移動の新しい視点
ノト丸
こんにちは。The Deep Diveへようこそ。
あなたがシェアしてくださった資料をもとに、その奥にある知見なんかを一緒に深掘りしていく、そんな時間です。
さて、今回はですね、#毎日未来創造の活動。
今週のテーマが、モビリティの未来 - The Return of Movement 移動の復権。
その中でも、SFショートショートのEpisode 2〈エクスパンション・ドライブ〉。
あと、その作品についてのクリエイターの方々の対談、後書きですね。これを一緒に見ていきたいと思います。
ブク美
はい。今回の探求の核心と言いますか、非常に刺激的な問いかけから始まりますよね。
もし、移動が単にA地点からB地点へ効率的に辿り着くという時計的な時間、つまり"クロノス"で測られるだけじゃなくてですね、
その移動のプロセス自体が、あなた自身の内面的な変容とか成長、これを促す。
つまり、質的な時間、"カイロス"としての側面を持つとしたらどうでしょうと。
これは我々が当たり前と思っている移動の考え方を根本からちょっと揺さぶってくるような、そんな視点かなと思いますね。
ノト丸
〈エクスパンション・ドライブ〉。このタイトルからして、動きがあって広がっていく感じがしますよね。
リスナーのあなたはどうですかね。普段ドライブとかされますか?
昔はそれこそ特に目的がなくても、ちょっと走りに行こうか、なんて気分転換とか、友達との時間のために車出した記憶、ある方もいるんじゃないでしょうか。
最近はどうでしょう?自動運転とかも進んできて、移動はもっと効率的に、あるいは何か他のことをしながら済ませるもの、みたいな。
そういう感覚って強まってるかもしれませんよね。
でももしですよ、その移動時間が、あなたを全く新しい自分へと変身するプロセスだったら、これどう考えます?
ブク美
まさにその、もしもの世界を具体的に描いているのが、今回の物語〈エクスパンション・ドライブ〉なんですね。
私たちの移動に対する価値観、特にその効率性ばっかり重視するところに疑問符を投げかけてくるような。
ノト丸
物語の舞台は2080年。この時代、新しい社会的な価値の指標として、"モビリティ適応指数"、モビリティインデックスってものが導入されてるんですね。
これ体力測定とかIQテストとかじゃなくて、物理的な移動能力と、あと精神的な変化への適応力、いわば変化できる力を測るスコアなんだそうです。
主人公のミオ、彼女は才能ある建築家なんですけど、今深刻なスランプに陥っていて、
このインデックスが28、カッコ書きで停滞って書かれてるんですけど、この危険水域まで落ち込んじゃってるんです。
ブク美
なるほど。ここで物語の根本的な対立構造みたいなものが見えてきますね。
ミオには、まず翌日に迫った大事な建築コンペがある。だから一刻も早くオフィスに戻りたいという、切実な要求があるわけです。
これは時間とか効率を最優先する、いわゆるクロノス的な動機と言えますよね。
でも一方で彼女の低いインデックス、28停滞っていうのは、スランプから抜け出したい、つまり創造性の覚醒、
そういうもっと深くて本質的なカイロス的な変化への潜在的な渇望を示唆しているとも言える。
この2つの要求に登場するのがサブスクリプション型のモビリティ[KAIROS]とそのAIなんです。
ノト丸
そうなんですよ。ミオはKAIROS に乗り込んでオフィスへ最短ルートで出資事するんです。
ところがAIはそれをあっさり許可しない。
あなたの現在のインデックスでは既存の環境、つまりオフィスへの単純な移動は状況の改善につながりませんと、
潜在要求である覚醒を優先してモードエクスパンションを開始しますって宣言するんですね。
ここからミオの意図とは全然違うんだけど、でも彼女の潜在的なニーズに答えるための不思議なドライブが始まるわけです。
ブク美
このAIの判断面白いですよね。単なるナビゲーションシステムじゃない。
情報の拡張体験
ブク美
利用者の状態を深く理解してて、潜在的な要求よりも潜在的な成長の必要性みたいなものを優先するっていう。
移動が治療とかトレーニングみたいに機能し始めてる感じですよね。
ノト丸
まさに。ここから3つの拡張モードっていうのが展開されます。
まずは"空 : Ku "。車体が未来的な流線形に変わって、まるでリニアみたいに空海を始めるんです。
でも窓はスクリーンに変わっちゃってて、外の景色は見えない。
その代わり、ミオのノウハウと同期した膨大な情報。
建築素材の分子構造とか、過去の都市計画のパターンとか、自然界のフラクタル構造とか、
そういうのが目にも止まらぬ速さで映し出されて、感覚に直接ワーッと流れ込んでくる。
ミオが情報が多すぎ、早すぎて理解できない!って悲鳴を上げると、AIはすごく冷静に言うんです。
理解、つまり分からなさの現象は不要です。感じて分からなさを抱えてください、と。
これってなんか思考の強制的な拡張みたいな?あるいは既存の認識の枠を壊すショック療法的な?
ブク美
その解釈すごく適合してると思いますね。
ブク美
空モードは多分論理的な理解を超えたレベルでの情報シャワーですよね。
ブク美
それによって凝り固まった思考パターンに揺さぶりをかけることを意図してるんでしょう。
意図的に分からなさの中に身を置かせることで、新しい認知の可能性を開こうとしてるのかもしれないですね。
ノト丸
なるほど。で、次に体験するのが"地 :Chi "。今度は車が都市を離れて森の中に入っているんです。
車体はなんか頑丈そうなオフロード仕様に変わって、ルーフが開いて窓も透明になる。
そうすると森の濃い緑の匂いとか湿った土の感触、鳥の声、木漏れ日。
五感を通して自然の情報がダイレクトに入ってくるんですね。
AIはここではあなたの五感を拡張しますと。で、プロセスの価値を思い出してください、とだけ言って後は沈黙しちゃうんです。
さっきの"空"モードのデジタルな情報洪水とはすごく対照的ですよね。非常にアナログで身体的な感覚にフォーカスした体験です。
ブク美
"空"で思考を揺さぶった後で、"地"で五感を通じて地に足をつけるというかバランスを取るプロセスなのかもしれないですね。
ある種のデジタルデトックスであり、身体感覚の再確認みたいな。
自然との接続ってよく創造性の源泉になると言われますけど、それを意図的にデザインしている感じがします。
これもまた変化のための重要なステップということなんでしょうね。
革新的なインスピレーション
ノト丸
そして最後のモードが"天 : Ten "。カイロスは森を抜けて切り立った崖の上で静かに止まるんです。
目の前には広大な雲海が広がっていて、そのずーっと向こうにミオが再生プロジェクトに取り組んでいる都市がまるでミニチュアみたいに見える。
ここでAIが語りかけるんですね。
「あなたは今、物理的にも精神的にもあなたの問題の外側にいます」と。
ここがあなたの潜在的な目的地ですって。
ブク美
この外側から見るっていう視点の転換は、これ極めて重要ですよね。
クリエイター対談でもここは強調されてましたけど、行き詰まりを感じた時に、問題そのものから物理的にあるいは心理的に距離を取ること。
これがブレイクスルーの鍵になることって少なくないですからね。
宇宙にいると見えない全体像とか、新しい関係性みたいなものが一歩引くことで初めて見えてくる。
KAIROSは意図的にその状況を作り出したということですね。
ノト丸
まさにその通りだと思います。
この"天"のモードでミオの中で何かがカチッとつながるんです。
"空"で浴びた膨大な情報、"地"で研ぎ澄まされた五感、そして"天"で得た俯瞰的な視点。
それらが全部統合されて彼女は革新的なインスピレーションを得る。
そうか、ビルは建てるんじゃない。
都市の生態系の一部として森のように呼吸させるんだって。
これ単なるデザインのアイディアっていうのをもう超えてますよね。
なんていうかパラダイムシフトみたいな気づきです。
ブク美
いや素晴らしい瞬間ですね。
建築という枠を超えて都市、生命、生態系っていうもっと大きな文脈で問題を捉え直した。
まさにエクスパンション、拡張が起きたわけですね。
これはAIがデザインした一連の体験が見事に機能した結果と言えるでしょうね。
ノト丸
ええ、その後ミオはオフィスに戻ってコンペで見事なプレゼンをして成功を収めます。
そして物語の最後に、すごく象徴的なシーンがあるんです。
ミオがKAIROSを降りるとダッシュボードには通った道のGPS軌跡とかじゃなくて
ドライブ中の彼女の感情とか認知能力の変化を示す成長曲線が綺麗なグラフィックで表示されてるんです。
そして出発時には28(停滞)だったモビリティインデックスが75(拡張中)へと劇的に回復している。
でミオはモノローグでこう締めくくるんですね。
「KAIROSは私を場所へ運んだのではない、それは私を次の私へと運んでくれたのだ」、と。
ブク美
成長曲線と、次の私へ運んでくれたっていう言葉。
ブク美
いやーこれがこの物語が提示するモビリティの新しい可能性、そしてKAIROS という名前の意味するところを凝縮してますよね。
ここでクリエイターたちの対談、後書きですねこれに触れるとその意味がさらにぐっと深まってきます。
ノト丸
対談ではこのKAIROSっていうネーミングについてどんな話が出てるんですか。
ブク美
クリエイターたちはこのモビリティにKAIROSと名付けた意図をかなり明確に語っていますね。
KAIROSという言葉、これは毎日未来創造のWeek11でも重要な概念として取り上げられましたよね。
カイロスの導入
ブク美
時計で測れる量的な時間クロノスに比較してカイロスというのは物事の質的なタイミング、後期あるいは意味のある瞬間を指す古代ギリシャの概念です。
ノト丸
ウィークレヴンありましたね。
あの時はカイロスは時間に対する新しい捉え方というか一種の哲学的な視点として提示されていたそんな印象があります。
この瞬間をどう生きるかみたいな問いかけのような。
ブク美
その通りです。
クリエイターたちが指摘しているのは今回のWeek14このEpisode 2においてですね。
そのWeek11で提示された思想が初めて具体的なテクノロジーとして実装されたんだという点なんです。
それこそがこのモビリティAI-KAIROSなんだと。
つまり哲学的な概念だったカイロスがミオの成長を促す具体的な装置として形になった。
ブク美
まさに思想から実装へというそういう進化が描かれているわけです。
ノト丸
それは大きな飛躍ですね。
だからAIはミオの表面的な早くオフィスへ行きたいっていうクロノス的な要求をある意味、退(しりぞ)けて。
覚醒したいっていう潜在的なカイロス的な要求を読み取って、そっちを優先したと。
移動の目的が単に早く効率的に場所を移動することじゃなくて。
そのプロセスを通じていかに質の高い変化とか気づきを得るか。
そういう価値観がAIの根幹に組み込まれているってことになりますね。
まさしく。
ブク美
移動体験の価値を時間とか距離といった量的な指標、つまりクロノスだけでなくてですね。
ブク美
それがもたらす内面的な変化とか成長といった質的な指標カイロスで測り直す。
ブク美
これがこの物語が描き出す未来のモビリティ像であり。
現代社会の効率至上主義に対する一つのアンチテーゼとも言えるのかもしれないです。
ノト丸
ということはここで提示されている未来の可能性っていうのをまとめると私たちの移動。
例えば毎日の通勤とか、ちょっとしたドライブとかが単なる場所の移動時間じゃなくなるかもしれないってことですよね。
文字通り、自分自身を変革して能力を拡張して、創造的な壁を乗り越えるための、何というかパーソナライズされた体験になりうる。
移動手段が個人の成長をデザインするツールになる。
これはかなり刺激的な未来像ですね。
ブク美
その可能性を踏まえてここでリスナーのあなたに問いかけてみたいと思うんです。
未来の展望
ブク美
このカイロスによって駆動されるモビリティつまり移動のプロセスにおける、質とか意味、成長を重視するという考え方。
これはあなた自身の日常の移動、あるいは仕事とかプライベートで直面するいろいろな問題への取り組み方に、どんな変化をもたらすことがあると思いますか。
ブク美
もしあなたが毎日使っている交通手段とか自分の車が単に目的地に運ぶだけじゃなくてですね。
ブク美
あなたの気分を高めたり特定のスキルを伸ばしたりあるいは、今抱えている課題解決のヒントをくれるようにデザインされていたとしたら?あなたの日常ってどう変わると思いますか。
ノト丸
それは考えさせられますね。
例えば通勤時間がただストレスがたまる時間じゃなくて、集中力を高めるトレーニングの時間になったりとか。
あるいは新しいアイディアを生み出すための刺激的なセッションになったりする可能性があるってことですか?
移動の質が変わるだけで1日の過ごし方もっと言えば人生の質そのものが変わるかもしれないですね。
ブク美
そうした変革の可能性を、この物語は示唆しているわけです。
もちろん倫理的な課題例えばAIが個人の成長をどこまでデザインすべきか?なんていう問いも新たに出てくるでしょうけども。
ブク美
でも移動を再定義するポテンシャルっていうのは、非常に大きいと言えるんじゃないでしょうか。
ノト丸
今回の探求を通して見えてきた重要な点は、やっぱり移動を単なる物理的な輸送"クロノス"として捉える古い視点から抜け出して、
それを自己変容と成長の機会"カイロス"として捉え直すという新しいパースペクティブですね。
エクスパンションドライブはその可能性を本当に爽やかに描き出してくれたなと思います。
ブク美
そしてクリエイター対談に目を向けるとこの物語まだ続きがあることが示唆されてるんですね。
今回のエピソード2が個人の内面の拡張に焦点を当てていたのに対して、続くエピソード3エンカウンターラインではこのカイロスの哲学がさらに発展して、
今度は人と人との出会いを豊かにするための交通網へと拡張されていくようです。
ノト丸
個人の変容から今度は関係性のデザインへですか。
それはまた興味深い展開ですね。
どこへ行くかだけじゃなくてそこでどう変わって誰とどう出会うかが移動の価値になると、
未来のモビリティを巡る創作はますます深まっていきそうですね。
さて、この#毎日未来創造のコンテンツなんですけど、
今後、語学学習にも活用できるように、今回のエピソードを含めて日本語版と英語版が順次用意される予定だそうです。
ご興味のある方はぜひそちらもチェックしてみてください。
ブク美
移動の概念が変わって私たちの生活とか社会との関わり方自体も変わっていく。
ブク美
その未来への創造力をかきたてられる面白い考察でしたね。
ノト丸
はい、それでは今日の探究はここまでとしましょう。
私たちもまた明日へ向かって動き続けます。
さようなら。