこれからも探求しがいのある、すごく大きなテーマですよね。
ブク美
というわけで、今回は#毎日未来創造Werk13 : インターフェース - 未来の触り心地をテーマにですね、SFショートショート〈物質たちの沈黙〉と対談、「応答の設計と未来の触り心地」からいくつかの重要な視点を探ってきました。
ノト丸
はい。
ブク美
理解と感じることのバランス、それから応答の設計という発想、そして白心的なメッセージ。世界は便利さの総量ではなく、触れ方の質で豊かになる。あなたにとって何かひべくものはありましたでしょうか。
ノト丸
そうですね。個人的にはやはり応答しない自由っていう考え方ですかね。それが特に印象に残りました。
テクノロジーとの関係性を見直す上で、すごく重要なヒントになりそうだなぁと感じました。
ブク美
なるほど。実はこの後、ポストスマートフォンについてももうちょっと妄想してみたいなぁなんて思ってるんですが、というのは次回の予告というわけでもないんですけど、
もし今回の探究であなたが感じたこと、考えたことがあれば、ぜひ毎日未来創造のハッシュタグをつけてSNSなんかで共有してみていただけると嬉しいです。
ノト丸
他の方がどんな未来の触り心地を想像するのか、ぜひ知りたいですね。
ブク美
それでは今回の探究はここまでとしましょうか。お付き合いいただきありがとうございました。
ノト丸
こちらこそありがとうございました。